NMS ― 天然ドジっ娘属性始めました
「はぁ…はぁ…
なんとか振り切ったぜ…」
両手を膝について めいいっぱい酸素を肺に送り込む
「さすがユキ…撒くのも一苦労だ」
しかし 撒いたからにはしばらく一安心だろう
「さて…確かミッションの内容は…」
『4番倉庫にある巨大なボールを3つ 9番倉庫まで運ぶこと
ただし ボールを運ぶ最中にそれが床や壁に触れた場合 新しいボールを使用すること』
だったよな?
ミッションって言うからもっと激しいものを予想していたが…なんとも地味な
いや まぁそんなことはどうでもいい
巨大なボールっていってるわけだし おそらく俺ひとりで一気に運ぶのは不可能だろうなぁ
効率よく一気にやるなら3人 つまり逃走者が全員必要か…
ひとりで3往復するよりは追跡者に見つかりにくいだろうしな
そうと決まれば残り2人の逃走者に連絡したいが…誰が逃走者かわかんねぇ
ついさっきまで俺を追いかけてきたユキは追跡者だとして それ以外は誰が追跡者でも不思議じゃねぇな…
どうするかな…?
とりあえず――1番安全そうなサヨに連絡してみるか
サヨなら嘘つくのが苦手だから敵か味方かすぐわかるし――
仮に敵だとしても まひるや本多と比べれば逃げるのはたやすいだろう
サヨはどんくさいからな
そうと決まれば連絡だな
そう思ってケータイを開くと…
「なっ…なんじゃこりゃ!!
まひるから着信が715回もきてるぜ…」
ケータイを開いてまず目に入ったのが
着信 715件
という文字
そしてそのすべてがまひる
10:11 まひる
10:12 まひる
10:12 まひる
10:12 まひる
10:12 まひる
10:13 まひる
10:13 まひる
・
・
・
やばい…ある意味ホラーだ
リアルで怖い……
しかも1分に4件て…
こりゃリアルにストーカーの領域だぜ…?
…しかもこの場合 この着信は2通りの解釈ができるよな
その1 単純に心配して連絡をよこした→まひるは逃走者
その2 心配してるそぶりを見せ 俺が連絡するのを待つ→まひるが追跡者
…さぁ どっちだ?
…とりあえずまひるは後回しにして 当初の予定通りサヨに連絡するかな
「おう 俺だけど」
『あ ハセ君
どう?大丈夫?』
「おう なんとかユキを撒いたぜ…
というかあの従業員 確か…生沢って言ったっけか あんないい加減なヤツがW2をもてなすここの従業員なんかでいいのかよ… あいつのせいで無駄に疲れるし…って 愚痴を言いに電話したわけじゃねぇや
もうひとりの追跡者って誰だかわかるか?」
『えっと…もうひとりの追跡者?
えっ…えっと…わ 私…かな?』
「……………はぁ?」
自分から暴露しやがった…!?
『えっ あっ ま…間違えちゃった あ…あは
私じゃないよ!!全然…ね?』
「そ…そうか」
いや…これはサヨが追跡者確定で間違いないだろう
だってよ 追跡者が逃走者に自分は逃走者だと嘘をつくならメリットがある
しかし逃走者が逃走者に自分は追跡者だと嘘をついてもなんのメリットはない
例外は…他の追跡者と手を組んでる場合に状況を混乱させるため
しかしそれはまずないだろう
一匹狼タイプ(というかただの自己中)のユキがサヨと手を組むことはまずない
そしてもうひとりの追跡者と組むケースも同様
なぜならこのゲームのシステム上 逃走者同士が協力するメリットは大いにあるが 追跡者と逃走者が組むメリットが存在しない
まぁ追跡者に対して自分は追跡者だと嘘をつくならメリットがあるが 俺が逃走者だというのは周知の事実
つまりそれもない
よってサヨは追跡者であると断言に近い仮定ができるわけだ
まったくあいつ…天然属性でも始めたのか?
勘弁してくれよ…
まぁいい 追跡者が判明したわけだし 残りの2人に連絡して――ん…待てよ?
追跡者がわかったってことを利用してみるのはどうだ?
つまり追跡者に嘘のミッションを教えれば…安全にミッションがこなせるじゃないか!!
ふふ…悪く思うなよ サヨ