NMS ― 退屈だから…
「…というわけで かくれおにやるから」
「………はい?」
「だから何度も言わせんなって かくれおにやるのよ かくれおに」
朝起きて早々この怪力女は何を言ってるんだ…?
「サヨ 通訳頼む」
「えっと…私もわかんない…かな」
「…まひる」
「これはもちろんユキ先輩が私と先輩のために用意してくれたビッグイベントで 皆さんがかくれおにをやってる最中に私たちはこっそり甘~い時間を過ごして――やんっ先輩…そこはまだ…っ」
「あぁ…また旅立っちまったよ…
仕方ないな 頼んだぞ本多」
「…俺たち生徒会が暴徒を相手にしたときに戦況を優位に進めるためには体力と洞察力 判断力そしてチームワークが必要だ
そこで…かくれおに
おに――つまり追跡者を2人 逃走者を3人にして行う
これは実際に学園を舞台にして行われている"戦争"を想定したものだ
逃走者は 逃げ隠れしながら色々と仕掛けてくる暴徒を想定 無論追跡者は生徒会役員を想定している
まさに実践を想定した完璧な遊びだ」
「お…おう そうなのか…?」
まさかユキがそこまで生徒会のことを考えていたとは…
「いや…私もそこまで考えてなかったんだけど」
「考えてねぇのかよ!!」
思わず突っ込む
「私はただ この島でやることもなくなったから とりあえず体を動かしたかっただけなんだけど…」
「…だとよ 本多」
「ふっ…だと思ったよ…」
せっかく本多がフォローしたのにな…
これにはさすがの本多も顔がひきつってら…
「と…とにかく かくれおにやるから!!」
くっ…相変わらずの強引さ
従うしかなさそうだな…
まぁどうせ暇だし 構わないかな
「えっと 結局どんなルールなんですっけ?」
「とりあえず逃走者は見付からないように逃げ隠れすればいいよ
で 追跡者は逃走者を取っ捕まえればいい
だろ 本多?」
「普通のかくれおにならな
だがそれじゃ面白みに欠けるであろう?」
本多が不敵な笑みを浮かべる
「やるからには面白い方がいい
…違うか?」
俺たちは顔を見合わせる
本多のヤツ なに考えてんだ…?
「先程 ここでの俺達の世話係に話をつけてきた」
この島に来てから 身の回りの世話などはほとんど従業員がやってくれているが その中でもひとりあからさまに接する機会が多い従業員がいた
本多のいう"ここでの俺達の世話係"ってのは 多分その従業員のことだろう
「詳しいことはゲーム中にわかるだろう
とにかく それが特別ルールだ」
「ふーん なるほどねぇ
他のルール 例えば連絡の取り合いはいいのかとかは?」
「連絡の取り合いは当然自由
逃走者が追跡者だと また 追跡者が逃走者だと言って相手を騙すのもあり
騙されても文句は言うな これは"戦争"だ」
「わー なんだか面白そうになってきましたね
さすが本多先輩です」
「ちょっとまひる!
私が発案したからこんな楽しいゲームができるんじゃないの!!
私を褒めなさいよ」
「おいユキ 聞いていなかったのか?
これはゲームではない "戦争"だ」
本多が言い放つ
そこから普段のマゾな香りは一切ない
ユキでさえ本多の迫力に気圧されている
誰かがごくりと生唾を飲んだ
これは楽しいことになってきたぞ…!!
そろそろここでやることもなくなってきてるし 丁度いい
存分に楽しもうじゃねぇか!!
"戦争"を!!