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星の丘学園戦記  作者: 東雲 暁星
NMS
80/91

NMS ― かぽーん



カコン



「ふぅ~生き返るぜっ」





満天の星空の下



どこまでも続く水平線





これを絶景と言わずなんと言う?





「まさかここで露天風呂に浸かれるとはなぁ」



しかも貸し切り



日本区民にとって これ以上の贅沢があるだろうか?





「極楽極楽ーって 1回言ってみたかったんだよな」



周囲に誰かがいたら そんなこと恥ずかしくて言えないが――思わぬところで小さな夢が叶ってしまった





そもそも 温泉なんて何年ぶりだろうか…







………そうか 家族で行ったのが最後だな




俺にも――いや 俺の家族にも だな――あんな時があったなぁ




もう ずいぶん昔のことのようだぜ…



まぁ実際ずいぶん前の話だが





「また今度 墓参りに行かないとな…」







カコン





「いかんいかん…つい思い出しちまったぜ…」





家族の思い出と







あいつへの 憎しみが









カコン





「…って なんで露天風呂にししおどしがあるんだ?

そもそもここは14階だし 鹿なんていねぇだろうが」



さっきから一定のリズムを刻んでいるそれは 決して カポーン って感じの浴場シーンで鳴る音(?)ではなく 確かにししおどしの音なのだ





…まぁいいか



どうせあれだろ 中途半端な日本好きで 間違った解釈をしてる他区民が造ったってやつだろ?



俺は寛大な日本区民だからな 許してやるぜ





とはいえ カコンカコンうるさいから 色々と思考の邪魔なんだがな…



「まぁいいか…

のぼせてくるまえにあがるとしようか」





もう一度星空を見上げる



あいもかわらず星が瞬いている



終わることのない日常を体現しているようで――



それでもいつか 物語に終わりは来る



それがいつだかはわからない



ひとりひとりの――人生という物語





永遠なものなんてひとつもなくて



それでいて その実感がわかなくて



いつからだろうか 星を見上げるようになったのは…





星を見てると心が安らぐ



すべてを包み込むようで



そして――何か大切なことを忘れているということに気付けと語りかけてくるようで





思い出せない何か



思い出さないといけない気がする何かが…



「痛っ…また頭痛か…

最近なんか多いなぁ…

しっかり休んでるつもりなのに」



ふぅ とため息をつき 無意識に胸元の金色を握りしめる



これがあれば大丈夫



いつも近くにあの人が居るような気がするから…




カコン




忘れられない



忘れちゃいけない



大切な人





「さて…っと

のぼせる前に上がるかな」



時間は深夜



みんなが寝てる間に こっそりと露天風呂に来たから 帰るときも起こさないようにしないとな…



なぜかみんな俺の部屋で寝てたからね







もう一度空を見上げる





星が綺麗だった



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