NMS ― 旅行の醍醐味?
「先輩…起きてください…」
誰かが耳元で囁いてる気がする
「もう…起きないとあんなことやこんなことをしちゃいますよ?」
な…なんか物騒な台詞が聞こえたような…
「んー…」
「あっ…起きちゃいましたか
ちっ…残念です」
目を開けると何故か目の前にはまひるがいた
…あれ おかしいな?
確か俺は一人部屋だったはずで――鍵もちゃんとかけたのに
「…で なにをやってんだ?」
そして何故かベッドに潜り込んでくる少女×1
「そりゃもちろんまだ先輩の温もりの残るベッドの匂いを堪能してむずむずはぁはぁするんですよ!!
旅行の醍醐味じゃないですか!!」
どんな醍醐味だよ!!
というかむずむずはぁはぁとか言うな!!
「はぁ…結局何の用だよ…?
メシか?」
「ご飯と言いますか…まぁ私は現在進行形でオカズを頂いてるわけですが――」
「誰が上手いこと言えって言ったよ?」
「先輩こそご飯と上手いを掛けてるじゃないですか!!」
「…あ ほんとだ――じゃなくって!!」
危うくごまかされるとこだった
「結局メシなのか?」
「まぁご飯なんですが 私が頼んでおきました!!」
「頼んでおいた…?」
「まぁもうしばらく待っててくださいよ」
すると ドアをノックする音
「あっ 来ましたよ!!はいはーい」
まひるがドアに向かう
そしてなにかを押しながら帰ってきた
「ルームサービスですよ」
そういって押してきた小さなワゴンから料理を次々と出すまひる
次々と…次々と……次……まだあるの!?
「――って どんだけ頼んでるんだよ!!」
明らかに2人分ではない量のおいしそうな料理が並ぶ
「だって今日は朝から海に行くんですよ?
いっぱい食べなきゃ途中でお腹空いちゃいますから」
…そういえばそんな話してたな
いや だからってこの量は普通じゃないだろ…
「仕方ない…サヨも呼ぶか」
「えーっ 先輩は私だけじゃ満足できないんですか?」
「いや…だからさ
満足云々じゃなくて 満腹通り越して泳げなくなるというか…
とにかく この量を2人で食べるのはキツイだろ?」
「だったらなんで呼ぶのがサヨ先輩なんですか?
本多先輩でもいいじゃないですか!!」
「いや…ほらあいつらはあいつらで忙しいんだよ」
「…忙しいってなんですか?」
や それはほら ちょっと…
ほら あれだよ
片方Sでもう片方はMなんだ
そしてその2人が相部屋
もうこれ以上何も語る必要はないよな?
邪魔するのは無粋ってもんだろ?
「とりあえずあいつらはきっといまお取り込み中なんだ だから諦めろ」
「だったら先輩こそ諦めて私と結婚しましょう!!」
そうだな――って あれ…なんで俺はプロポーズされてるんだ?
そんな話してたか?
サヨを呼んで一緒に朝飯にするかどうかって話だったよな?
「その無言 承諾と受け取りました!!」
「いやいやいや!!
ちょっと…というかかなりな急展開に頭がフリーズしてただけだから!!」
「もぅ…いい加減観念してくださいよ」
「いや…そう言われてもなぁ…」
「私…この旅行で先輩を落としますから!!」
「いやいやいやいや!!
そんな宣言されても困るよ!!」
「じゃあせめて…思い出してもらいます…から
私のことを…あの約束を…」
そういって微笑むまひるはどこか――昔を懐かしむような それでいてどこか悲しげな表情だった
結局その後 部屋から消えていたまひるを探しに来たサヨと 何故か目の下に隈を作りながらも満面の笑みを浮かべるマゾ本多(手首の辺りに縄の跡があったような気がするけど俺は断固見てない)とユキと一緒にまひるが頼んだ朝食を食べた
ルームサービスだなんて侮れない美味さだった