NMS ― 夜のお約束
「というわけで第2回先輩争奪戦の開幕です!!
わ-ぱちぱち!!」
夕食改めディナーから戻った俺たちに向かい まひるはまた高々と宣言した
「え!?またやるの!?」
「そりゃそうですよ!!
だってまだ私と先輩が結ばれてませんから!!」
それ…終わらない気がする…
「でもそれじゃ埒が明かないよね?」
おお…ここで救いの手が…
あぁ…サヨ様
後光が射していらっしゃる
「他のゲームにしない?」
え…?そうなりますの?
天使が裏切りおった…!!
「じゃあ…王様ゲームなんてどうよ?」
ここでサディスティックな笑みを浮かべて言い放つユキ
鬼!!悪魔!!
お前には血も涙もねぇのかよ!!
「王様ゲームってなんですかー?」
しかしまひるがクエスチョンを浮かべる
…これはチャンスだ!!
「ほら まひるも知らないことだし王様ゲームはやめにしないか?」
これで完璧だろ!!
王様ゲームなんてやったら身が持たないからな…
だってこのメンツだぜ?
サディスティッククイーンのユキ
妄想癖&暴走癖の持ち主まひる
何をしでかすかわからない本多
…影の薄いサヨ
だからぜひ王様ゲームなんてやめるべきだ!!
どうせまたサヨが空気になって可哀相だからな
「ねぇ ハセ君?
なにか変なこと考えてない?」
「い いやまさか!!
とりあえず王様ゲームはやめとこうぜ?」
「大丈夫よ 問題ないわ
ルールも簡単じゃない?
みんな一斉にクジを引いて 王様が番号を指名してあんなことやこんなことを命令するだけなんだから」
「あんなことやこんなこと…ですか?」
明らかにまひるの目が光った
そして不気味な笑みを浮かべて見つめ合うユキとまひる
これは…やばい
「でっ…でもほら クジがないからさ」
「蝋燭ならあるわ!!」
だからなんで蝋燭なんだよ…!!
「1,2,3,4,王様…と できたよ」
そしていつのまにかサヨが爪で蝋燭を削ってた
皆さん…やる気なのね…?
…仕方ないか
「あーもうわかったよ
やりゃいいんだろ やりゃ」
「やっとその気になりましたか 先輩?
これで先輩のハジメテをいただきですっ!!」
「いやいやいや!!
何をおっしゃられますか!?」
「…諦めろ 会長」
ほ…本多まで…
「…いいだろう 受けてたつぜ!!
それに俺が王様を引き続ければ問題なしだ!!」
そしてサヨが握る蝋燭を1本引き抜く
「ぬぉぉぉお…!!」
3だった
そして次々に蝋燭を引き抜く残りの3人
サヨは残った蝋燭だ
さて…王様は…
「…俺だ」
本多だった
本多ならまだマシだろう
ユキやまひるに王様が行くよりはな…
…そうだと信じてる!!
「では言おう 3が―…」
ふむふむ…って俺じゃん!!
マジかよ…
変なのは勘弁だぜ…?
「王様をひっぱたく!!」
な…なんだってー!!
まさかのパターン
…しかしさすが本多
このマゾ精神には脱帽だが…
俺がひっぱたくのかよ…
「ふっ…さぁ来い」
…仕方ねぇか
「本多 覚悟っ!!」
「なっ…会長かよっ…!!」
ぱちーん
心地好い音が響いた
「くっ…まさか会長が引くとはな…
1/4の確率でアタリだがハズレも同じ確率だったのを忘れていた…」
頬を押さえて本多が言う
「ハズレで悪かったな」
俺だって引きたくて3を引いたわけじゃねぇよ
「ちっ じゃ次いきましょー」
まひるが蝋燭を回収する
…あれ? なんか舌打ちが聞こえなかった?
…深く考えないでおこう
「はい引いてください」
そして蝋燭を差し出すまひる
「………………」
…明らかに1本だけ飛び出てる
「さぁ 早く引いちゃってください!!」
…この飛び出てるのを引けってか?
明らかに仕組まれてるこれを引けってか!?
…いや 見えないフリだ
飛び出てる蝋燭なんて俺は知らん!!
そして残ってる4本のうちから適当なのを抜こうとすると…
「先輩 空気読んでくださいね?」
普段のまひるからは想像もつかない低い声で忠告されてしまった
…そもそもなんの空気だよ?
はぁ…結局これを引くのか…
覚悟を決めて引き抜く
2
はぁ…いったい何を強要されるのやら
…いや 待てよ
俺の番号がわかったところでまひるが王を引かなきゃ意味がないじゃないか!!
ということはまだ助かる道はあるじゃん!!
「ささ 他の先輩方もどぞどぞー」
こうしてサヨ 本多 ユキが引き終わった
これで他の3人が王様を引いていれば――
しかし 3人のうち 誰も自らを王様と名乗ることはなかった
「先輩方の誰も王様じゃないってことは私が王様ですね!!」
最悪の事態だ…
「ではいきますよー?
2番が王様のほっぺにちゅーですっ!!」
「な…なんだって…!!」
ちゅーだと…!!
俺がまひるのほっぺに…ちゅーするのか!?
明らかに仕組まれたこのゲームで 王様に従うのか!?
くっ…しかし王様の命令は絶対だからな…
そう覚悟を決めてまひるに向き直った
頬を赤らめて目を閉じるまひる
だが――なぜか本多が待てをかけた
「どうしたんだよ?
俺としちゃ ちゃっちゃと済ましたいんだが」
「そんなにキスがしたいのか?
ならば邪魔はしないが」
「いやまぁ…こういうのはできれば罰ゲームではやりたくないけど…
で なんなんだ?」
「ひとつ確認したくてな」
「…確認?」
「あぁ 既に王が命令を言い終えたから問題なかろう」
「だからなにがだよ?」
「俺とサヨとユキの番号を公開する」
なんでだよ と言おうとしたが――
「そっ そそ…そんなことする必要ないじゃないですか!!
も もぅ 本多先輩ったら 自分が王様になれなかったってルール無視は卑怯ですよっ!!」
「ほう…まさか俺が気付いてないとでも?」
さっきから本多が言ってることがさっぱりだ
「おい本多 全員にわかるように言ってくれよ」
「そうだな まぁ全員の番号を公開すればわかる
さて サヨは何番だ?」
「私は1番だったよ?」
「えっ!?おかしいわよ?
だって私も1番だもの」
「はぁ?どういうことだ?」
「ちなみに俺も1番だ」
ますます意味がわからない
「ア〇ギもびっくりの手癖の悪さだな 見事だ」
観念したのか まひるがポケットから5本の蝋燭を取り出す
その蝋燭にはちゃんと1から4の数字と王の文字が
なるほどな
どうやらまひるは本来のクジ付き蝋燭を隠し 仕込み蝋燭(1が4本で2が1本)とすり替えていたようだ
「うぐぐ…完璧な作戦なはずだったのに
酷いですよ 本多先輩!!」
まひるがふくれながら文句を言う
「ふん…お前だけにいい思いはさせんよ」
どうやら本多はさっきのをまだ根に持ってるようだ
…というかそこか!?
問題はそこなのか!?
…いや まぁ なにはともあれ ほっぺにちゅーは無しになったみたいでよかったよ
…しかしまだ旅行は始まったばかり
これからなにが起きることやら…
正直不安でならないぜ…