NMS ― 斜め45度!!
「とゆーわけで 早速部屋割を決めましょー!!」
フロントでキーを受け取ったまひるが 声高々に宣言する
「は…?部屋割?」
当然なんの話かわからない
「そうですよ先輩!!」
そう言ってキーを3つ掲げる
「…って なんで3つなんだ?」
キー2つで男子部屋と女子部屋にわけるのか普通じゃねぇのか!?
「あぁ それだがな」
すると本多が口を挟む
「学園長の計らいで より親睦を深められるように とのことだ」
「親睦ってなんだよ!!
計らいじゃなくて謀らいだろ!?」
何を考えてるんだあの日の丸扇子は!!
「先輩 上手いこと言いますね!!
座布団2枚の代わりに私を差し上げますっ!!」
「いや そんな企画じゃないし」
いつも通りのまひるを軽く受け流す
「ちなみにシングルひとつとペアふたつだ」
「…そうか なら俺と本多で1部屋だな」
「違いますよ先輩ー
私と先輩で1部屋です!!
そして始まる私と先輩の"愛の物語"
その名も『の・う・さ・つ(はぁと)メモリアル・サマー』略してNMSですっ!!」
「いやいやいや!!
ダメだろいろいろと!!
ってか勝手な企画を立ち上げないの!!
しかも悩殺って何さ!!」
「あ 気になりますか?
でもまだ秘密ですよ?
そういうのはふたりっきりになってからじゃないと 心の準備が…」
「いや 断じてそういう意味じゃないから!!」
「もぅ そうだよまひるちゃん」
サヨも止めにかかってきた
「そうだサヨ 言ってやれ」
「うんうん こういうのはくじ引きにしなくちゃ」
そうそう くじ引きに―…って
「なんでそうなる!?」
「え?だって平等じゃん?」
いやいやいや…
平等って…そもそも何がだよ!!
「ってか くじがないじゃん」
そう くじさえなければくじ引きはできない
つまりは大丈夫
俺は普通に本多との部屋割が約束されるのだ!!
…しかし そう上手くはいかないのが世の中ってヤツみたいだ
「なに?くじ引き?
蝋燭なら何本も持ってるわよ?」
そういってカバンから蝋燭を取り出すユキ
「ちょっと待てユキ!!
なんで蝋燭を持ち歩いてるんだよ!!」
「そりゃ使うからに決まってるじゃないの」
現代の文明社会において 蝋燭を使う機会はめっきり減った気がするんだが…
というかこいつの場合 ある特定の用法しかねぇだろ
「じゃあこの蝋燭の端っこにマークを書きましょー」
「…って本当に蝋燭でくじ引きするの!?」
「別にいいではないか」
あぁ…もう好きにして下さいな
「じゃあ○と□とが2つで◇が1つね」
サヨが蝋燭の根本に爪でマークを掘る
「はい 順番に引いてね」
そしてマークを手で隠して構えた
本多が無言で1本引き抜く
「○だ」
「じゃあ俺は…よっ」
俺も1本抜いた
「◇だな」
「えー!!
なんで◇なんですか!?」
「いや…なんでって言われても…」
「同じ部屋がよかったのにぃー…」
「は はは…」
というか 本多が○で俺が◇
つまり本多は女子と相部屋かぁ
…俺ひとりか
「うぅー…」
まひるが呻きながらも1本抜く
「◇来いっ!!」
「や もう◇ないから!!」
「あっ!!◇ですっ!!」
「嘘っ!?」
まひるが引き抜いた蝋燭を斜め45度回転させて叫んだ
「…いや それ□だから」
「いいえ!!こうすれば◇なんです!!」
…聞き分けが悪かった
「じゃ私も」
ユキが引いたのは…○
てことは…本多とユキ
まひるとサヨか
…本多とユキ!?
「サディスティックな女神は俺に微笑んだ…」
あぁ…本多が旅立たれた…
「よろしくね まひるちゃん」
「私は先輩がよかったのにぃー…」
「うぅ…ひどいよ…」
こっちではサヨが傷付いてるしさ
「諦めませんよ先輩!!
部屋が違っても作戦ネームNMSは実行ですから!!」
あぁ…先が思いやられるぜ…