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星の丘学園戦記  作者: 東雲 暁星
学園戦記、夏
62/91

学祭戦記、夏 ― 警鐘



足音も気配も消して歩く





…ふっ 完璧だ



開会式の停電騒動に始まり


放送室のジャック


中庭での犯行予告に


サトミと武田の放送ジャック



附属校舎裏の騒動での本多の登場は予想外ではあるが…誤差でしかない



…すべて想定の範囲内


計算通りだ







あとはフィナーレを残すのみ





…どうやら俺の勝ちのようだな 長谷川





あらかじめ用意しておいた屋上のキーのコピーをポケットから取り出す



こいつの入手には手こずったが…もう過去の話




ここにフィナーレに相応しいものを用意してある



…さすがの俺もこいつの用意には少し手間取った



以前頂戴した分だけでは物足りなかったからな



しかし そこは俺だ


抜かりはない 極上を用意した





キーをリーダーに通す



…鍵の開く音がした



あとは閉幕の時間にあわせてセッティングするだけ





いざ 勝利の祝砲を!!





ぎぃ… と音を立てて扉が開く







…聞こえないはずの声が聞こえた



「ようこそ 貴様の終焉の地へ なぁ…渋谷」





そこにいたのは…長谷川!!



「なっ…何故ここにいるのだっ!?」



「何故って?そりゃわざわざお前を待ってたんだよ 渋谷」



そう言って 驚きのあまり硬直する俺の手首に何かが触れる



…手錠 いや 手枷か



しかもこいつは…本多の手作り…





そんな…終わったのか…?





俺の計画が…俺の夏が…!!





「な…何故わかった…?…俺がここに来ることが」



いまだに信じれない 信じたくない!!



誰も知らないはずだ!!



武田やサトミにですらフィナーレの詳細は言ってない



確実に成功を…勝利を収めるために すべてひとりで準備をしてきたのに…!!





「知りてぇか?」



長谷川が余裕の笑みを浮かべる



…去年まではこの笑みを見ると心強かった





だがいまは違う…





いまは…敵同士なのだから





「口コミだよ たった一件のな」



「な…っ!?口コミだと!?しかもたった一件?」





まさか…作業しているところを見られたとでも言うのか!?





そんなはずはない!!



常に真夜中 明かりも点けずに作業に明け暮れていたのだぞ?



しかも特別教室棟の屋上だ!!



附属棟や本校棟よりも高い位置にあるこの場所をどうやって見たと言うのだ!!




「でたらめを言うなよ長谷川!!

誰にも見つかるはずはなかった!!」



「だが現に俺はお前がここに来ることを知っていた それが事実だ 違うか?」



「くっ…」



ぐうの音も出ない…



「ははっ…さすが長谷川だな…お前を失ったのが本当に惜しい」



負け惜しみでもなんでもない素直な感情が零れる



「もう一度…一緒に暴れたかったぞ…」



それが自然と口から漏れた



「悪ぃが渋谷 俺はこっち側なんだ」



長谷川がどこか懐かしむように言う



「例の賭けに負けたからか?

だったらもういいではないか!!

どうせ来年になればいまの総会長は消えるのだぞ?

もうお前は自由に―」



「いや あいつがいなくなっても俺はこっち側だ」



「…親父へのせめてもの抵抗か?」


すると長谷川は一瞬眉をひそめたが すぐにため息をつき



「…否定はできないな

まぁこんなことをやっていても何も変わらないんだけどさ…」



「ならばやはり―」



「でも俺はこっち側にいたいんだよ 自分の意思で…な」



「そうか…まぁそこまで言うなら仕方ない…体育祭を楽しみにしておこう」



「体育祭?」



「あぁ 体育祭 一年ぶりにお前と…いや違うな

一年ぶりに√3再結成だ」



「そうか 体育祭は暴徒も生徒会も関係なかったな

…確かに楽しみだよ またお前らと一緒にバカやれるのがな」



「だったらやはり―」



「それは…もう言うなよ」



「…あぁ そうだな」





しばらく沈黙が場を支配していたが 長谷川が思い出したように言った



「さて ID出せよ たんと減点をくれてやる」



「ふっ…仕方ない これが敗者の定めだからな」



そう言ってポケットに手を突っ込んだと同時だった





学園を大音量のベルが揺らした




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