学祭戦記、夏 ― かりそめの感情
ついこの前まで綺麗だったが ここ数日でボロボロになった靴が舗装された道を踏み潰す
ただあてもなく歩いていた
―いや 目的はあった
だが…どこにもない
俺が求める場所は どこにもない
もう…3日ほど歩いただろうか
…ここはいったい どこなんだろうな
どれだけ歩いても 視界を埋め尽くすのは等間隔で植えられた街路樹と ところせましと建てられた同じような建物
まるで見てる俺が錯覚するほどそっくりで単調なシルエットのそれらは 俺を嘲笑うように立ちはだかっていた
…しかし さっきからどうも様子が違う
真昼間だと言うのに人通りがなく車も一台たりとも通らない
住宅は無く ただ無表情な街路樹とずいぶん気合いの入っている太陽が俺を見下ろす
無意識に歩いていたはずだが 何故か吸い寄せられるようにその先に向かおうと足が動く
とっくに足の感覚なんて無かった
意識も朦朧とする
それでも自然と体が動いた
…あぁ そうか
きっとこっちにあるんだな
…俺の望む場所が
どれくらい歩いただろう
視界が開けた
小高い丘のうえに それはあった
「…学校?」
しかし記憶の中の学校よりも幾分も騒がしい
…学校ってこんなに騒がしいものだったか?
その疑問は次の瞬間解けた
「第7回…学園祭」
ずいぶんと大きな門の隣に それに負けじと自己主張をしている看板にそう書いてあった
「…ずいぶん楽しそうじゃねぇか」
それを見て ここ数日忘れていた感情が蘇る
あぁ…俺にもまだ感情はあったのか
まだ俺は…生きているのか…
「ふっ…ふははっ…」
俺の中にあった何かが 音を立てて崩れた
「…壊れちまえよ」
もう失うものはない
もうなにも俺にはない
俺だって…幸せでいたかった
この前まで…幸せだった!!
神は不平等だ
だから…味わえばいい
俺と同じ気持ちを
俺が代わりに教えてやるんだ
絶望という2文字を




