学祭戦記、夏 ― 取り巻き×3
「こいつの調子は問題無かったな」
大活躍の暴れ馬 改造護送車を車庫(監獄の付近)に戻すためにやってきたはいいが―
「…本当にこっちなの?」
「間違いないわよ!!
だってお姉様の匂いが―」
「だから匂いって何よ!!」
「じゃあ他に手がかりがあるの!?
ないなら私の嗅覚を頼りにするしかないでしょ!!」
…謎の女子生徒×3が明らかに怪しい会話をしながらうろついている
「この辺のハズなのに…」
監獄の入口付近で!!
会話内容から察すると―監獄に収容されている人物を探しているようだ…
俺としてはさっさと護送車をしまいたいのだが―
いましまいに行けば この生徒×3に監獄の位置がばれる可能性が大きい
この生徒×3を不審生徒として監獄送りにできないこともないが―明らかな暴徒行為でないため監獄送りにできない可能性がある
それに―こちらから話し掛けるのは不自然
状況は不利だ…
こっちは暇じゃないんだがな
「あの ちょっといいですか?」
頭を抱えていると その生徒のひとりに声をかけられた
「あの…お姉様―じゃなくって サトミ様は監獄に居るんですよね?」
サトミ…あぁ 放送ジャックしたヤツか
「生徒会側に捕まったみたいだし そうじゃないのか?」
曖昧な返しをしたが 確かにサトミは監獄だ
なにせ俺が護送したのだからな
しかし相手はどうやら俺が役員とは気付いてない―つまり護送車の存在を知らない―みたいだ
俺は割と有名だと思っていたが 基本裏方なのがラッキーだったか?
「監獄がどこだかわかりますか?」
「監獄?悪いけどちょっとわかんないな」
まぁ 知ってるがな
「この辺らしいんですけど…そうよね?」
生徒A(とでも言おう)が生徒Bに聞く
「そのはずなんだけど…」
「けど?」
「この人からもお姉様の匂いがするのよ」
そういってこっちを見る生徒B
同時にAとCも俺を見る
「匂い…?あいにく心当たりはないんだが」
内心ヒヤッとしたが そんな曖昧なものはスッパリ否定すれば問題ない
向こう側に気のせいだと認識させれば俺の勝ちだ
「気のせいですか…」
ほら もう落ちた
どうせ特に経験もない素人
これで問題解決―
「いえ そんなハズはないです!!
確かに匂いがするんですよ!!」
「……………そうか」
仮にも女子に真っ正面から匂うと言われたらへこむな…
別に俺が匂ってるんじゃなくてもへこむ
…はっ 精神攻撃か!?
こいつ…なかなかやるな
「そろそろ失礼しても構わないかね?
あまり暇ではないもので」
ごまかせないなら逃げるだけ
適当にあしらって解散してもらうしか―
「怪しいですね やっぱり怪しいです」
予想以上に粘るな
「…仕方ない これ以上邪魔するなら生徒会に報告するぞ」
「卑怯な!!」
ああ…いい加減うっとうしい
そううんざりしていた時だった
見慣れない人影が門のところに見えた
…なんだ アイツは?
いや 特に気にするような事じゃないか
いや でも―
「聞いてるんですか?」
声で現実に引き戻される
「いや 聞いてない」
「うっ…ストレートに返された」
やっぱり嫌な予感がする
「悪いが野暮用が出来た 失礼する」
「えっ?」
生徒ABCが返事をすると同時に俺はアクセルを入れた
嫌な予感を振り切るように