学祭戦記、夏 ― 気の緩み
忘れがち(?)ですが
一応未来のお話です笑
そして通貨は米ドルです
それ以外で何か訂正すべき点があればご指摘下さいな
「ハセ君は焼きそばにする?それともフランクフルト?
あーでもタコ焼きも捨て難いよね」
「あ あぁ…そうだな」
再び俺たちは中庭に来ていた
もちろん少し遅い昼飯のためだ
学食でも良かったのだが せっかくだからという理由で他のクラスの露店で昼飯を済ますことにした
「あっ あれは!!」
そう言ってサヨがとある露店を指差す
「ん? たません?」
たませんという看板の出ている露店を指差すサヨ
「ハセ君知らないの!?
今回の学園祭の最高売上大賞の最有力候補なんだよ!!」
そしてなぜか凄い勢いで語るサヨ
「そ…そうなのか?
ただのたませんじゃねぇの?」
「ただのたませんとは失礼だよ!!
卵は青森から取り寄せた最高級比内地鶏の卵を使用してて えびせんだって創業1000年を越える老舗が一枚一枚丁寧に焼き上げた代物!!
しかも原料のえびは希少価値の高い天然ものを100%使用!!
25種類ものトッピングは何をどれだけセレクトしてもたったプラス1ドル!!
ほら あの生徒なんてたませんよりトッピングがメインになっちゃってるよ」
そういって指差す先には―たませんから溢れんばかりの(ってかおもいっきりはみ出し溢れてる)トッピングにかぶりつく生徒×2
「………難儀だな…ってサヨ?」
隣にいたはずのサヨが いつのまにかたませんの列に並んでいた
「ほらハセ君!!なにぼーっとしてるの?」
そして手招き
「…えっと サヨ様?
並ぶんでございましょうか?」
動揺を隠せず言葉がおかしくなる
「当たり前でしょ?私は今日このために生きてきたんだから!!」
いや…もっとまともなものの為に生きてください
「ほら 早く早く!!」
促されたが…とりあえず列を一瞥
それはまさに長蛇の列だった
ざっと待ち時間は30分ってとこか…
「いや…俺は遠慮しとくよ」
そう言って左手を挙げる
「えー ハセ君も食べようよ」
「いや まぁ…俺は焼きそばにしとくよ」
「たませんのトッピングに焼きそばもあるよ?」
「それもうたませんじゃねぇだろ!!
どっちかと言うと[オムソバ崩れをえびせんで挟んじゃいました]って感じじゃねぇかよ!!」
「他にもフランクフルトやタコ焼きもトッピングできるよ?」
「なんでもアリかよ!!
そりゃ最高売上大賞の最有力候補にもなるはなぁ!!
ってか反則だろ!?
赤字覚悟か!?
まともなトッピングはねぇのかよ!?」
「まともなのかぁ…たまごとか?」
「最初から挟まってるじゃねぇかよ!!
なんだそりゃ ダブルたまごサンドのノリか?
それともあれか くだらないジョークか?」
「違うよ トッピングのたまごは名古屋コーチンのたまごを使用して―…」
「んなことどうでもいいわー!!」
ついつい大声で叫んでしまった…
いや まぁ…さっきからずっと大声でツッコミを入れていたわけだけど
叫んだせいで辺りは静まり返り みんな一斉にこっちを見ていた
「あ いや…すみません
気にしないで下さい…」
反射的に謝ってしまう
周りの生徒はすぐに何事も無かったようにそれぞれ思い思いの行動を再開するが―俺は少し違和感を感じていた
一瞬静まり返ったときに…なにか炸裂音のようなものが遠くから聞こえたような…
そう思って考えていると ふとあることに気付いた
「しまったっ!!イヤホン外したままだ!!」
まひるのアレが治まるまでの間外すつもりが 外したまますっかり忘れていた
…イヤホンを付け直した俺の鼓膜を盛大に震わせたのは―役員の悲痛な叫び声だった
『代行!!代行!!応答してください!!代行!!』
「なっ…!!おい!!どうした!!」
『あ…代行!!こっ こちらF4!!
至急応援をお願いします!!
もう…限界ですっ…!!』
「限界…?いったい何が起きた!?」
『暴徒です…!!附属棟校舎裏にて…っ!!
F隊総動員ですが押されています!!』
「なっ…だって…!!」
再び急に騒ぎ出した俺を不審に思う視線が突き刺さるが―今回はそれどころじゃなかった
「ハセ君?どうしたの?」
「ヤバいぞ…サヨ
とっ とりあえず俺は行く!!
悪いが俺の分の昼飯も買っといてくれ!!」
そう言って俺は自分のIDカードを手渡す
露店の支払いも 当然IDカードで済ませるからだ
「あ…うん わかった!!けどIDは返すよ」
「いや…だって」
「今日は私が奢るからさ
ハセ君は早く行ってあげて?」
「…わかった 代わりに今度夕飯奢るよ」
「うん じゃ また後でね」
「おう 頼んだぞ」
言い終わらないうちに身を翻す
役員の悲痛な叫び声はまだ途切れていない
…しかし事件はこれだけじゃ無かった