表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の丘学園戦記  作者: 東雲 暁星
学園戦記、夏
53/91

学祭戦記、夏 ― 武田の最期



その声は壁に引っ掛かってたヘッドフォンから聞こえてきた



「おぉ 長谷川じゃねぇか ビビったぜ

だが聞いて驚け!!

実はな いまから学園内の放送をジャックしてやるぜ!!どうだ 参ったか?」



自信満々に言い放ったが



『んや 全然』



長谷川の反応は乏しかった



というか 声に哀れみが…



気のせいだよな?



「またまたぁー長谷川ちゃん ほんとは今頃焦ってるんだろ?

また放送がジャックされる!?ってさ」



『だから 全然』



「なんでだよ!!そこは普通焦るだろ!!」



『というか すでにジャックされてるし』



「はい?…どゆこと」



『お前電子レンジぶっ壊したんだってな』



「なっ…なんで知って―…い いやー なんのことかサッパリだぜ

ど…どうしたんだよ長谷川 いきなり変なこと言うなよ 焦ってんだろ?認めちゃえよ ははっ」



『や 焦ってんのお前だろ?お前こそ認めろよ』



「ぐっ…わかったよ…そのかわり誰にも言うなよ?その…恥ずかしいからよ」



『あぁ そいつぁ構わねぇけどよ』



「けどなんだ?」



『お前がさっき自分で言ったんだぜ?しかも学園中に』



「………は?」



『いや だから お前それマイクのスイッチ入ってるだろ』



はっとして手元のパネルを見てみる



放送中のランプが灯っていた



「の のーーーん!!」



『ちなみに いまの奇声も学園中に響き渡ったから』



「な…なんだと…くっ…さすが長谷川…

やることがえげつねぇぜ…」



『や お前の自滅だろ』



ザックリ斬られた



「うぐ…っ」



とりあえずこれ以上の自滅を避けるべく 手元のスイッチを切…ろうとして止める



「…ふっふっふ いいこと思い付いたぜ」



『ほぉ…なんだよ』



その声は明らかに挑発的な感情が込められていた



…見てろよ



「いまから学園中に長谷川の恥ずかしいあれやこれやを放送してやるぜ!!

どうだ 参ったろ?」



『おぅ そいつぁ困るな

…だがな そりゃ無理だよ タケ』



「は?意味わかんねぇよ

あれか? 虚勢だろそれ?」



『虚勢? 笑わせんなよ

とりあえずお前さ いまどこにいるんだ?』



「どこってそりゃ…あれ? そういやここどこだ?

特別教室棟の最上階なんて普段来ねぇしな

指示通りに機械的に来ただけだからな」



そう言って辺りを見回す





…狭いな



それになんか…独特の匂い?



なんか涼しいし





『…で どこにいるんだ?』



「わかんねぇよ なんか狭いし独特の匂いがするし

わりと涼しいしよ…

どこかわかってんなら教えろよ」



『あ? いいぜ?ちょっと待ってろよ』



そう言った長谷川が ぼそっと何か言ったような気がした



とっきゅう…?

とつぐ…?

いや とつげきか?





すると長谷川の声とほぼ同時に 足音が聞こえてきた



それと話し声



「な なんだ…?」



足音と話し声はだんだん近づいてくる





「…がなくっちゃ」



「もう まひるちゃんったら」



もう声はすぐ近くだった




「じゃあちょっと待ってて下さいねー」



「はいよ 行っといで」



「はいー…って きゃ!!」



「…お?」



目が合った



確かこの子は―…



「まひるちゃん…だよな?どうかしたのか?」



そうだ 長谷川に付き纏ってるまひるって後輩だ



「…で お前ら何の用だ?

こっちは取り込み中なんだよ あっち行った行った」



しっしっと手で追い払う仕草をする



「あっ あんた何やってんの!?」



そう叫んだのはもうひとりの女子だった



まひるの方はと言うと こっちを凝視しながら壁にもたれ掛かって固まっている



「見りゃわかるだろーがよ!!

放送乗っ取ってんだよ!!

あっちこっちから俺の声聞こえてんだろ?」



「や そうじゃなくて…」



「じゃあ何なんだよ!!」



「あんた ここ…女子トイレだよ」



「………はぃ?」



狭くて 独特の匂い


そしてどこか涼しい



よくみると…放送機材は便座の上に乗っていた



「なっ なんですとー!?」


一気に状況がわかってきたぞ



つまり 客観的に見ると



俺が女子トイレに篭っていたところ 女子がトイレにやって来てしまった



そして見付かった



…女子トイレに潜んでいるところを







…俺 変態にしか見えねぇじゃん





「武田先輩のえっち」



「変態ね…」



「う…うわあああああぁん!!」



頭を抱えて叫ぶ



その拍子にトイレの個室の壁で肘を打つ



「ぅお!!痛ってーーーー!!」



蔑んだ目で俺を見る二人の少女の口元が笑っていたが―それに気付く余裕はいまの俺にはなかったし


それの本当の意味にも気付かなかった







『よう変態 学園中が騒然としてるぜ?』



長谷川の声で我に返る



「が…学園中…?」



放送機材に目を移す



放送中を示す赤ランプは灯ったままだった



「しっ しまったぁーーー!?」





「…変態が叫んでます」



「そうね…変態が叫んでるわ」



『自業自得だなタケ…ゲームオーバーだ』












この日からしばらく


俺こと武田は変態と呼ばれ続け


廊下ですれ違う人はみな俺を蔑んだ目で見た



そして俺は誓った



いつか女子トイレに復讐することを…!!




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ