学園祭準備編 ― 前夜祭は嵐の前の
「異常はねぇか?」
『…大丈夫です』
「よし 撤収してくれ
みんな明日も頼んだぞ」
「ふぅ…終わったか…」
「何言ってるの?明日が本番だよ」
「うぅ…」
俺の安堵感たっぷりのため息はサヨの一言で掻き消された
PM10:00
学園祭に向け最後の校内見回りが終わった
今日の前夜祭の最中からずっと休み無しで校内を駆け回ったのだからため息のひとつくらいつかせて欲しいところだ
「…目立った動き 無かったね」
毎年前夜祭も大騒ぎになるのに今日は大きな騒動はなかった
騒動といえば…テンションの上がり過ぎで騒いでいる生徒を注意する程度
…嵐の前の静けさとしか考えられいよな
「結局渋谷も姿をくらましたままかよ…」
超要注意人物である渋谷を俺とサヨで見張るつもりだったが…どこを探しても見付からなかった
「きっと明日の準備だよね…」
「きっと じゃなくて 確実に だな…」
それもそうだね
とサヨが笑う
結局以前花火部から盗まれた花火も見付かってない
万全の体制で挑みたかったが不安要素がありすぎる…
というか不安要素しか無かった
暴徒や渋谷たちは何を仕掛けてくるのか?
盗まれた花火の使い道は?
第三勢力の登場の有無は?
そもそも生徒会側に勝ち目は?
…考えるだけ無駄に思えた
「…大丈夫?」
思考の海をさまよっていた俺は現実に引き戻される
不安いっぱいの現実に
「とりあえず…メシ行くか?」
もちろん学食に
当然いままで夕飯を食べるひまは無かったため少なくとも俺は空腹感がハンパない
「あーハセ君には悪いけど 私部屋で食べようと思っててさ 買ったパンを部屋に置いてあるんだよね」
といって苦笑い
「じゃあ仕方ねぇな ひとりで行くわ」
「んー ごめんね」
「いや 気にすんなって
メシくらいいつでも一緒に食えるだろ?」
するとなぜかサヨは頬を赤らめ 一呼吸おいてから頷いた
「じゃ また明日ね」
「おう 寝坊すんなよ?」
「もぅ ハセ君こそね」
そういって笑いながらサヨは部屋に戻って行った
「…学食行くか」
サヨの背中が見えなくなってから俺はひとつため息をついて呟いた
そして
「…あん?あれって…」
振り返った先に見覚えのある髪色を見つけた