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星の丘学園戦記  作者: 東雲 暁星
学園祭準備編
34/91

学園祭準備編 ― 昔の夢


「…で なんで屋上なんかにいたんですかー?」



席に着くなり早速と言わんばかりに詰め寄られる



「いや…まぁ ちょっと頼まれてね…」



「へぇー 誰に頼まれたんですかー?」



「誰って…知らない女子生徒にだけど」



そう俺が言った途端まひるが持っていたフォークを落とした



「知らない女だったんですか!?」



「え うん まぁ…屋上に行ってくれって頼まれてさ」



「し 知らない女に…」



そして小刻みに震えるまひる



「…不潔です!!不純です!!この私を差し置いて知らない女となんて…」




…あれ?

もしかしてなにか勘違いしてる?



「あ いや 屋上にはひとりで行ったよ?」



「えっ?」



素っ頓狂な声をあげるまひる



盛大に勘違いしてたようだ



「いや なんかね

屋上で物音がするっていうからさ 見に行ってくれって頼まれて」



「あ あぁー そうだったんですかー」



どうやら誤解は解けたみたいだ



「…なーんて 騙されるとでも?」




「…えっ?」



…前言撤回



「…私の鼻はごまかせませんよ

先輩から漂う女のニオイはもっとべったりとした感じなんです!!

そんなさらっとした感じじゃないんです!!」


…だからどんな嗅覚してんだよ



「もっとこう…抱き合ったり…寄り添ったり…

こっ これ以上は大人の都合で言えませんが…

と に か く!!

絶対そんなようなことがあったはずです!!

あったに決まってます!!」



まぁ…確かに寄り添わられたな



抱き合ったり大人の都合で言えないようなことは特にはなかったが



…相手がバスローブ姿だったこと以外は問題ない





「黙っちゃうってことはそういうことなんですね…」



再び声のトーンが落ちる





「私 そんなに魅力ないですか…?」



ふとまひるが呟く



「いやいや…そんなことないよ」





まひるのことは決して嫌いじゃない



自分を好いてくれている可愛い後輩


スタイルも人気も抜群



…嫌いなわけがない





…だけど



胸元の金色が光る





「ありがと…先輩」



俺が奢ったパスタを食べ終わったまひるが笑顔を作る



けどその笑顔はさっきの淋しげな表情とどこか重なって見えた







「きっと…先輩は覚えてないんですよね…?」



「えっ…?」



「…私と初めて会ったときのことです」



初めて会ったとき…?



「入学式の話?

それとも…その翌日の話?」



入学式の翌日

彼女は附属生徒会室に来るなり『私を生徒会に入れて下さい!!』と 大声で叫んだのだ



俺が聞いた話によると―入学式で暴徒を鎮圧する生徒会役員に憧れを抱いたんだとか





「やっぱり…覚えてないですよね…あんな昔のことなんて…」



声が小さくて聞こえなかったがどうやら違ったらしい





彼女はどこか遠い目をしていた



「いまの私は…あの時と比べられないくらい幸せです」



「………?」



彼女の言ってることがさっぱりわからない



俺は…なにか忘れているのだろうか?





「先輩…私はいつまでも先輩だけを見ていますから…だからお願いです」



そういってまひるは俺の手を取る



「いつまでも…いつまでも…変わらない先輩で居続けて下さい」







不安そうに懇願する彼女は儚げで―

どんな意味なのかはわからなかったが―どことなく彼女の表情が真剣だったので…俺は何も聞き返すことなくただ彼女の手を強く握り返し…黙って頷いた




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