学園祭準備編 ― 通常の3倍…いや100倍くらい
「…結局何だったんだろうな?」
屋上に住まう謎の少女と別れた後 俺は学食に向かっていた
屋上でフレンチトーストと紅茶を頂いたが…さすがに朝まではもたないと思ったので夜食用にパンでも買おうとしたからだ
時間を確認すると22:00を少し回ったあたりだった
思った以上に屋上で時間を費やしたらしい
「ふぅー…」
何気なく溜め息をつくと前方から聞き慣れた声が聞こえた
「あーっ 先輩
どこ行ってたんですかー?探したんですよ?」
近付いて来る見知った顔
なぜか少しふらついているように見える
「ん?まひるか…どうした?」
近付いてくる少女に問う
「何となーく一緒に夜ご飯をと思ってたんですけど…先輩がどこを探しても見付からなくて困ってたんですよー
おかげで腹ぺこですよー先輩」
壁に手を付きもう片方でお腹を押さえる
何となく一緒に食べるために俺をずっと探してたのか…
相変わらず難儀だな…
「もーほんとにどこに行って―」
まひるは俺の目の前に来た途端になぜか言葉を止めた
「…どこに行ってたんですか」
そしてなぜか急にトーンの低い声で問い掛ける
…怖い
「えっ…?どこって…屋上?」
急に変わる態度に戸惑い 何故か疑問形になる
「…女のニオイがする」
「…はい?」
「先輩の身体から女のニオイがします」
「えっと…」
俺は屋上での出来事を思い出す
とっさに冷や汗が出てきた
…というかニオイって……
普通の人間の嗅覚じゃわからんだろ…
「…私が必死に先輩を探している間 先輩はずっと他の女と屋上にいたんですね…」
さっきとは変わり今度はいかにも泣きだしそうな声色になる
「いや…その…別にそういうわけじゃ…」
必死に状況を説明しようと試みる が
「私は…あの時からずっと先輩のことしか見てないのに…
やっぱり先輩にとって私は特別でも何でもないただの生徒なんですか?
それとも…忘れてるんですかね…」
どこか思い詰めた表情で俺に問い掛けるが 後半はよく聞こえなかった
…とても説得できそうにないな
どうしたらいいのか考えていると…しばらくの沈黙の後まひるがふと口を開く
「とりあえず学食に行きませんかー?」
それはいつもの声色に戻っていた
「そ そうだな…」
まぁ俺も行くつもりだったし
「もちろん先輩の奢りですからね?」
「まぁ…別にいいけど…」
なんか悪いことをしたような感じだし 奢りくらい痛くはないか…
「ふたりっきりになる機会なんてなかなかないですからねー
このチャンスで一気に先輩を落としますからっ!!」
表情や言動はいつものまひるそのものだったけど…さっき見せた淋しげな表情が俺の頭からしばらく離れなかった