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星の丘学園戦記  作者: 東雲 暁星
学園祭準備編
32/91

学園祭準備編 ― 星の夢



…よし もう一度状況確認をしてみようか



頼まれて屋上の様子を見に来た



しかし誰も居なかった



そのかわり謎の建造物を発見



建造物の中には望遠鏡やらよくわからない物やらがいっぱい



そして俺の足元でバスローブ姿の女の子が仰向けで倒れていた



そして女の子が覚醒





確認終了





現状 修羅場度MAX!!





「おにーさん誰?」



ぼんやりとした表情の女の子は再び同じ問いを俺にした



「えっ…と

と 通りすがりの旅商人でして…」



とっさに出たバレバレな言い訳を言いながらもみてをしてみた



自分の予期せぬ出来事への対応能力の低さに我ながら涙が出るよ…





「どこかで会ったことがあると思ったら おにーさん旅商人なのかぁ

たいへんだねぇ?」





…そしてまさかそのままボケられるとは思っても見なかった



「悪ぃ 冗談だ」



「そーかぁ 冗談なのかぁ

るーは綺麗な絨毯が欲しいなぁ」



そして満面の笑みで盛大にボケる



「いや だから 旅商人じゃないよ…」



この子は話を聞いていないのだろうか…?



「えっ 絨毯ないのぉ?

あっ でも絨毯なんて置く場所ないやぁ

あははっ」



聞いていないのか

理解出来てないのか

ただのバカなのか


とりあえず会話は成り立ってないようだ



「そういえば るーって君の名前?」



「そうだよぉ

るーはるーなのっ」



よく見ると女の子の瞳はルビーのような輝きを持ち 髪はアッシュブロンド…と言うのかな?

とにかく生粋の日本人ではないようだ



まぁいまでは珍しくない



日本がアメリカなどの環太平洋の国々との共同国家になってからもうずいぶんと年月が経っている



国際結婚という言葉も既に死語に等しいほど使われない



いまでは国際結婚が当然

といった世界だからだ





とは言えその瞳と髪は特徴的だった





きっとるーという名前もルーシーとかルイスとかそういう感じの名前なんだろうな





「…で 君はここでなにをしてるの?」



…バスローブ姿で



「えっとねぇ 寝てたよぉ?」



寝てたのかい!!



てっきり気絶とかなんかだと思ってたよ



なんか心配して損した気分…



「…で なんでバスローブ姿なの?」



至極当然の問い掛けをしてみる



「るーがバスローブ姿?

…あ ほんとだぁ えへへ?」



どうやらバスローブ姿だということを忘れていたらしい



まったく意味がわからん



そして警戒心がまったくない



「それでさぁ

結局おにーさん誰だっけぇ?」



顎に手をあて考える仕種をする



…なぜか振り出しに戻ってしまった



「…俺は附属生徒会長の長谷川って言うんだけど」



もうめんどくさいから素直に話した



「せーとかいちょぉ?

生徒会長!!

だからどっかで見たことあると思ったのかぁ?」



語尾が疑問形なのはなぜ?



そして勝手に納得しているし…



…感覚がよくわからんよ



「…やっと見付けた」



「ん?いまなんて?」



しかし彼女は俺の言葉をまったく気にする様子もなく



「生徒会長って大変だよねぇ?」



と尋ねてきた



「まぁ…そうだけどさ」



「じゃあるーがお手伝いするよぉ!!

何かあったら頼ってねっ」



「あ…あぁ」


話が急展開過ぎてついていけない…



なんなんだこの子は…?



「あっ!!」



「どうかしたか?」



「お腹すいたぁ!!」



…さいですか



そうだね 俺も君のせいで盛大に空腹だよ…



「おにーさんもお腹すいたのぉ?」



俺の表情を読み取ったのか 彼女が尋ねる



「まぁ…夕飯食べてないし」



学食に行こうとしてたところを捕まったからね



「じゃあねぇ…るーがご飯作ってあげるよぉ」



「…え?」



「だからおにーさんは

そこに座って待っててねぇ?」



そう言って部屋の奥に消える





だがしかしBut無視してとりあえずついていく






「わぁ びっくりしたよぉ

待っててって言ったのにぃ」



振り返ったるー子(勝手に命名)が驚く




「や まぁ気にするな

というか 料理ってここで?」



いったいこの部屋はなんなんだ…?



「そうだよぉ?

いつもるーはここでご飯作ってるのぉ」



いつも…ここで?



「…そもそも この部屋って何なの?」



ストレートに聞いてみた



「この部屋?

るーの部屋だよぉ?」



「るー子の部屋?」



少女はさらっと言った



「るーはこの部屋で生活してるのぉ」



少女は作業を続けながら言った



「るーはねぇ…星が好きなのぉ」



「星…?」



「そうだよっ

だから屋上に住んでるのぉ」



「あの望遠鏡とかもそのために?」



「そーだよ

綺麗に見えるんだぁ…

まぁ学園の備品だけどねぇ」



「へぇ…

屋上に誰か住んでるなんて知らなかったな」



「立入禁止だしねぇ」



台所からいいにおいがしてきた



「…あれぇ?

そういえばおにーさんどうやって鍵開けたのぉ?」



いまさら気付いたらしい



「俺生徒会長だからさ 鍵なら全部開けれるよ」



「ほぇ~

やっぱりおにーさんはすごいねぇ」





そうこうしているうちに料理が出来たらしい



「はい おにーさん」



俺の目の前に置かれたのはフレンチトースト



「紅茶も淹れますねぇ」



そして目の前に湯気を立てるマグカップを置かれる



…夏真っ盛りだよな



「いただきまぁすぅ」



そんな俺をよそに少女は紅茶を一口口に含んだ



仕方ないから俺も紅茶を口に含む



「………!?」



その瞬間俺は…戦慄した



「う…うまい…」



「ほんとぉ?」



「あぁ…本当だ」





学食の紅茶は美味しいと評判だ



実際俺も美味しいと思うし よく飲む



だが…彼女の淹れた紅茶は別格だった





…ものすごく熱かったが





続いてフレンチトーストを一口



「………!?」



こ…これは…



「…うまい」



やっとのことで俺の口から出た感想は小学生レベルのものだったが…他に表現できる言葉が見つからない



それくらい美味しかった





紅茶といいフレンチトーストといい料理の腕前は確かみたいだ



簡単な料理こそ 差がでるものだ





…ものすごく熱かったがな





「嬉しいなぁ…初めて褒めてもらえたよぉ」



「えっ…そうなの?」



ものすごく意外だ



「こっちに来てから初めて誰かとご飯食べたからねっ」



「あっ…そうか…」



そう言った彼女はどこか淋しげだった



こっちに来てからは…かぁ…






「ごちそうさま 美味しかったよ」



「ありがとぉねっ 一緒に食べてくれて」



まぁ成り行きだったけどな



「明日は何がいいかなぁ?」



「…明日?」



「そうだよぉ 明日の夜ご飯

あっ…朝も一緒に食べるぅ?」



いったいどこからそんな話が?



まぁ美味しいんだけどね



「俺明日も来るの?」



「えっ 来ないのぉ!?」



どうやら来る前提だったようだ



「………」



でも 淋しそうだったよな…





「…毎日は無理だけど時々なら顔出すよ…?」



その瞬間 笑顔が弾けた



「本当にっ?

じゃあ毎日用意して待ってるよぉ」



いや だから…毎日は無理だって…










「星…綺麗だな」



「綺麗だよねっ」





なぜかそのあと俺たちは屋上で星空を眺めていた





「嬉しいなぁ…

おにーさんと一緒に星空が見れて」





きっとずっとひとり淋しい思いをしていたのだろう



そう思うともう少しだけでも一緒に居てあげたいと思った





「星はねっ 夢なんだよぉ?」



「夢…?」



「そうだよっ 星の数だけ人がいて

その数だけ夢があるのっ」



確かにきっと星は見えないだけで何億とあるだろう



…いや それ以上にもっとか



「だからるーは星を見るの…

あの人の夢が叶いますようにってねっ」



るー子が遠くを見る



「だけどねぇ…夢は叶わないかもしれないんだよねっ…

それに醒めない夢はないんだぁ…」



おそらく寝てるときに見る夢と想い描く夢の両方を言ってるのだろう





「おにーさんもいつかは目醒めちゃうんだよねっ…

でも…まだ大丈夫だよっ」



「………?」



るー子が独り言のように言う



「今日はありがとーね

また…来てくれるよねっ?」



ふと少女が俺に寄り掛かって尋ねる



「…あぁ 来るよ」


根拠はないけど…それでもきっと俺はまたここに来るような気がした



「絶対だよぉ?」



そういって俺から離れ 手を振った



それに応え 俺も手を振る







…バスローブ姿の少女に




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