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星の丘学園戦記  作者: 東雲 暁星
学園祭準備編
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学園祭準備編 ― いつもの風景


「えっと…

はい 長谷川君」



「…へ?」



我ながら実に間抜けな声が出た



目を開けると

そこには見慣れた風景が



教室だった



あれ…?

さっきまで確か屋上に居たような―…



顔を上げると

教壇の上から俺を見つめていたクラスの委員長と目が合った



そうか!

わかったぞ!!



「委員長…

俺のこと好きだったのか」



わざと感情を込め

あたかもドラマや映画で俳優がセリフを云うような感じで云ってみた



「えっ…?

え ええっ!?」



一瞬の静寂



そして次の瞬間には

教室が笑いで包まれた



うーん


本当に期待通りの反応をしてくれるとは


さすが委員長


その潤んだ瞳が可愛らしい



「あぅー…」


委員長は顔を真っ赤に染め俯いている



ちょっとやり過ぎたかな?



そう思った瞬間

何か殺気のようなものを感じた



やばっ

そういえば…



刹那



「長谷川?

なにをふざけたこといってるの?」



トーンの低い冷静な声


あからさまに殺意が篭ってる



その声を聞いて

俺は一気に目が醒めた



あ そういえば

あれは夢だったのか…



そんなことを考えていると



「長谷川?

ちゃんと聞いてるのかしら?」



再び心臓を握り潰すような声



いつのまにか

教室から笑い声はおろか

すべての音が消えていた



副委員長だ



気の弱い委員長に代わって

実質クラスを仕切っている



その人の皮を被った鬼は

教室のドアにもたれ掛かっている



う-ん

女子とはいえ威圧感たっぷりだな



そんなことを思いながら

クラスの裏のボスを見ていると



「何かいいたげね

なにかしら?長谷川」



心を読まれた!?



「いえっ

何でもありませんっ」



そして見事に裏返る俺の声



再び教室に笑いが



教壇の委員長の顔は

まだ真っ赤なままだった





「また居眠りか?」


隣から声

俺の悪友の武田

通称"タケ"だ


「うるせ

寝る子は育つ だ」



「はいはい

でもいまは寝ない方がよくね?

副長御立腹だから

寝てたら一生成長できない体にされっぞ?」



笑いながら

あたかも他人事のように云ってくる


や まぁ他人事だけど



…ってか

副長って一体どこのヤクザだよ


心の中でツッコミを入れておく


そんなことを口にした次の日には

きっと俺のちんまりとした葬式が行われるだろうからね



それはさておき

タケの云うことにも一理ある


いま寝たら一生起きれない気がする



ドアの近くから

いまだに殺気を感じるのは

何かの気のせいだと自分に言い聞かせる



さっき目が醒めたとはいっても

正直疲れですぐに眠くなる


さすがに二度目は俺の命が危ない



「そうだなー

目薬ないか?

目が冴えるような目薬」



「目薬はないが

塩酸ならあるぞ?

それとも硫酸がお好みだったかな?」



今度は背後から声


これまた悪友の渋谷

通称"バカ"

こいつはバカで十分だ


いや むしろ

バカに失礼なくらいだ


成績はなぜか優秀だが

言動がすっ飛んでる



この前なんか

副委員長を眠らせるとか云って

麻酔銃を懐から取り出したくらいだ


とりあえず

とにかくすっ飛んでる



「目が冴え過ぎて何も見えんくなるわ

んなもんいるか」



バカは相手にしない主義だ


それでもこいつは

なにかと俺を巻き込むけど



「それは残念だ」


全然残念そうにない様子で言う



「じゃ セロテープ

まぶた貼り上げるから」


冗談で言っててみる



「ガムテープじゃダメか?」


流石バカ



「そんなことしたら

長谷川の眉毛と睫毛が全部抜けっぞ?」


タケのツッコミもどこかネタだ



「両面テープもあるが?」



「別に二重でパッチリ可愛くなりたいわけじゃないんだからさ…

ってかなんでそんなん持ってんだよ」



妥当なツッコミを入れておく



「普通の人間はもしもに備え

両面テープを持ち歩くものだぞ?」



残念ながら

そんな普通は存在しない



そもそも

もしもの備えに両面テープって

どんなもしもだよ


心の中でツッコミをいれる


と云うか

いつからお前は普通の人間になったんだ?



まぁそれは言わないでおく





…というか俺たち

なにか忘れてないか?



ふと前を見ると

委員長が涙目で俺を見つめていた



…ヤバい

可愛いんだけど…



見惚れていると

再び殺気がドアから



それを俺は左へ受け流す



「ぐはっ!!」


受け流した先のタケに450のダメージ!!



「…ってなんで!?」


タケのナイスツッコミ


副委員長に0のダメージ



タケは敗北した…



「タケは使えんなぁ…」

俺が呟く



「お おかしいだろー…」


タケが泣きながら机に突っ伏す





…あ

また委員長放置してた



委員長の瞳は

いつ涙が溢れてもおかしくないほど潤っていた



一応謝るか



「あの いいんちー…」



キーン コーン



あ チャイム


馬鹿やってる間に

もうこんな時間になってるし



「じ じゃあ…

また…明日に ぐすっ」



罪悪感だけが残った





…でもやっぱ

委員長には涙目が似合うな


とか思ってみたりして


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