学園祭準備編 ― やんやんでれでれ?
「もう少しでバレそうだったね」
「ほんとですよ先輩ー
私たちの名演技のおかげですよ?
感謝してくださいっ!!」
名演技じゃなくて見事な"迷"演技だったよ…
「はぁ…
あんな演技で騙せるのはユキとタケくらいだよ」
「あーっ 先輩
なんでそういうこと言うんですかー?
せっかく私たちのおかげでごまかせたのに」
「大根役者が何を言うか!!
むしろバレるところだったよ
というか普通の人間ならバレてるよ!!」
「もー いいじゃない
結局バレなかったんだからさ」
サヨもどこか得意げだった
「はいはい…」
そういって俺は紅茶を口に含んだ
今日はマイナーなキャラメルティーだ
好き嫌いが分かれるこれはあまり人気商品ではないらしい
「って先輩 また紅茶ですかー?
カフェイン摂りすぎですよ
夜眠れなくなっちゃいます」
「しかもまたパンだし…
ハセ君バランス悪いよ?」
サヨが俺の手元を見て言う
「いーんだよ おいしいんだからさ」
実際にここのパンはおいしい
それに学食のお姉さんと結構親しいから予約すれば好きな時間に好きなパンを焼いてくれる
俺の特権だ
「それにハセ君はやけに学食のお姉さんと親しげだよね?」
「ん? あぁ そうだけど?」
ちょうどサヨがその話題を出した
しかしこれがどうやら禁止ワードだったみたいだ…
「ちょっと先輩!!
誰ですかその"学食のお姉さん"って!!
先輩とどういう関係なんですか!!」
なぜかまひるが叫ぶ
学食の生徒が一斉にこっちを見る
あれ…?
なんか似たようなことが今朝にもあった気がするんだけど…
「まひるちゃん落ち着いて!?」
サヨが落ち着かせようとする
「これが落ち着いていられますか!?
どの女ですか!!
私の先輩に手出ししようなんて考えてる女は!!」
「ちょ 急に何を言い出すのさ!?」
さすがの俺もこれには焦る
というか視線が痛い…
「えっ そうだったの!?」
サヨが驚きの声を上げる
というか勝手に納得しないで下さい
あぁ…周りの視線が痛い…
「先輩!!どっちなんですか!?
私とその女 どっちが1番なんですか!?
私ですよね?もちろん私ですよね!?
私だと言ってください!!」
普段からは想像できないくらい興奮状態(?)のまひるは机をバンバン叩いている
…お願いだから落ち着こうか?
「学食のお姉さんは まぁ…ちょっと親しいだけだし…」
「ちょっとですか?
ほんとにちょっとですか?」
「や えっと…結構…かな?」
気圧されて正直に答えてしまう俺
「どっちなんですか!!
はっきりしてくださいよ!!」
これは…ちょっと大変なことになったかもな…
サヨの何気ないひとことから始まったからか サヨはいかにも申し訳なさそうな表情をしている
参ったな…
紅茶を飲みながら頭をかいていると助け船は意外なところからやって来た
遠くで爆発音が響いた後にイヤホンから響く生徒会役員の声
『代行!!附属生徒会室付近で爆発が発生した模様
至急応援をお願いします!!』
「…マジかよ!!仕方ない 行くぞ!!」
しかしこの状況から脱出できるため
内心ありがたく思った
「あっ まだ返事聞いてないですよ!!」
「ほら 仕事仕事」
「あっ…先輩…」
思わず駄々をこねるまひるの手を取り席を立つ
まひるの顔が真っ赤になっている
「サヨも行くぞ」
「…私の手は握ってくれないんだね」
「ん? 何か言ったか?」
イヤホンから聞こえる他の役員の声のせいでよく聞こえなかった
「…なんでもないよーだ」
サヨは少し拗ねたように言った
「ほら先輩早く行きましょうよ!!」
いつの間にか上機嫌になっているまひるに手を引っ張られる
「あ あぁ…」
まひるが俺の手を握ったまま学食を駆ける
なんだかさっきと立場が逆転したみたいだ
「次は絶対にはっきりと私が1番だって言ってもらいますからね?」
まひるはどこか楽しそうにそう言った
…俺に選択権はないのか?
まぁどうせ俺は曖昧にごまかすんだろうけどな…
そう思いながら胸元で揺れる金色を握った
『結局爆発騒動の原因は花火
だがしかし
花火部の証言によると昨夜から今朝にかけて部室から花火が盗まれ その花火の一部が今回使われたとのこと
また今回使われなかったが盗まれた花火の中には結構特殊なものもあるとのこと
きたる学園祭に向け一層の警戒が必要になりそうだ
一連の騒動の犯人は暴徒部であると推測される
明日からはその裏付けも行うことになりそうだ
(本多の手記より抜粋)』
なんか気付いたらまひるがヤンデレ風味になってきてるような…
そんな予定じゃなかったんだけどね笑
まぁこれもアリかな?←