学園祭準備編 ― バカとタケとガーリック
「お前はまた紅茶か
日本男児ならば日本茶を飲まんか!!」
「うるさいな…
パンには紅茶だろうが」
なんで俺は朝っぱらからバカに文句を言われなければいけないんだ…?
「そうだぞ長谷川ー
パンだけじゃ栄養が…」
「なんだ タケも居たのか」
「いや 気付けよ!!
ってか俺の扱い酷くね!?酷くね長谷川ちゃーん!!」
「まぁ…タケだしな」
「同感だ 所詮武田だからな」
「お前ら…友達を大事にしようぜ…」
へこむタケを横目に俺は朝食のガーリックトーストを頬張る
「そういえばだが…前もそれを食べていたよな?」
それを見た渋谷がなんの脈絡もなく切り出す
「ん…?んっ
前っていつだ?」
とりあえず飲み込んでから聞き返す
「2週間ほど前の夜だな」
「2週間ほど前って言われてもなぁ…
わりと頻繁にガーリックトースト食ってるし」
「お前の主成分はガーリックトーストかよ…」
「見誤るなよタケ 主成分は紅茶だ!!」
「威張って言うなよ…」
「まぁ話を戻そうか
委員長と一緒に学食で食べていただろう?」
「…あー…あぁ
そんなこともあったっけか?
…ってかなんで知ってんだよ!!」
しかし渋谷は意味深な笑みを浮かべるだけだ
するとへこんでいたはずのタケが勢いよく起き上がった
「おい長谷川!!
お前委員長と一緒にメシ食ったのか!?」
そしてなぜか胸倉を捕まれる俺
…why?
「あ あぁ…そうだけど…?」
「くーっ!!
なんで俺を誘わなかったんだよ!!」
今度は肩をがっしり掴まれ身体を揺らされる
なんでといわれてもなぁ…
別に俺が誘ったわけじゃないし
「それだけではないぞ 武田!!
そのあと長谷川は委員長の部屋に入っているのだ!!」
なっ…バラすなよ!!
「な なんですとー!!」
今度はタケが頭を抱えながら自分の身体をくねらせている
…気持ち悪ぅ
というか渋谷はなんで知ってるんだ…?
「とりあえず落ち着けよ…」
「落ち着いていられるか!?
抜け駆けしやがって畜生!!
いつからだ!?いつからお前と委員長はデキていたんだ!!」
両手で机をバシバシ叩きながら叫ばないで下さい…
紅茶がグラスの中で波打ってるよ…
あ こぼれた
というか周りの視線が痛い…
ってかデキてるって…
話が飛躍しすぎだろ…
渋谷はこっちを見ながらニヤけてるしよ…
「そんなんじゃねぇよ…
ちょっと用事があっただけだから」
「くそっ…あの委員長がよもや長谷川の手に堕ちるとは…
いったいどんな手段を使ったんだ!!」
聞いちゃいねぇよ…
「ゴリ押しか!?言葉巧みにうまく誘い込んだのか!?それともその指先で…」
「いい加減黙れ」
「ぐあっ…」
脳天に拳をくれてやった
タケはそのまま机に突っ伏した
「お前もいい加減にしてくれよ…」
「なに ほんの冗談じゃないか」
お前が冗談のつもりでも
タケみたいな奴が本気だと信じ込むからやめてくれ…
「…だがこれだけは言っておこう」
「ん なんだ?」
「お前にその気がなくとも向こうはお前をどう思っているのか考えたことはあるか?」
「…どういうことだ?」
「…やれやれ
これだから鈍感呼ばわりされるんだ
考えてみろ お前の周りにいったい美少女が何人いると思っているんだ?」
「はぁ…美少女ねぇ…」
「…まぁいい
だが 中途半端はいかんぞ
誰も幸せにならん」
「あ あぁ…」
珍しく渋谷が真面目だ…!!
変なきのこでも食べたのか…?
「それともうひとつ」
「な なんだよ?」
「背後には気をつけろよ」
「はぁ…?」
「いつ刺されるかわからんからな」
刺されるって…!!
俺何か悪いことしたか!?
「…鈍感とは時に罪作りだな」
悪いがまったくわからん…
「まぁよい 用は済んだからな
ほら起きろ武田」
渋谷が揺するがタケは起きない
すると渋谷はタケの耳元で何かを囁き…
…一瞬でタケは起きた!!
「え ちょ…おい!!」
「はっは!!長谷川!!
ぜってぇ負けねぇからな!!
委員長は俺のもんだ!!」
「…まぁ委員長はお前に微塵も興味を抱いてないがな」
「がーん」
そして再び戦闘不能になるタケ
…なんなんだ?
「お前…何を言ったんだ?」
「なに 委員長はまだフリーでお前にもチャンスがあると言っただけだ」
「そ そうか…」
そして現実を突き付けられて燃え尽きたと…
あぁ…哀れなタケ
ガーリックトースト1枚恵んでやるよ
机に突っ伏してるタケの右手にそれを握らせた
…完璧だな
「では俺はこの辺で失礼するよ
まだいろいろと仕込みをせねばならんのでな
さらばだ 長谷川よ!!」
そう言い終わるが早いか バカは颯爽と去っていった
あんま派手なことは控えてくれ…
「…というか こいつどうしよう?」
机に突っ伏したままのタケを一瞥
1 放置
2 いたずらを加えて放置
3 叩き起こす
よし 2でいこう!!
さて…どうするか?
あ そうだ!!
カウンターで紙とペンを借りてきた
キュッキュッ
そしてそれを背中に貼り付ける
「…で いっか?」
『そこのお嬢ちゃん 近づくと孕ませるぜぃ?ぐぇっふぇっふぇ』
やばい…完璧だ…
さて…朝食もとったしさっさと見回りに行きますかね
学園祭まであと1週間ちょっとか…
このまま平凡に迎えられるかな…?
…努力次第だよな
「さて…んじゃ行きますか」
俺は紅茶を飲み干し 立ち上がった
このあと 背中に貼紙を貼ったまま校内をふらついていたタケは生徒会副担当教師のうすらハゲに見付かり夜まで説教を受けたとか
ちょっとやり過ぎたかな…
まぁいいか タケだし