学園祭準備編 ― 鰹と昆布
「ハセ君本当に大丈夫なの?」
「そうですよ先輩ー
大丈夫なんですかー?」
総会長の芝居がかった演説が終わってすでに30分が経っていた
俺たちは本多を除いたいつものメンバーと学食で作戦会議という名のお茶会をしていた
というか
俺以外は朝を食べてなかったらしく ブランチといったところだ
この時間帯なら生徒は少ないし 学食が混む時間帯にはもう生徒会会議を始めたかったから俺も夕方まで腹がもつように少し食べてる
「ってかさ アンタなんかに務まるようなことじゃないって理解らなかったの?
完璧挑発だったじゃん
なに見事に挑発に乗ってんのよ」
3人ともさっき本校生徒会室での出来事について色々言ってくる
結局俺は今回の学園祭で指揮を執る
「うるさいぞ ユキ
あんだけ挑発されれば誰だって断れねぇよ
それに俺にだってプライドってもんがなぁ…」
「プライド?
はっ そんなもん池の鯉にでも食わせた方がよっぽど有意義ね
いますぐ池に飛び込んでこれば?」
「そんなもんって言うなよな…」
相変わらずユキはキツイぜ…
「でさぁハセ君
挑戦をうけたってことは
なにか秘策とかあるの?」
正直んなもんねぇよ
だけど精一杯の見栄をはってみる
「当然だろ?
俺を誰だとおぼっ…」
見事 盛大に噛んでしまった…
「せ 先輩ー…」
そんな俺を見て
健気な後輩が不安そうに俺を見つめる
…ちょっとドキドキ
そしてユキからの罵倒は左へ受け流す
「や でもまぁなんとかなるっしょ?」
一瞬の静寂
それを打ち破るサヨのため息
…はい 本当にすみませんでした
いきあたりばったりですみません…
「やっぱりこんなヤツに総会長なんて務まんねぇに決まってるよ」
ユキは相変わらずだ
いゃ まぁいまのは俺が悪いんだけどね
「で でもー…
私はそんな先輩でも好きですから 安心して下さいっ!!」
そして何故か愛の告白を受ける俺
この可愛い後輩はしれっと嬉しいことを言ってくれる
…ってか最近かなり積極的じゃない?
でも俺には…
自分の胸元のそれに目をやる
…今朝決心したところだ
「ハセ君…?どうかしたの?」
急に黙った俺をサヨが心配そうに見つめる
「…ふん どうせろくでもないことを考えてたんだろ」
ユキには鼻で笑われ 変な言い掛かりまで付け加えられる
もちろんろくでもないことなんて考えてない
確かに叶う望みがとてつもなく薄い夢でしかないのかもしれないけど…
俺は無意識に胸元の金色を握っていた が―
「…って あー!!
先輩ー もうこんな時間ですよ!!
早く食べないと遅れますぅー!!」
時計を見ると
会議開始15分前
俺の前には伸びかけのきつねうどん
ほとんど食べてない…
「もーハセ君がなんかぼーっとしてるから」
「─って俺のせい!?」
「当たり前だ 早くしろマヌケ」
確かにぼーっとしていたが
ユキにそこまで言われる筋合いはない
「マヌケだと!?
…ってかお前も食ってねぇじゃん!!」
「パンは持ち運びできるだろ バーカ!
バーカ バーカ 単細胞!!
単細胞長谷川!!」
…お前は小学生かっ!!
や もういい
こいつは無視だ
早く食べないと…
「バーカ アホ マヌケー
早くしないとうどんがメタボになるぞ」
正直うっとうしい…
…ってかうどんがメタボってなんだよ!!
「あははっ ざまあみやがれってんだ
こんなんだから学園三大美―いっ!?」
…お前が何を言おうとしたのかはよくわかった
だがな 勘違いするなよ
まだ終わっちゃいないんだ
約束したんだ…夢の続きを一緒に見るって
だからユキが言い終わるまえに左手が動いた
それは半ば怒りに近い感情だ
(サヨ プランY-6)
すかさずサヨが胸ポケットの中のスイッチを押す
その時間
わずか0.4秒
俺とサヨの連携は相変わらずなかなかだ
そんなこんなで
ユキの体にいつも以上に強い電流が流れた
まぁ自業自得だろ
…こんな強い電流下手すりゃ死んでるぜ
まぁユキだから最悪明日には起きるだろう
「さて 行くか」
俺は食べかけのきつねうどんのきつねを机に突っ伏してるユキの頭に乗せた
「そ…そうですねー先輩」
さすがのまひるも少しビビってるみたいだ
…まぁ 当たり前か
その後例の学食のお姉さんに聞いた話だが―
ユキは結局深夜2時に目が覚めたらしい
おまけに
乾ききったきつねの髪飾りのせいで髪にダシの匂いが染み付いていたとか
ふっ ざまぁみやがれ!!