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7 透過

「どうやら本当にレジェンド級武具のようね」


 マリ母が腰掛けているソファというらしい椅子の機能性ときたらどうだ。大人が横に寝そべれるほどの大きさでありながら、椅子としても快適に機能する。いや、椅子だけではない。大小様々な食器にそれを収納する棚の作りの見事さ。着ている物もそうだが、俺様が魔神やってた頃に比べて基本的な文明レベルが上がっているのは間違いなさそうだ。やはり相応の時間が経過しているのだろう。


「私、凄い?」

「勿論ですよ。ね? マリーナ様」

「そうね。確かに凄いわ。凄いけど……その剣は預かるわ」


 おっと? 文明レベルの向上に驚いている場合ではなかった。これはよろしくない流れだ。


「……やっ」


 小さな手が俺様をギュッと抱きしめる。


「マリーナ様、この剣はすでにマリ様を持ち主と決めています。無理にマリ様から引き離す必要はないのではないでしょうか」


 メイドからも援護が入った。しかしマリ母の首は横に振るわれる。


「ただでさえソードアート家には大きな期待が寄せられているわ。そんな中、私の娘がレジェンド級武具の持ち主になったと知られたら……。ロロナのサポートにも限界があるでしょう。せめて私が万全の状態だったらまた違ったのだけれども」


 ふむ。やはりこの街の守護者はマリ母で間違いなさそうだな。ほとんどの個体が貧弱な割には量があり栄養価も高い。そんな人間を好んで捕食する魔物は多い。なので人間が生きていくためには定住せずにあちらこちらに生活拠点を作り、そこを年単位で回っていくスタイルが主流だ。偶に人の数が増えすぎたり、他の部族と合流するなどして、自然と街が形成されることもあるが、大抵の場合は竜の人狩りにあって滅ぼされる。なので人間側によほど強い個体が多数いるか、あるいは魔人と呼ばれる超越種がいるかなどの例外を除いて、街のような大きな共同体は成立しないのだ。


「私、戦えるもん」


 マリを困った顔で見下ろすマリ母。どれ、ちょっと診てみるか。……なるほど。心臓の辺りを瘴気に汚染されておるな。それもかなり強力なものだ。恐らくは四枚羽クラスの毒竜にでもやられたのだろう。常人ならいつ死んでもおかしくない状態だが、自らのマナで耐えず浄化することで、何とか生存している。並の術者にできる芸当ではない。見た目は20代と若々しいが、これだけの街の発展に尽力したのなら、その倍は生きていても不思議はない。


「マリ、お母さんの言うことが聞けないの?」

「戦えるもん!」

「ならば私を倒して見なさい。それができないならーー」

「えい!」


 グサッ! と俺様はマリ母の胸を貫いた。……って、えっ!?


「えええええええ!? な、ななななにしてるんですか、マリ様ぁあああ!?」

「マリ様、ご乱心! マリ様、ご乱心ンンンン!!」


 魔神である俺様が驚くだけのことはあって、メイドを始めとしたその場の全員が大パニックだ。ちなみに刺された当人はーー


「……ふっ。強くなったわね、マリ」


 なんかいい感じに終わろうとしてる!? 諦めるではないマリ母。というかマリもマリだ。俺様を使って親殺しとは何という業の深いことをしてくれて……ん? いや、待て。何かおかしい。これは……透過!? うむ。間違いない。刀身はマリ母を貫かずにその体を透過していた。

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