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10 少年

「見たか、我が剣の冴えを」


 歌って踊っての乱痴気騒ぎの中、そんな声が聞こえてきた。そしてどうやらそれはマリの興味を引いたようだ。人混みを器用にすり抜けて移動するマリ。するとなにやら人が輪を作っていた。その中心には数人の少年少女。声の主はその中の一人、木刀を持った少年だった。


 少年は得意げな顔で自分の前に倒れ伏す同年代の子供達と、そして周囲の大人達を見回した。


「どうした? 他に挑戦者はいないのか? 今宵のダークソードは血に飢えているぞ」


 ダークソード? あの木刀のことか。しかしいやに芝居かかった言い方だ。この街独自の儀式の最中……というわけではなさそうだが。


「何してるの?」


 マリが近くの老人に問いかける。


「おお、マリさま。何、若いもんが力自慢しておるだけですじゃ。こういう祭りの時はよくあることですな」

「力自慢、楽しいの?」

「さて、それは人によりますな。少なくともアルタの奴は楽しんでおるようですぞ」


 木刀を持った少年はアルタというらしい。あの倒れている子供達は、どうやらアルタ少年と勝負をして負けたようだ。周りの大人達は子供達の勝負を酒のツマミに盛り上がっている。


 マリがアルタ少年を指差した。


「あの人知ってる。確か変なことばっかり言う変な人」


 ふ~む。果たしてそれは知ってるうちに入るのだろうか?


「ほっほっほ。アルタの奴は妄想の世界に入るのが好きなようで、よく物語の英雄と自分を重ねておりますじゃ。最近の流行りは自分で考えた技にたいそうな名前をつけることみたいですがね」

「あの人、強いの?」

「さて、マリーナ様のご子息であらせられるマリ様から見たらどうかは分かりませんが、少なくともマリ様を除けば同年代でアルタに勝てる者はおらんでしょうな」


 人類の天敵だらけのこの世界で、これだけ発達した街なら当然身を守るための教育もしっかりしているはずだ。その中でマリを除いて一番なら、あの少年、少なくともこの群れの中ではかなりの者なのだろう。


「ふっ。どうした? もう挑戦者はいないのか? 俺のダークソードはまだ満足してないぜ」

「私がやる」


 そう言ってマリが前に出れば、祭りの喧騒がぴたりとやんだ。そしてーーー


「うぉおおお。マリ様きたぁあああ!!」

「マジか? え? 戦えんの?」

「ばか、マリーナ様の娘だぞ。強いに決まってんだろ」

「聞いた話だと前の仕事で盗賊と狼型を一人で切り捨てたらしいぞ」

「あの年で? ソードアート家があるかぎり、この街は安泰だな」

「アルタ、逃げるなら今のうちだぞ~」

「「「ギャハハハハ!」」」


 有名人の登場にギャラリー達は大はしゃぎだ。一方アルタとか言う少年はーー

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