第66話 日常への回帰
「ガブス侯爵、死刑になったんですか……」
「麻薬密売の共犯と認定されたのでね。あの手紙のおかげだけど。当然ガブス侯爵家も取り潰しになった」
「自業自得ですよね」
「彼ほどの自爆犯は、そう出ないと思うけどね。あんな愚かな男が侯爵だったというだけでこの国の恥だった。これで正常に戻ったとも言える」
数日後、ニホンにお客さんとしてやって来たイワンさんとアンソニーさんが、ガブス侯爵が処刑され、ガブス侯爵家が取り潰された事実を教えてくれた。
ガブス侯爵の罪状があまりに酷かったので、王国貴族の名誉のため、密かに処刑されたそうだけど。
「これで私もお役御免だな」
イワンさん、麻薬調査もしていたと聞いたけど、ガブス侯爵の処刑でひと段落なのかしら?
「というわけで、これからはこのお店に自由に通えることになった。よろしくね」
「はあ……」
いくら無役になったとはいえ、伯爵家の次男がこの店に通っていいのかしら?
「お金については、私はハンター稼業を始めてね」
「いいんですか?」
「ハンターに貴族出身者はいなくもないし、私も金銭面で実家に迷惑をかけられないのでね」
「私もしばらくは無役なので、お忍びでね。イワンと会えるし、ユキコさんもいる」
イケメンさんは、ふとした女性の隙をついてそういうことを言うのが上手よね。
「アイリスのことも気になるしね」
「大丈夫ですよ」
アイリスちゃんなら、もうちゃんと二枚目の看板娘としてお客さんたちに認知されていた。
ちなみに、私はいまだに三枚目の看板娘として認知されていなかった。
ファリスさんの方が先にローブ姿を脱出できて三枚目になってしまいそう……。
いや、もうファリスさんも実質三枚目の看板娘みたいなものだからなぁ。
置いてけぼり感が強いけど、四枚目の看板娘を目指さないと!
「イワンさんも、アンソニーさんも早いな」
「また増えたぁーーー!」
アンソンさん、なにが増えたと言うのかしら?
でも、ミルコさんと一緒だなんて、仲がいいのね。
「今日はちょっと遅れたようだ。女将、いつものを」
「はい」
「女将、今日はテリーもいるから多めに焼いてくれ」
「あら、テリー君は郊外の新しい縄張りはいいの?」
「ええ、ちゃんとやっているってことで、今日は親分の奢りなんですよ。久しぶりだから楽しみだな。ボンタ、ちゃんとやってるか?」
「僕は大丈夫ですよ、テリーさん」
ボンタ君は、もううちのお店の主力だからね。
「ここのエールはよく冷えていて美味いっすね」
「ファリスさんの魔法のおかげよ」
「あの子、ゆったりとしたローブ姿じゃなければ、もっといいのに」
「それはそのうち?」
今日も多くの常連さんで賑わう大衆酒場ニホンの売りは、格安で食べられる、塩、カレー、味噌、醤油味の煮込みと串焼きの数々。
他にもお勧めのメニューもあるし、日によっては驚きの特別メニューが置いてあることも。
本日も従業員一同。
心より、お客様の来店をお待ちしております。




