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野生のJK柏野由紀子は、異世界で酒場を開く  作者: Y.A


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第46話 いざお米への道! 

「もう出て行くのか? もう少しいてもいいんじゃないか? 王都の店はまだなんだろう?」

「お店の再開はまだ大分先だってお手紙がきたけど、私にはやらなければいけないことがあるのよ」

「やらなければいけないこと?」

「そう、カレーをもっと美味しくする食材の探索と確保をね! 実は町で情報を聞いたの」


 スープカレーをパンに浸して食べると美味しいけど、日本人として生まれたからには、トロミをつけたカレーを炊いたご飯の上に載せるカレーライスにしなければならない。

 というか、いい加減にお米が食べたい。

 日本のお米ほどの美味しさは期待していないけど、それならカレーライス、チャーハン、ピラフ、雑炊他。

 調理して美味しく食べればいいのだから。

 王都ではまったく噂を聞かなかったお米だけど、町で香辛料を取り扱っているお店の店主さんが、有力な情報を教えてくれた。

 ここよりさらに南の海に浮かぶ島において、米に似た作物が採れる場所があると。

 ただ、大半がその島の中でしか食べられていないそうで、外部の人間は滅多に口にできないと。

 ならば王都のお店が営業できない今こそ、その島に行ってお米を確保しなければ。

 そんな理由で、私たちは砂浜を去ることになった。

 全然海水浴とかしていないけど、この世界の水着はただの服で、海水に浸かると動きにくい。

 かといって、ここには地球の水着なんてないし、この世界で肌の露出が高い水着を着たら痴女扱いされるそうで、確かにみんな服を着たまま海に入っていたんだよね。

 なにより、もし私、ララちゃん、ファリスさんの三人が海に入ったとしよう。

 海から上がると、濡れた服が体にピッタリとくっつき、その瞬間私の胸が小さいことが……日本では普通だけど、この世界だと私は貧乳扱いなのだ。

 年の割にはかなり胸が大きく、今も確実に成長を続けているララちゃん。

 完全無欠な巨乳ちゃんであるファリスさん。

 私は、最初から負けるとわかっている勝負はしないのです。

 それよりも、今はお米の確保が先よ!

「残念だ……店長、またここに来てくれよな。その頃には、俺もお店を繁盛させているから」

「わかったわ、また機会があれば必ず」

「姉御、世話になりました」

「俺たちも、ヨハンさんのお店で頑張りますから」

 ……どうして私は、年下とはいえ、男性二人に姉御って呼ばれることが多いのかしら?

 同じ年だと判明したヨハンは違うのに……。

「姐さん、ヨハンのお店と、その隣にある屋台だけど、ちゃんと自警団で管理して海水浴客の増加に繋げますので」

 当然そうするわよね。

 無事にブランドンさんのお店は再建された。

 他の料理やデザートを出す屋台もそのまま続行すれば、これまでないのが不思議だった海の家みたいな感じになるのだから。

「お世話になりました」

 ヨハン、インゴ、デルク、ブランドンさん、自警団の人、屋台を手伝ってくれたアルバイトたちに見送られながら、私たちは次の目的地を目指すのであった。


 次の目標は、南の海に浮かぶお米が採れる島よ!




「えっ? あの島には行かない方がいい?」

「ああ。今あの島を統治しているラーフェン子爵家は色々と揉めていてな。家宰派と父親の急死で跡を継いだ若様を支持する家臣たちの間で揉めているのさ。余所者はスパイ扱いされるかもしれないから、やめておいた方が無難だぜ」

「お家騒動かぁ……」


 いまだ大衆居酒屋『ニホン』の再開の目処は立っておらず、ならば漁港で聞いたお米を栽培しているという島を目指した私たち。

 ところが島の近くにある小さな別の漁港に到着したのはいいが、そこで島に近づくのは危険だと漁師のおじさんから忠告されてしまったのだ。

 島を支配する貴族家は現在お家騒動の真っ最中だそうで、余所者が入り込むとどちらかのスパイだと疑われ、下手をすれば酷い目に遭うかもしれないそうだ。

 今、あの島に行くのはやめなさいと。


「人を信じられなくなるなんて、不幸な話ね」

「あの島は隠れた観光スポットでもあったんだが、そのせいで外の人間は誰も近づけなくなってしまったんだ」

「じゃあ、観光で稼いでいた人たちは困るわね」

「それだけじゃねえ。島の人間も、島の外に出られなくなってしまった。外でこの騒動のことを告げ口したり、他の一派の連中と密会してなにか企むかもしれないってな。島の漁師たちも困ってるだろうな。ここに魚を売りに来れなくなってしまったからよ」

「酷い話ね」

「こっちだってとても困ってるんだよ。島の近くの海域はいい漁場なんだが、当然権利はラーフェン子爵家が持っているからな。島の漁師たちが魚を持ち込めないからって、代わりに俺たちが獲るってわけにはいかねえしな」

 どうりで、寂れた漁港だと思ったら……。

 あっ、でも。

 元々小さな漁港だから、島の騒動の件を聞かなかったら、元々こんなものかと思っていたかも。

「王国が知ったら、介入するんじゃないかしら?」

 地図によると、ラーフェン子爵領は辛うじて王国の貴族らしい。

 ここは王国領の南の果てに近いから、王国に属した時期は大分遅いそうだ。

 遠方で王国の目が届きにくい貴族領だからこそ、お家騒動を続けていられるとも言えるのか。

 でもお家騒動を放置したら、王国の貴族統制が緩いと他国に思われ、色々と工作されてしまうかも。

 とはいえ、平民でしかない私たちが心配するようなことではないか。 

 ましてや、それを私たちが解決しようだなんて思うこと自体がおこがましいのだから。

 偉い人たちもそれを望んでいないどころか、平民が余計な口を出すなって言うだろう。

 最悪罰せられてしまうかもしれず、そういう難しいことは偉い人たちに任せるのが一番ね。

「ユキコさん、どうします?」

「そうねぇ……」

 島に渡れない以上、私たちは一日でも早くお家騒動が終わることを祈るしかない。

 なにしろ、あの島には『お米』があるのだから。

「女将さん、この町で待ちますか?」

「他に、女将さんが探している『おこめ』のヒントがない以上、ここで待つしかないと思います」

 ファリスさんの考えが正しいんだろうな。

 あっ、でも彼女のことで一つ気になる問題があったのだ。

「ファリスさん、学校は大丈夫なの?」

 随分と長い期間私たちと一緒なので、出席日数とか大丈夫なのだろうか?

 出席日数不足で、進級や卒業できなかったら申し訳ないし。

「大丈夫ですよ。私、優等生なので」

「優等生なのは知っているけど……」

 平民なのに魔法の才能に秀出ていたからこそ、ファリスさんは貴族出身の同級生たちに虐められていたのだから。

「出席日数は、学校に提出するレポートで代用できるんです。女将さんの魔法って、色々と参考になるんですよね。講義に出席するよりも勉強になりますし、提出したレポートもいい評価を得られているので、暫く学校に行かなくても問題ないですよ。講義内容は、参考書を見れば理解できますから」

 ファリスさんは、記憶力がよくて勉学も得意な優等生なのか……。

 私の学業成績は、本当に普通だったからなぁ……。

 しかも、放課後と休日の大半を狩猟採集生活にあてていたので、校内でも変わり者扱いだった。

 それで虐められてたわけではないけどね。

 友達もいなかったわけではないし。

 愛子と和美と美紀。

 元気にしているかなぁ……。

 私が突然いなくなって心配しているかも。

「ならいいんだ。じゃあ、ここで待つ……」

「おじさん、ここに観光地はありますか?」

「お嬢ちゃん、島に渡れない以上、こんな寂れた漁港に観光スポットがあると思うかい?」

「……思いません」

「だろう?」

 漁師のおじさんの回答を聞き、ララちゃんはガックリと項垂れてしまった。

 そんなに観光がしたかったのかしら?

「ユキコさん、またなにか商売でもしますか?」

「それしかないかもね」

 私も含めたみんな、間違いなく貧乏性なんだと思う。

 寂れた漁港でノンビリなんて性に合わず、砂浜の時と同じく、またなにか食べ物を売って時間を潰し、お金を稼ごうとしてしまうのだから。

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