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野生のJK柏野由紀子は、異世界で酒場を開く  作者: Y.A


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第43話 依頼

「お店のことは申し訳ない! うちのバカ孫がとんでもないルール違反をしたのも確かだ! こんなこと頼める義理がないとわかってはいるんだが、俺の依頼を引き受けてはくれないか?」

「私がですか?」

「ユキコさん、あなたにしか頼めないことなのだ」




 お店に戻って今日も沢山のお客さんを捌いていたら、そこに杖をついたブランドンさんが姿を見せ、私に頭を下げた。

 お店の賃貸契約違反のことをヨハンの代わりに謝り、さらに私にあのお店の梃入れ、コンサルティングのようなことを依頼してきたのだ。

「当然、無料ではない!」

 と言うと、ブランドンさんはかなり大きな革袋を差し出す。

 そこにはかなりの数の金貨が入つていた。

「ブランドンさん、これは?」

「今の俺の全財産だ。老後の資金だな」

「じゃあ、もし失敗したら……」

「足は悪いが、どこかの店で動けなくなるまで下働きくらいはできるだろう。砂浜での商売に可能性を感じたお店も多いから、最悪店を売ればいい」

 全財産を報酬として差し出し、それであのヨハンの教育とお店の梃入れをする。

 もし失敗したら、ブランドンさんは老後の資金をすべて失い、最悪あのお店を手放さなければならない。

 あのヨハンにそこまでする価値があるのか、私には判断がつかなかった。

 でも一つだけわかるのは、ブランドンさんがとても真剣だということであった。

「ブランドンさん、やめた方がよくないかな?」

 お店でアルバイトをしている、町の飲食店経営者一族の若い男性が、顔見知りであるブランドンさんに親切心から忠告をした。

 あれだけやらかしたヨハンにそんな大金を使うだけ無駄で、そのお金はちゃんと老後の資金として蓄えておいた方がいいと。

 聞けばブランドンさんは、十年ほど前に亡くなった奥さんと共に、あのお店を五十年近くやってきたそうだ。

 そんなブランドンさんに対し、町の飲食店経営者たちは敬意を払っていた。

 だからこそ、彼の名を汚すヨハンに対し批判的で、彼に大金を使うなど愚の骨頂だと思っているのであろう。

「私もやめた方がいいと思います」

「私も、あの人がちゃんとお店を経営できるか疑問です」

「僕も難しいかなと……」

 ララちゃんも、ファリスさんも、ボンタ君も、ヨハンに大金を使うのは無駄でしかないと思っていた。

 私もそう思うのだけど……。

「ブランドンさんは、あのヨハンに可能性を見ているのですか?」

 そうでなければブランドンさんも諦めるはずなんだけど……でも、彼も普通のお祖父さんで、孫に甘いのかもしれない。

「確かにヨハンはバカだ。俺の孫たちの中で一番のバカだ。でも他の孫たちは、たとえ一度でも俺と亡くなった妻ローザとの思い出が詰まったお店を継ぐとは言わなかった。欲から出たのかもしれないが、あいつだけなんだ。俺とローザの思い出が詰まった店を残したいと言ってくれたのは……」

 他のお孫さんたちはヨハンよりも頭が回るからこそ、面倒で儲からなそうなお店を継ぐとは言わなかった。

 彼は、辞めてしまったが飲食店で働いていて、それなりに調理はできた。

 基礎があるといえばあるし、お店を継ぐ気があったから他で修行していたのかもしれない。

 彼の才能は未知数ね。 

「それに、あの二人だ」

「ええと、インゴとデルクでしたか?」

「あいつらも、ヨハンと同じくバカで半端者だ。ヨハンを慕っていていつも一緒だな」

 慕って……そういえば、ヨハンがもう資金がショートして日当が出せないと言っても、あの二人は決して店をやめなかった。

 給料が出なければ生活できないのに、彼らはヨハンを見捨てない。

 普通ならあり得ないことだ。

「あんなバカでも、慕ってついてきてくれる奴らがいる。俺はまだヨハンに可能性があると信じたい」

 うーーーん。

 そう言われると、確かにそうかもしれない。

 普通なら、インゴとデルクは逃げ出しているはずなのだから。

「でもヨハンはやらかしていますから。特に自警団を敵に回しています。少なくとも、この地元で飲食店の経営は難しいのでは?」

 せっかく私たちが臨時店舗で稼いでショバ代を納めていたのに、それがヨハンの横やりでなくなったのだ。

 自警団はヨハンを恨んでいるはずだ。

 他の飲食店関係者たちにも呆れられている。

 もし上手くお店を経営できるようになっても、地元で店を開くのは難しいはずだ。

「それなら、昨日話をつけてきた」

「どうも姐さん。今日も大繁盛だな」

 まるでタイミングでも見計らっていたかのように、顔見知りの自警団の人が姿を見せた。

 ……どうやら、もう私はずっと『姐さん』扱いのようだ……。

 まだ私は十八歳なのに……。

「姐さん、今日は体調でも悪いのか?」

「そんなことはないけど」

「ならいいんだ。ブランドンさんがヨハンの代わりに詫びを入れてな。同時に最後のチャンスを頼み込んできた」

「最後のチャンス?」

「そう、あのお店を姐さんが指揮して立て直し、ヨハンが上手く経営できたら、自警団も町の飲食店のみんなも水に流す。できなければヨハンには町を出て行ってもらう」

 これまた、随分と厳しい条件を出したわね。

 ブランドンさんは、ヨハンがやり遂げると信じているのであろう。

「というわけで自警団としては、姐さんがブランドンさんの依頼を受けることに対し、特に反対意見はないんだわ」

「……はあ……わかりました。引き受けますが、私は厳しくやりますよ。特にあのヨハンは」

 ララちゃん、ボンタ君、ファリスさんは、別にスパルタにしなくてもちゃんとやってくれるからそんなことはしないけど、ヨハンとあの二人は、最初厳しくしないと駄目だろう。

 もしかすると、それで逃げ出してしまうかも。

「そうなったらそれまでのこと。報酬の返還は無用。俺の愚かなミスということで終わる」

「わかりました。では厳しくやらせていただきます!」

 となると、今離れた場所でやっているこの臨時店舗も隣に移すかな。

 両方見ないといけないし、どうせ厳しくやるのなら、お店で扱き使いながらやればいいのだから。

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