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5-1 ジャムザウール 「色恋沙汰」

いいかげんせい!と怒られそうですが、また視点変えます。

でも、こっちのほうが面白うなもんで。サーセン、お付き合いください。

主人公は、またまたトカゲの戦士ジャムさんです。

ほか今話登場人物(呼び名)

有馬和樹(キング)

飯塚清士郎(プリンス)

姫野美姫(ヒメノ、ヒメ)

友松あや(あや、アヤ)

蛭川日出男(ゲスオ)



 夜が更けてきたので、皆を焚き火のまわりで寝かせる。


 俺とアリマ、いやキングだったか、それにプリンス、この三人が交替で見張る。


 若者たちは、ひとしきり談笑していが、すぐに寝た。


 聞けば、この者たちの世界では、日常で命のやり取りはないと言う。それなら、かなり疲れているだろう。


「ジャムパパ?」


 声に振り向くと、ヒメノだ。


 おなごの一部から「ジャムパパ」と呼ばれ始めた。俺の年は三十九だが、一部の親と同年齢らしい。


「子供は早く寝ろ、とでも言われたいか?」


 ヒメノが笑った。


「寝るけど、言わなくていいかもしれない事を、ハッキリさせとこうと思って」

「言わなくていい事?」

「うん。こういう世界でしょ。パパには全員を守って欲しいけど、そうじゃない時もあるかもだし……」


 俺は娘の目を見た。


「助ける序列か?」

「そう」


 おどろいた。おなごでそれを考えるか。この世界には来たのは一日? それほど経っておらぬというに。


「もちろん、一番はジャムパパ。ご自身ね。その次が予想つくと思うけど……」

「キングことアリマ殿だな」

「そう。彼がいないとバラバラになるから。次点がシュウ」


 意外な人選に俺は首をひねった。


「ほう、今日の話で言うドクだったか。プリンスではないのだな?」

「んー、プリンスはプライド高いし、放っといていいと思う。今日の話を聞くと、ドクは今後、最重要になりそう」

「なるほど」

「その次が、あの子」


 寝ている中で、小柄な娘を指差した。隣に寝ていた大柄な娘が起き、その子のめくれていた上着を直した。


「ほほう、これも意外だな」

花森(はなもり)千香(ちか)、彼女のスキルは回復なの」

「なるほど、理にかなっている」

「かなってる? パパに言われると安心するわ」


 かなうどころか、あきれる。我が国にいれば軍師にしたい資質だ。


「わかった。三人は何があっても守ろう」

「うん。よかった」

「しかし、謎だな」

「謎? なにが?」

「これほどの統率、見事だが、男女であろう?」


 ヒメノは空を見上げた。


「あー! それ聞いちゃう?」


 ヒメノが上げた声に、焚き火に木をくべていた大柄な娘が振り向いた。


「ヒメ、なあに?」


 大柄な娘が近づいてくる。ヒメノが俺に説明した。


友松(ともまつ)あや、彼女は八人兄弟の長女でね。面倒見がいいの」


 なるほど。年齢は若いのに、どこか母性を感じさせるのはそれか。


「ヒメ、なんの話?」

「あや、みんなに内緒よ。ジャムパパに聞かれちゃった。色恋沙汰はどうなってんだって」


 アヤと呼ばれた娘まで「あー」と天を仰いだ。


「ヒメ、それって、ほかのクラスからも言われるし」

「ドロドロ展開?」

「ビバリーヒルズ? 的な?」

「ないわー」

「ないよねー」


 娘二人が笑っている。


「キングとプリンスが飛び抜けすぎてて、ちょっと現実感ないのよね」

「えー! ヒメまでそれ言う? あんたが無理なら、誰でも無理だわ」


 アヤはそう言って、次に遠い目をした。


「恋愛対象じゃないのよね。うちは特に恩が多いし。二人には」

「恩、とな?」

「うん。ジャムパパ」


 この子まで、その呼び方が感染したのか。


「一時、弟がひねくれて。叩き直してもらったから」

「えっ! うい耳!」

「冬休みいっぱい、あの二人に拉致ってもらったの」

「うわっ! キングはいいけど、プリンス厳しそう」

「うん。この世の仏と地獄を見たって言ってた。ああでも、なぜか、俺でも生きていける自信がついたとか」

「……ゲスオもいたのね」


 ヒメノが確信を持って言う。ゲスオ殿、ひどい言われようだ。


「弟は今じゃすっかり、二人のファンね」

「ファンか。それに近いのかも。わたしら女子も」

「ヒメはそうでもないでしょ。でも、どうせなら女子全員に二人の子種をくれればいいのに」

「あ、あや、過激!」

「そう? あの二人の子供よ? 結婚はいいから、育ててみたくない?」

「無、無理! なんか責任重い!」

「それがダメなら、ジャムパパと人間でも作れるのかな? それはそれで面白そう」


 アヤに見られて、思わず下腹が痛くなった。祖母の言葉を思い出す。「おなごは生まれた時からおなご。見くびるでないぞ」との言葉。


 その時、気配に気づいた。


 囲まれている。剣の柄に手をやった瞬間、アヤの喉元に短剣が止まった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 転生モノには珍しい群像劇なんですね。(最近増えてきているかもしれませんが……) ハビスアゲルとか、ジャムパパ、女帝、ゲスオ…… 名前のセンスが独特で面白いです。 普段の代々木さんの楽しい…
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