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おまけ第1話 有馬和樹 「里の収穫祭は大にぎわい」


 今日は宴会。


 朝イチで決めたから昼には始めるかと思ったが、無理みたいだ。いざやるとなったら、どうやらそれぞれ、趣向を凝らしたいらしい。


 結局、昼の間で準備をして、夕方から始まった。


 名付けて「菩提樹の里、第一回収穫祭」だ。


 村の大通りに、ポンティアナックとの戦いで張った綱がある。今日はそこにパンツではなく布を三角に下げて光らす。


 その下に各家から運び出したテーブルを並べ、各家の自慢料理が並んだ。


 光ってはためく三角旗、その下に並ぶ露天。お祭りムードとして最高だ。


 遊び心で一人五枚、葉っぱを持つようにした。貨幣のかわりだ。金の代わりというわけではないが、どの屋台が一番人気だったか、これでわかる。


 おれとプリンス、ゲスオは三人でその大通りをブラブラと歩いた。


 ひときわ人が集まっている屋台があった。やっぱり調理班か。列に並んでみる。


 一番前になった時、バナナのような大きな葉に包まれたそれが何か、すぐわかった。


「ハンバーガーか!」


 調理班リーダー、喜多絵麻が恥ずかしそうに笑う。


「前に出せなかったハンバーグが残ってたから」

「でもパンズは、このための特性だよ」


 横で顕微鏡スキルの土田清正が胸を張った。


「あれ、今日は二人? ほかのメンツは?」


 調理班は一番人が多いはず。それが喜多と土田しかいない。


「セレイナはステージの準備」


 なるほど。今日も、あの歌声が聞けるか。


「花ちゃんはハビスゲアルさんと病人の看護」


 回復スキルの花森千香。そうか、まだ起きられない怪我や病気の人もいるもんな。あとで二人に差し入れでも持っていくか。


 回復スキルや回復魔法を使いすぎないほうがいい。これはハビスゲアルの提言だ。治癒力を劇的に上げる回復は、頼りすぎると身体が弱くなるらしい。


 そして治癒力を上げるだけでは治らない、今回の疫病のような例もある。魔法やスキルってのも万能じゃないな。


「友松は?」

「あやちゃんは、子供の健康診断するって。しらみや虫歯がいたら、除去できるから」


 これもなるほど。なにげに友松あやの掃除スキルが、一番のチートな気がする。それに、兄弟の多い友松らしい目の付けどころ。


「あのぅ……」


 喜多絵麻が、もじもじしてて気づいた。何も注文してない。


「あっ、ハンバーガーを一個」


 ハンバーガーは、一人一個食べると腹がふくれてしまう。三人で分ける事にした。


「それからな、二人とも……」


 おれが聞こうとする前に、土田が答えた。


「全面的に、姫野が正しいと思うよ。もし黙って行ってたら、怒るよ」


 あちゃ。じつは黙って行くかとも考えた。しなくて良かった。喜多絵麻も微笑んでうなずいた。まあ、納得してるのならいいか。


 ハンバーガー屋の隣には、野呂爽馬さんがいた。ノロさん、わかってるね。ハンバーガーには飲み物が必要。


「キ、キングくん、いくついる?」

「とりあえず、一個で」

「わ、わかった」


 ノロさん、鉄製の水差しに茶葉を入れ、スキルをかけた。あれ? 一個だからカップに直接でいいのにな。


「しばらく待ってください」


 しかも待つ? わからないけど、お茶の名人の言われた通りにする。


 三分経ってアラームが鳴った。


 ノロさんは水差しを大きなカップに注ぎ、隣にいた吉野に渡す。吉野由佳子、マスクのスキルを持つ農業班の女子だ。今日はノロさんの手伝いか。


 吉野はカップを受け取り、別の瓶からトロリとした物を入れてかき混ぜる。


「それなに?」


 おれが聞くと、吉野が得意げに笑った。


「蜂蜜」


 わお。とうとう農業班、蜂蜜まで手を伸ばしたか。


 次に果物のような木の実を半分に切り、その汁をカップに絞った。この匂いは、もしや……


 そのカップを後ろにいた女子に渡す。黒宮和夏だ。


 黒宮は鉄の箱を開けた。中にぎっしりあるのは砕けた氷!


「はぁい、アイスレモンティー」


 やっぱり! 一口飲む。うまい! 横からゲスオが素早く取った。


「むふぅ。この甘酸っぱさ。まるで初恋の味」

「ゲスオの初恋は二次元だろ」


 プリンスがさらに横から取った。


「むむ! 拙者、まだ一口しか飲んでおらぬのに!」


 懐かしいな。昔にこうやって四人で祭りに行ったな。そういや、ドクは何してんだろ。


「それに、拙者は初恋ぐらいあるでござるよ。ないのは超鈍感な二人ぐらいでござる」


 おれらのこと? プリンスと目が合った。反論できないのでプリンスも肩をすくめた。おれもプリンスも、そういう話に縁がない。


「まったく、二人とも、精神年齢が小6で止まってるでござる。……おお、あれは菩提樹クッキー!」


 ゲスオが走り出した。どっちが小6だよ。

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