4-2 飯塚清士郎 「秘密の呼び名」
今話登場人物(呼び名)
飯塚清士郎(プリンス)
坂城秀(ドク)
蛭川日出男(ゲスオ)
姫野美姫
喜多絵麻
ジャムザウール(ジャム殿)
有馬和樹(キング)
ドクが、恥ずかしそうに頭をかいた。
「天才っていうんじゃなくて、記憶力がいいだけなんだ」
姫野の目が点になった。
「はい?」
「ほらテストに教科書を持って入れたら、誰でも百点取れるでしょ。ずるしてるみたいでイヤなんだ」
「それ、天才だし!」
日出男が前に出て、人の悪そうな笑みを浮かべる。
「ぐふふ。ドク殿は、正にリアル・チートでござるよ。行く末は博士か官僚か。どちらにせよ、われら下民の上に立つお方」
大げさに正座をして祈りを捧げた。
「ゲスオ、やめてキモい」
「ゲスオ?」
姫野の言葉にキングが食いついた。
「ああ、お前がキング、俺がプリンスだろ? 日出男が自分にも何かつけろって言うの。んで、女子がつけたのがゲスオ」
「それはちょっと……」
キングが眉をしかめた。まあ、正義感のかたまりだから、そうなるだろうな。
「ぐふふ。我が陰のコードネームが暴かれし時、抑えることなき我が力、見せようぞ」
ゲスオ、眼鏡が月光で光ってるぞ。でも、その力って、シモネタ言うってだけだしな。
「ちょっと色々と急に話しを詰めすぎたかな。まあ、これでクラスの秘密は全部だろう。これから大変だろうから、話しといて良かったわ」
俺が安堵のため息をつくと、姫野が立ち上がった。
「いや、最大のミステリーが残ってるわよ」
「はっ、なに?」
ビシッ! と姫野は日出男に指を差した。
「キングとプリンス、それにドクはわかるわよ! なんでゲスオがその輪に入るのよ!」
女子一同がうなずく。
「さあ、なんとなく?」
俺は適当に答えた。
「それね、とってもいい話だよ」
ドクがキノコを木の枝に刺しながら、口を開いた。
「おい、ドク」
俺の言葉は無視して、ドクはキノコを焚き火で焼く。
「プリンスがゲスオをいじめて、キングが怒って。そこから二人のすごい喧嘩。プリンスあやまらないから、キングが殴り続けて。最後になぜか、ゲスオのほうが土下座でキングに謝って。昭和の少年漫画みたいだったよ」
みんなが黙る。俺はため息をついた。
「それについて言い訳はしない。俺はキングと会う前は、ひねくれてたからな。まあ、最低のやつだったわ」
「どうかな。最低で言えば、その時、見てただけの僕が一番最低じゃないかな」
ドクはキノコが焼けたようで、少しかじった。
「熱っ!」
「火が近いから。そういうのは焼くんじゃなくて、炙るの」
喜多絵麻が焚き火に近づいて、キノコを木の枝に刺し始めた。何本も作っていく。みんなの分も焼く気らしい。
「まさに、仲間、というわけだな」
黙って聞いていたジャム殿が口を開いた。
「この一族の長はキング殿。俺もそれに従おう。我が命を救ってくれた礼もまだだった」
ジャム殿がキングに向き直し、頭を垂れた。
「陰の支配者は姫野美姫でございますぞ、ジャム様。あの者は姫という字が二つもありながら、姫というより正に魔王。ぎゃふ」
姫野がゲスオの脳天にチョップした。
「っつうか、ゲスオは、よく二人に入っていけるわね。他のクラスの人が遠巻きに見てるのわかるでしょ」
脳天チョップを受けたまま、ゲスオが笑った。
「意気地なしどもめ。無双の男前、それも二人相並ぶ奇跡ぞ。そこと同じ釜の飯を食らう千載一遇の好機。遠慮する暇などござらん!」
「……ござらんって、お前、どこの武将だよ」
姫野があきれる。
クラスのみんなが吹き出した。
まあ、大変なことになったけど、なんとかなりそうだ。
こんな感じで、一人称で視点がコロコロ変わる、というシステムでやってみます。
こういう「クラス物」って、寒くなりそうで怖い。スベってなければいいのですが。
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