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4-1 飯塚清士郎 「野営」

またまた視点変更!サーセン!

ここから飯塚清士郎くん。

各話、サブタイトルの名前が「誰の視点か?」と表しています。

ほか今話登場人物(呼び名)

喜多絵麻

ジャムザウール(ジャム殿)

有馬和樹(キング)

坂城秀(シュウ、ドク)


 まさか、高校生の俺が異世界に来るとはな。


 森が深くなるほど、その思いが募る。植物は似ているが、どこか違う。そして、こんな深い森は関東にはない。


 日が暮れてきたので野営地を探す。


 この時、あたり一帯を探索し、獣やその巣がないかを確認するのが重要だ。


 とまあ、物知り顔で言うが、すべてはリザードマンの戦士、ジャムザウール殿の教え。


 焚き木を集め、その周りに輪になって座る。この場だけ見れば、高校生のキャンプファイヤーに見えなくもない。


「おい、焚き木を集めたのはいいけど、どうやって火をおこすんだ?」


 原始人のように木をこすり、なんてのは実際には上手くいかない。


「私が」


 女子の一人が歩み出た。喜多(きた)絵麻(えま)か。


 商店街にある「キッチン喜多」の娘だ。どういうスキルにしたのか?


 焚き木を見つめて人差し指を立てた。


「チャッカマン!」


 ぼう! と焚き木に火が点いた。スキル名、そのままかよ! しかし、さすが洋食屋の娘。料理に必要なのは火だ。


 みんなが、ジャム殿に自己紹介をしようとした。俺は手を上げてそれを制す。


「自己紹介も必要なんだが、みんな、わかってるように非常時だ。もう陰のコードネームをバラすぞ」


 みんながうなずく。ぽかんとしてるのは、我が親友の有馬和樹だけだ。


「なんだ? 影のコードネームって」

「大げさに言ってるだけでな。みんなが陰でどう呼んでるか? 秘密のニックネームってやつさ」

「へー、誰を?」

「主に、お前を」

「へっ?」


 さらに間抜け面してるよ。


「お前はキングだ」

「はい?」

「そして、俺は……」


 これ、言いたくねえなぁ。


 俺は喜多絵麻と目線を合わせて、自分を指した。


「飯塚くんは、プリンスって呼ばれてる」

「プププ、プリンス!」

「笑うな! お前がキングって呼ばれるから、俺まで巻き添えになったんだからな」


 キングこと有馬和樹は腹を抱えて笑っていたが、ふと気づいた。


「待てよ、おれがキングって何で?」

「統率力だろ」

「はぁ? わけわかんねえ」


 ほんとにわからない時の顔だ。


「にぶっ! 高1の林間学校で、滑落した家族を助けたろ」

「ああ、みんなでな」

「お前が仕切ってたじゃねえか」


 キングは眉を寄せた。まだわかってない。


「みんなオタオタしてただろ、普通はそう!」

「清士郎は、オタってなかったぞ」

「俺は別!」

「おお、さすが御曹司」

「うるさい! 茶化すな!」


 くっくっと誰か笑っていると思ったらジャム殿だった。


「あっ、すいません。内輪の話ばかりで」

「いや、話の内容はおおよそ掴めた。つまり、皆はアリマ殿を一族の(おさ)と慕い、本人は気づいていなかった、という話だな」


 ジャム殿の言い方が的確すぎておどろいた。


「そのとおりです」

「ふむ。どうりで、奇妙な一団としてのまとまりがあるわけか」

「まとまりですか。まあ、うちのクラスだけ一年から三年まで同じという特殊さもありますが」


 俺の言葉に、さきほど火をつけた絵麻が身を乗り出した。


「それそれ! すっごい運がいいよね!」

「まあ、理由はあるけどな」


 このさい、秘密を言うべきだと思った矢先、張本人が登場した。


「はいはーい、これどうぞー」

「シュウ、なんだそれ?」


 シュウこと、坂城(さかき)(しゅう)が持ってきたのはキノコだ。キノコはカラフルで毒々しい。


「それ食えるのか?」

「食べれるよ。僕のスキルで調べてあるから」

「シュウのスキルって何だ?」

「鑑定。ラノベでよくあるやつ」

「やっぱ、そういうのにしたのか。スキル名は?」

「いい仕事してますね! だよ」

「……ドク、学校サボって昼の再放送見すぎだぞ」


 坂城秀は、よく学校をサボる。一年時なんて、最初の半年を登校拒否していた。


「ドクって何?」


 喜多絵麻が聞いてきた。


「ああ、俺と和樹、日出男の三人と遊ぶ時のアダ名」

「ええ? そこ、そんな仲良かったっけ?」

「まあな。でもドクは一人が好きなとこあるし」

「学校、来ないもんね」

「最近は来てるよ!」


 ドクが、わざと怒ったような顔をした。


「さっきのクラス替えがない理由、それがこれだ」


「はぁ?」という声が一斉に聞こえた。


「ドク、いや坂城秀が、学校に言ったのさ。このクラスだったら学校に行くって」

「はい? 無理でしょ! どんな権力よ」


 横から口を挟んだのは、姫野だ。


「それができる。こいつ、天才だからな」

「天才って、シュウくん、成績って中の上、ぐらいでしょ」

「ああ、答案の七割か八割ほど書いたらヤメるからな」

「はぁぁぁぁ?」


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