3-1 ジャムザウール 「人間という異世界人」
ここからおりゃあ!と視点変わります。
めんどくせーとか言わないで♡
トカゲ男のジャムザウール。強そうなおっさんトカゲであります。
各話、番号の隣りにある名前が、その人の視点になります。
ほか今話登場人物(呼び名)
有馬和樹(アリマ)
姫野美姫(ヒメノ)
渡辺裕翔(ワタナベ)
山田卓司(ヤマダ)
ヴァゼルゲビナード
違う世界の種族と行動することになるとは、人生とは、まさに予測がつかぬ。
アリマと名乗った若者は、なかなか良い素質を感じる。同じような気配をさせるのが、もうひとり。
この二人が強いはずなのだ。だが今、おなごの意見に従い待っている状況だ。
この娘は女帝なのか。しかし、さきほど、アリマの言葉に誰ひとりとして異を唱えなかった。やはり、アリマが頭領なのか。
「同じ種族か? と思ったが違うようですね」
どこからか声が聞こえた。剣の柄に手をかける。上か!
アリマたちと似たような男が空中に浮いている。いや、アリマたちと見た目は同じだが、背中に翼が生えていた。
「有馬和樹と申します」
アリマが俺の時と同じように名乗った。
「ほう、話ができる御仁がいらっしゃる。私はヴァゼルゲビナード」
「ここから助かる方法はありますか?」
「さて、私には羽がありますが、あいにく、そちらにはないようですし」
上からの物言いに腹が立つ。最後に戦うなら、こやつにするか。
翼の男がこちらを見た。
「なにやら蜥蜴人が殺気立っておるようです。無足な戦いに付き合いきれませんので、私はこれで」
そう言って翼の男は空高く舞い上がった。しかし、途中で何かにぶつかったようで、回りながら落ちてくる。
「やっぱり、上は結界があるわね」
ヒメノと呼ばれた女帝が言った。
「じゃあ、ぎゅうぎゅうに詰めて。そう。渡辺くん、お願い」
ワタナベと呼ばれた男の子が、手のひらを空に向ける。
「リアリティ・フレーム!」
この一団の周囲に、地面の土と全く同じ絵が現れた。
これは幻影の術か。
幻影を中から見ているのだろう。薄っすらと外の景色が見える。
「ヤマダくん行ける?」
さっきまで、この若者はいたか? いつのまにか集団に混じっている男がいた。
「ああ、練習できた! みんな手を繋いでくれ」
若者たちが手を繋いでいく。最後になり、さきほどのアリマが笑顔で手を差し出した。
この笑顔。つい信用してしまうな。アリマの手を握る。
「行くぞ! 息止めろよ!」
ヤマダが叫んだ。息とな? 意味はわからぬが、息を大きく吸い込んで止めた。
「カッパッパ!」
ざぶん! とでもいうように地面に沈んだ。
なんと面妖な!
ほっておくと身体が沈む。これは、古の秘術として聞いた「地底歩行術」ではあるまいか?
若者たちが身をよじっている。うまく浮けないのか? これは水と同じなのに。
ああ、なるほど! この種族は泳ぎが得意ではないのか。ならば、俺が引っ張るべきだろう。俺の種族は水の中が得意だ。
アリマの手をしっかり握り、上に引っ張って泳ぐ。
手を繋いだ列は、長くたわんだ紐のようになった。
反対の端は、この術を仕掛けた男。ヤマダ、と言ったか。その者は泳ぎが達者なようだ。
ヤマダと目が合う。ヤマダに行きたい方向があるようだ。
俺とヤマダが両端で引っ張ることで、長い列が動き出した。
どれほど進んだだろうか。
苦しそうな者が出始めた。この種族は、それほど水中で息を止めていられないらしい。
ヤマダと目が合うと、彼もうなずいた。同じ意見のようだ。地上を目指して上昇する。
地上に出た。
この国の大通りのようだ。かなり栄えた国のようで、馬車が何台でもすれ違えそうなほど、通りの幅は広い。
次々と地上に出てくる若者たち。手を引っ張って地上に上げた。最後にヤマダが出てくる。
「ヤバかった! おじさんいなかったら、沈んでたかも!」
俺のことらしい。
通りに人影はない。さきほどの闘技場に街の人々は集まっているのだろう。
「みんな固まって!」
またヒメノという娘が命令を出した。
「リアリティ・フレーム!」
ワタナベの幻影術か。ゆっくりと、その幻影を出したまま進む。
止まった。
歩く先には城門がある。その向こうは橋だ。門の左右にある見張り台に、衛兵がひとりずつ。
幻影を出しているワタナベが口を開いた。
「まずい! ちょっと景色が複雑だ。バレるよ」
前書き部分に登場人物と呼び名を記載しました。
文中でも分かるようになっていますが、混乱したら見てみて下さい。
今後しばらくは記載してみようと思います。
「いらん、邪魔」って思えば、お伝え下さい。