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13-1 沼田睦美 「エルフの隠れ里」

視点変わります。むっちゃんこと沼田(ぬまた)睦美(むつみ)

ほか今話登場人物(ニックネーム)

友松あや(あやちゃん)

花森千香(花ちゃん)

有馬和樹(キング)

渡辺裕翔(ワタナベ)

飯塚清士郎(プリンス)

喜多絵麻(エマちゃん)


「ケルファー! ケルファー!」


 友松あやさんが自分のスキル名を連呼する。私の家の床、そこに置かれた木製のベッド台などがピカピカに綺麗なった。


 私の家と言っても、元はエルフの家だ。ここは、エルフの隠れ里だったらしい。木の上にいくつもの家がある。それを一人に一つ、自分の家とした。


 家と言っても四畳ぐらいの部屋だった。家具はベッド台と小さな机があるだけ。


「はあ、さすがに三十一人分は疲れるわね」


 友松さんが苦笑いした。クラスの二十八人、それにジャムさんとヴァゼルさん、あと村長さんの家だ。


 ここまで友松さんは大活躍。掃除というスキルはすごい。


「むっちゃんも、綺麗にしとく?」


 友松さんが、私の身体を指差した。


「あっ、もし良かったら。でも疲れてたら」

「いいの、いいの。女子は遠慮しないで。ケルファー!」


 ベタベタした身体がスッキリした。


 一部から「癒やし」のスキルを持つ花森千香さんは「ゴッド・マザー」と呼ばれている。私なら、友松さんがゴッド・マザーだ。彼女がいなければ、生きていけないかも。


「そういや、むっちゃんのスキルって何?」


 私は顔を引きつらせた。あまりに役に立たなくて、みんなに言えない。


「あっ、言いたくなかったら、いいからね」


 友松さんが笑顔で言い、帰っていった。


 私はベッド台に座って、ため息をついた。みんなのスキルは、みんなのためになる。それに比べ、私はなんて考えが足りないんだろう。


 家のハシゴから地面に降りた。すぐそばに、この里の大通りがある。男子数名が、その大通りに木の杭を打ち込んでいた。ランタンを吊るすらしい。


 大通りを真っ直ぐ進むと、大きな広場だ。広場の中央には、大きな焚き火が作られていた。


「今日は、キャンプファイヤーぐらいでっかくしようぜ」


 キングが提案している。そのうしろに霧が集まって、女性の姿になった。


 あれは、菩提樹の精霊? でも、ここには映像を出せる渡辺くんがいない。


「あまり、わらわの近くで火を使わないで欲しいのですが……」


 どうやってるんだろう? 近づいて聞いてみる。


「せ、精霊様、どうやってお姿を?」

「ワタナベとやらの一部を吸収し、自らの幻を出せるようにしたのです」

「い、一部?」

「そうです。タイヒを吸収しました」

「タイヒ?」

「渡辺のウンコだよ、沼田」


 キングが笑ってる。

 

……ああ、堆肥か!


「この人は、ウンコを食って出現した女ってわけさ」

「……わらわへの何か侮蔑な意図を感じるのは気のせいか?」

「気のせいだろ。いや。そもそも木の精か」


 よく見ると、菩提樹の精霊は前より鮮明に女性の姿になっている。髪は長く、仙女のようなフワフワした服を着ていた。


「それより、あちらに置いた篝火が近い。動かしてはもらえぬか?」

「面倒だなぁ。プリンス、ウンコ様の要望に応えるか」


 プリンスがうなずき、二人が去っていく。その後姿を眺めた。


 プリンスの周りには妖精が飛び、キングの横には精霊がいる。いよいよ、あの二人の見た目は人間離れしちゃった。


 広場の横に、大きな屋根の建物があった。レンガでできたバーベキュー台のような物が並んでいる。そこは昔の炊事場だったらしい。


 女子六人ほどが何か作っていた。私も何か役立たないと!


 みんなは根野菜の皮を剥いていた。考えると、三十二人の食事ってすごい。


 食器や調理器具は、ずいぶん揃ってきた。全滅した村から集めたものと、このエルフの里に残っていたもの。


 汚れは小川で洗えば綺麗になった。錆びなんかは、友松さんの掃除スキルで一発!


 やっぱり、彼女のスキルが私にとって一番のチートだわ。


「私も手伝う」

「むっちゃん、ありがとぉ」


 笑顔で応えてくれたのは「キッチン喜多」の喜多絵麻さんだ。


 喜多さんは、おとなし目でカワイイのに、料理がめちゃ上手。学園祭で彼女が作ったロールケーキは、破壊的に美味しかった。


 そのロールケーキは、褒める意味で「殺人ロール」と今では伝説になっている。私が男子なら、彼女と結婚したい。


 ここでも、やっぱり手付きがハンパない。するすると皮が剥かれていく。その横の友松さんも手慣れたもの。彼女は普段から弟たちの料理を作ってるから、当たり前か。


 私も慣れない手付きで皮を剥く。皮を捨てようとして、注意された。


「皮はダシに使うから、残しといてぇ」

「あっ、はいっ!」


 そんな技があるのね。


 調理場を見まわすと、野菜の他に見たこともない草や木の実があった。


「それね、ドクがくれたの。香辛料の代わりになるかもだって」


 友松さんは、あごで向こうを指した。同じ炊事場に、ドクこと坂城秀くんが一人で何かをやっている。


 大きな鍋に湯を沸かし、何か色んな草を煮ていた。


 ちょっとのぞいて見たけど、ドス黒い。それに、陶器の器と棒を使って白い石をゴリゴリしている。科学者が実験でもしているみたいだ。


「彼、何作ってるの?」

「うちらも、さっぱり」


 みんなもわからないようだ。


「そういや、今日の料理って何?」

「野菜で辛めのスープ作って、麦飯にかけてみるんだって」

「それって!」


 喜多さんが、にこりと笑った。


 ……カレーだ!


 異世界でカレーが食べれる!


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