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12-1 喜多絵麻 「妖精とプリンス」

視点変わります。絵麻ちゃんこと喜多絵麻

ほか今話登場人物(呼び名)

姫野美姫(ヒメちゃん)

有馬和樹(キング)

坂城秀(ドクくん)

山田卓司(タクくん)

飯塚清士郎(プリンス)

蛭川日出男(ゲスオくん)


 小さい時から、キッチン喜多で接客には慣れている。


 怖そうな男性もいるし、酔っぱらいもいた。でもゴブリンはいない。


 昨晩のゴブリン騒動が終わっても、気持ちは落ち着かなかった。


 あれから結局、一睡もできない。


 朝になったけど、まだ寝てる人が多い。ヒメちゃんに聞いたら、このままでいいって。


「みんな寝れなかったから、プリンスたちが戻ってくるまで寝てていいよ」


 そうキングくんも言ってた。昨晩、キングくんがあわてて駆けつけた時には、もう戦闘は終わってた。


 あれからずっとキングくんは見張りをしてたから、彼も寝てないんじゃないかな。


 お茶でも淹れよう。お茶にできそうな葉っぱをドクくんからもらっている。ヤカンはないけど、村から鍋を持ってきていた。


 近くの小川に行って洗う。


「おーい」


 声がして立ち上がった。向こうからタクくんこと、山田卓司くんが手を振っていた。


 ケガもなく、普通に歩いている。あっちに行ったみんなも無事で安心。


 プリンスも……


 プ、プリンス? 思わず鍋を落とした。


 と、とりあえず、一番近くの女子数名を起こそう!


「大変!」

「なに? 絵麻ちゃん」

「プリンスが大変!」

「ケ、ケガでもした?」

「違うの! でも大変!」


 起こした女子数名と戻る。


 プリンスがゆっくり歩いてくる。朝の澄んだ空気の中。一羽の妖精を連れて。


「も、萌える!」

「スマホ撮りたい!」

「いっそ、一眼レフで連写したい!」

「……はぁ、あの妖精と代わりたい」

「そっち!」


 私の言葉にみんなが突っ込んだ。だって、彼のまわりを飛び回って、今は肩に止まって休んでる。


「ぎゃは! 清士郎なにそれ!」


 キングくんの声だ。


 到着したプリンスのまわりに、みんなが集まる。こっちもゴブリンとか話すことはあるけど、とりあえず妖精さんが気になる。


「ほう、何十年ぶりに見るかの」


 その声にみんなが振り向いた。ここまで一緒に来た村長さんだった。


「おじいちゃん、妖精さん知ってるんですか?」

「わしが子供時分には、たまに見かけたがの。最近ではとんと見なくなったわい」


 プリンスの説明では、盗賊に捕まってたとのこと。


「売れば大金になるからのう。じゃが、わしら農家はそんなことせん。妖精がおる森は豊かになるんじゃ」


 妖精さんは、プリンスの服を一生懸命に引っ張っている。必死に引っ張りすぎて、その羽根からキラキラした粉のような物まで落ちている。


「むふぅ! 妖精の粉でござる!」


 ゲスオくんが妖精の下にスライディングするみたいに滑り込んだ。妖精の粉を浴び、両手を広げて雄叫びを上げた。


 ……なにしてるんだろ。


「おおお! これで拙者は空を飛びますぞ!」


 妖精さんがブルブル! と違う動きをして、金色の粉ではなく、赤い粉が出た。


「いかん! それは攻撃の粉じゃ!」


 村長さんが叫んだ。


 赤い粉はゲスオくんの肌に触れるとパチパチ! と火花を上げて弾けた。


 ゲスオくん、両手を広げたまま倒れる。


「あっ! ピーターパン!」


 ピーターパンって、妖精のティンカーベルに粉をふってもらい飛ぶんだった。


 私の声が聞こえたのか、倒れたまま親指をグッ!と上げる。そしてキングが、ゲスオくんの足を持って引きずって行った……。


 ゲスオくんって腕のヒビで添え木をしているのに、元気だ。


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