8-1 根岸光平 「見回り」
視点変わります。コウこと根岸光平
ほか今話登場人物(呼び名)
ジャムザウール(ジャムさん)
ヴァゼルケビナード(ヴァゼル伯爵)
姫野美姫(ヒメノ)
今日も野宿だ。まあ、今日は食べ物があるからええけど。
あれから馬車で進み、途中からは森に入った。普通に道を進むと、追いつかれる可能性があるらしい。
クラスのみんなは、焚き火のまわりで休憩だ。わいは周辺を見まわる。自分から偵察部隊に入れてもらった。
森の中は魔獣や肉食動物がいるらしいので、野宿するときは要注意だそうだ。まあ、けったいな世界に来たわ。
探すのは動物の死骸や大きなフン。特にこれといってなかったので、焚き火に帰ろうとしたらジャムさんに会った。
「ジャムさん!」
「コウ殿、異変は?」
「なーんもないですわ」
ジャムさんとしばらく歩き、足を止めた。
「えーと、ジャムさん?」
「何か?」
ジャムさんが足を止めて振り返る。なんて言ったらいいんやろ。
「軽骨な行動を慎まれよ、というところでしょうか」
誰かと思ったら、ヴァゼル伯爵。
名前が言いにくいから、みんなはヴァゼル伯爵と呼ぶことにした。なぜ伯爵を付けるかというと、もちろんドラキュラ伯爵みたいだから。でも聞いたところ、血は吸わないらしい。
「考えろ、とは?」
ジャムさんが眉を寄せた。
「子供たちは血を見るに慣れておりません。あまり刺激が強いのもどうかと」
ジャムさんがハッと気づいた。
「ぬかったわ。少しヒメノと話してこよう」
ジャムさんは、そう言って走っていった。
ヴァゼル伯爵と歩いて焚き火に帰る。
「おっちゃん、グッジョブです。ありがとう」
「貴殿も今日は、よい働きでした。どのような能力で?」
「あー、早く走れるってやつです。陸上部なもんで」
「リクジョウブ?」
「ああ、えーと、走って遊ぶ集団です」
「なるほど。あの速さを活かせば、よい戦士となりましょう」
わいは足を止めた。
「強くなれますか?」
「ええ。素早さというのは、もっとも強さに関係します。あとは使い方でしょうか」
「使い方?」
伯爵も足を止めた。こちらを向いてじっとしている。なんや?
「おわっ!」
気がついたら、真横にいてじっと顔を見られた!
「ど、ど、どうやったんです?」
「相手の虚を突きました。一瞬、消えたように見えたはずです」
「見えました!」
「相手の動きを見る目、身体の使い方、肝心なのは相手と自分の気配を操作すること」
これは、すごいわ。そして、わいがするべき事が見えた気がする。
「伯爵、いや師匠! 弟子にしてください!」
師匠は片膝をついて、両手を組んだ。
「師匠? なにしてはります?」
「我が大いなる母、チカ様に祈りを捧げました。私に弟子が偶成されるとは」
……師匠、だいじょうぶやろか?
焚き火に戻ると、みんなは思い思いのところに座っていた。小さなパンと干し肉を持っている。強奪した食料が配られたようだ。
姫野が少し離れたところに座っていた。食事はしていないようだ。
「姫野、だいじょぶか?」
近寄って声をかけた。
「うん。さっきジャムパパにも聞かれた。ありがと」





