表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/101

7 姫野美姫 「都の大通り」

視点変わります。ヒメちゃんこと姫野美姫


ほか今話登場人物(呼び名)

ジャムザウール(ジャムパパ)

ヴァゼルケビナード(ドラキュラもどき)

有馬和樹(キング)

蛭川日出男(ゲスオ)

友松あや(あや)

根岸光平(コウくん)

 キングが牢屋を壊し、外に出ると大きな通りだった。


 メインストリートって言うのかな。兵士の馬車が通るためか、下は石畳で固められている。向こうの世界で言えば六車線? かなり幅が広い。


 その広い通りが、一直線に大きな外門に向かっている。反対を見れば、一直線にお城だ。


 通りの中央に、多くの石像が建っていた。5mはありそうな大きさだ。石像は軍馬に跨ったやつもある。この国の英雄なのかもしれない。


 いつのまにか、ジャムパパが剣を二本持っていた。どこかで失敬したらしい。一本をドラキュラもどきに渡した。


 いくつかの組に分かれて散らばる。


 残ったのは、わたし、キング、ゲスオ。それに異世界人の二人。狙うは、この街の混乱。


「キング、あの石像、壊さない?」

「いいね。あっ、ブースト切れたかも」


「おまかせあれ」とゲスオが前に出る。


 こいつは、すぐふざけるから心配。


「ふざけないでいいからね」

「むむむ! 臨海突破!」

「言ったそばから! って、それ、わたしが言ったやつ!」

「ならば! リミッターカット!」

「原付の改造かい!」

「おだまり! 秘技、お茶目な落書き!」


 ゲスオがキングに触れる。それからキングは、つかつかと石像に近づいた。


「粉・砕・拳!」


 ボゴン! と石像が木っ端みじん。通りにいた人たちが「ぎゃー!」と悲鳴を上げる。


 もう一体に近づいてボコン!


 人々が、我さきにと通りから逃げ始めた。


「むふぅ。キングのスキル名は中二どころか、小6でござる」

「……言ってやるなよ」


 散らばっていたみんなが帰ってくる。麻袋を背負ったのがチラホラ。


 その向こうから……でかした! 馬車だ!


 一台の箱馬車と二台の幌馬車だ。箱馬車には、老夫婦と女子数名。あとは幌馬車に分かれてもらう。


 運転って言うの? それは異世界人二人とプリンス。


 プリンスって馬車の経験はないけど、乗馬はあるって。ほんとにもう、お坊ちゃま!


 馬車に乗り込もうとしたジャムパパが、うずくまった。動けないようだ。周りを見る。物陰から、ローブを着た青年がこちらに手をかざしていた。


「召喚士!」 


 来ると思ったけどジャムパパのほうか!


「ゲスオ! あや!」


 幌馬車から飛び降りてくる。


「お茶目な落書き!」

「ケルファー!」


 ……あやちゃん、高圧洗浄機の正しい名前はケルヒャーだけどね。


 ジャムパパが立ち上がった。


「これは?」

「この子のスキルは汚れを落とすの。プラスして今回は呪いも」

「ヒメ、全員、急いでしとくね」

「うん、お願い」


 そんな会話をしていたら、ジャムパパが駆け出した。


 召喚士に詰め寄ると剣を払った。


 召喚士の片腕が飛ぶ。


 思わず駆け寄ろうとしたのを「やめなさい」という言葉で止まった。馬車の上から、もう一人の異世界人が口を開いた。


「彼は戦う種族です。戦って死ぬのはよいが、自由を奪われるのは最も嫌うはず」


 ジャムパパは睨みつけたまま、相手のお腹に剣を刺した。それをねじると、相手はうめき声を上げて倒れた。


 その時、後ろから首に短剣を当てられた。


「武器を捨ててもらいましょうか」

「……無音鬼(むおんき)?」

「おや、名前を覚えてもらいましたか」


 わたしはそのまま下がらされ、集団から離れた。ジャムパパが武器を捨てる。


「無音鬼? じゃあ、わいは無影鬼(むえいき)で」


 さらに後ろから、聞いた声がした。わたしの首にある短剣が取られる。前に出て振り返ると、無音鬼の首にナイフが当てられていた。


 コウくんこと、根岸(ねぎし)光平(こうへい)だ。


「馬鹿な、わしの後ろを取るなど」

「おじさんより早いよ」


 コウくんがナイフを構えたまま離れた。


 ザッ! と音がしたと思ったら、ジャムパパが剣を振っていた。


 無音鬼は、首から血を吹き出して倒れた。


 遠くから音がした。城の方から兵士たちが駆けてくる。


「姫野! 馬車に乗れ!」


 キングの声にあわてて馬車に乗る。前にはジャムパパが乗り、手綱を勢いよく叩いた。


 三台の馬車は門をくぐり、堀にかかった石橋を渡った。渡ったところでキングが馬車から降りる。橋のたもとから拳を打つと、石の橋はガラガラと崩れ落ちた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ