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6-2 ヴァゼルゲビナード 「癒やしの力」

今話登場人物(呼び名)

ヴァゼルゲビナード

蛭川日出男(醜男、ゲスオ)

姫野美姫(ヒメノ)

花森千香(花ちゃん、ハナ)


 ゲスオとやらの話の大半はわからぬ。だが、この男が他人の能力を増幅させるようだ。


 どごん! と音がし、食堂の向こう側の壁が吹き飛んだ。


「しかし、なぜ四文字という縛りを……」


 私の疑問に、にやりとゲスオが笑みを浮かべた。


「無制限や無限というスキルはダメなようでして。四文字というところで審査に通りました」

「では、五文字でもいいのでは……」

「ぐふふ。社長」


 なぜ、社長と呼ぶのか。


「そこはほれ、世のいかがわしき言葉は、すべて四文字で現せますゆえ。例えば、おま……」


 ゲスオの後ろから、少女の手刀が炸裂した。


「おまえは、歩くR18か!」

「ヒメノ嬢のいけずぅ」

「この話題の時に、嬢とつけるな!」


 二人の意味不明な会話は置き、外に出る。

 

 昼間だった。まぶしすぎて、目を開けるのが辛い。


「まさか、蒸発しませんよね?」


 ヒメノと呼ばれた少女が聞いてきた。


「蒸発? まぶしいのと日焼けが傷に染みるのとで大変なのです」

「傷! そうだった! 花ちゃーん!」


 ヒメノが、ハナというさらに小さい子を呼んできた。これで、もはや何をするつもりなのか。


「傷、いける?」

「あ、はい!」


 ハナという娘が親指と人差指を立てた。


「お注射♡」

「……なんでスキル名それ?」

「えっ? だって、看護師のイメージで」


 人差し指で私をつついた。


 まったく、子供の遊びに……


 なんだこれは? 身体の内から留まることなく力が溢れる。


「ふははは!」


 あまりのみなぎる力に笑いがこみ上げた。


「ちょっと、ゲスオ!」

「ははー!」

「ハナちゃんのスキル、ブーストかけた?」

「もちろんであります! 『癒やす』を『すべて癒やす』に改変しております隊長!」

「やばっ、ドラキュラさん、臨界突破! って状態なんだけど」

「最高にハイッってやつですね」


 背骨に激痛が走り、翼が伸びる。内臓がひっくり返るような衝撃に耐え、目を開けた。


「ま、まぶしくない!」


 陽の光でも目を開けていられる。そしてこれほど、これほど、輝きのある世界だったのか!


 空は辺際なき青さが広がり、雲はあまりに巨大で優しい。


 涙がこぼれた。


 この世界は、どれほどの美しさに包まれているのか。


「……癒やされ過ぎちゃったね」

「はっ! いささか、反省しております隊長!」


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