6-1 ヴァゼルゲビナード 「驚愕の能力」
新しい人が出てきたので、その人の視点で。
めんどうな作品でサーセン!
<(_"_)>
視点は翼男のヴァゼルケビナード。
ほか今話登場人物(呼び名)
ジャムザウール(戦士殿)
有馬和樹(キング)
蛭川日出男(ゲスオ、醜男)
気高き夜行族。それが召喚に捕まり、このような地に堕とされるとは。
さらには、行動を共にするのは年端もゆかぬ子供らばかり。
「戦士よ」
横にいた蜥蜴族の男に聞いた。
「彼らは何歳なのです?」
「一七、一八だそうだ」
一八! まだ百も行っておらぬのか。それを知れば、この稚拙さも致し方ないのかもしれん。先程から出てからの事ばかり論ずるが、ここを出る策がない。
「戦士殿」
「何か?」
「子供らは、ここからどう出るつもりでしょう?」
「さて、どうするのか。胸がはずむな」
胸がはずむ? この戦士は言葉使いがおかしいのか。
子供らが立ち上がった。
「じゃ、おれはなるべく派手にやるからな」
周りからキングと呼ばれた少年だ。
キング? 王とな? どれほど仲間内で強かろうと、軽々しく使う言葉ではない。
「日出男じゃなかった、ゲスオ、よろしく」
「おまかせあれ」
醜男がキングに近づいた。
「むむむ! ご覧あれ最終最後の秘奥義!」
「いや、そういうの、いいから」
「くぅ。ノリが悪いでござる。秘技! お茶目な落書き!」
醜男は何やら大げさに言ったわりに、キングとやらの身体に触れただけだ。そのキングは何を思ったか、牢屋に入り直した。
壁に手を添える。
「粉・砕・拳!」
ごっ!と壁に拳が当たると、壁は粉々に吹き飛び、大きな穴が空いた。
「なっ!」
何をやった? 魔術ではない。魔術であれば、その流れが見えるはずだ。
壁の向こうは廊下だった。
「ありゃ、こっちが外だと読んだんだけどな」
そのまま真っすぐ横切り、廊下の壁に手を当てる。
「粉・砕・拳!」
また廊下の壁が吹き飛ぶ。穴の向こうで口を開けているのは兵士だ。どうやら兵士の食堂であるらしい。
「ぎゃあ!」という叫びと共に兵士が逃げ出す。
「何が、何がどうなって」
私の疑問に答えてもらいたかったが、横にいた蜥蜴の戦士も口をぽかんと開けている。
「お二方、参りましょうぞ」
私と戦士の間に立ち、手を引いたのは、さきほどの醜男だ。
「ヒデオ殿、これは」
「ゲスオで結構でござるよ、ジャム師匠」
「ゲスオ殿、キング殿の力はいったい……」
「はい。キングのスキルは拳で殴ると粉砕するという力です」
スキル、そんな物があるのか。醜男と戦士の会話に耳を立てる
「それにしては、規模が……」
「はい。拙者のスキルは敵のスキルに四文字だけ落書き、つまり字を足せるというものでして」
「それは敵だけでなく味方も?」
「そのとおりです。この場合『砕く拳』が、『なんでも砕く拳』に変わっております」
蜥蜴の戦士が絶句している。私も同じだ、こんな物は見たことがない!
「それは……最強の力、であるな」
「はい。うまいぐあいにチートが完成です」
「では、昨日の地下歩行術も?」
「さすが師匠! あれは『どこでも潜水』を、『みんなでどこでも潜水』に変えておりまする」
前を歩く少年の一人が笑いながら振り返った。
「誰かがいないと、チートにならないけどな!」
「おほほほ! 寄生虫とお呼び!」
「……そこまで言ってねえよ」





