5-3 ジャムザウール 「脱獄」
今話登場人物(呼び名)
ジャムザウール(ジャムさん)
有馬和樹(キング)
飯塚清士郎(プリンス)
ヴァゼルケビナード(翼男)
姫野美姫(ヒメノ)
友松あや(アヤ)
「私、私も連れて行ってくれたまえ!」
声がしたのは、俺の向かいにある牢屋だ。
おや? 見た顔だ。あの翼を持った男か。翼は折れている。あの墜落で、あちらこちらが怪我をしたようだ。
キングは少し考えたが、害がないと思ったのか男の柵の前に立った。
「待てよ、キング」
プリンスが横から入った。
「助ける義理はない。こいつは、俺らを放って逃げたやつだ。ジャム殿とは違う」
「まあそうだけど、何もこんなとこで死ななくても、いいと思うわ。鳥って空の下で死ぬべきじゃん?」
「おお、我が種族のロマンを理解する御仁! ひとたびの無礼、この身にかえましても」
それを聞いたプリンスが、にやっと笑った。
「言ったな?」
「はっ?」
「大人なら、約束守れよ」
「その、何をで?」
「キングへの忠誠。命をかけて」
「いやまあ、それは言葉の装飾としてでありまして」
「……くだらねえ種族だな。約束もできねえの」
ほう、プリンスは相手によって、かなり言葉が変わる。
「我が種族を愚弄するか!」
「おう、ならやってみろ! 蝙蝠!」
「誇り高き夜行族のヴァゼルゲビナード、ここに契約しよう。我が命を助けるならば、この者に命尽きるまで従う!」
「……すげえ大げさ。まあ、そこまで言うならいいかもな」
プリンス。本当に一八歳であろうか。ここまで弁が立つ若者も珍しい。
キングが鍵を壊し、翼男の首輪も割る。それを見た他の牢屋から「俺も出せ!」と声が上がった。
「キング、こっち」
ヒメノがキングを呼んだ。その牢屋は、一組の老夫婦が入っていた。
「村長さんなんだけど、税? それが徴収できなかった見せしめに捕まったんだって」
キングが考え込む。難しいところだ。悪人というのは、見た目ではわからない。
「その二人は本当でありましょう」
誰の声かと思えば、翼の男だ。
「私の一族は魔眼という、魂のありようを見ることができます。その二人の魂は清らかです」
魔眼か。この翼男、かなりの魔術使いかもしれん。
「そのほかの牢屋は?」
「クズですな」
「わかった」
キングは老夫婦の鍵を壊した。
それからキング、プリンス、ヒメノが中心となり、これからの行動を話し合う。何組かに分かれて、物資と武器の強奪。できれば馬車を、と俺が付け足した。
「暴れるのは、おれとジャムさん。あと翼のおじさん。それで敵は、こっちに注目してもらおう」
キングが俺を見る。俺はうなずいた。
「最重要は食料と水よ! 忘れないでね!」
「それなぁ。あんま危険だったら、次の街でもいいんじゃね?」
キングの言葉に口を挟みそうになったが、ヒメノが先に注意した。
「キング、それはダメ。こういう世界だと、次の食料がいつ入るか読めない。っていうか、男子は三国志とか、歴史モノ読んでないの?」
「三国志……ゲーム?」
「小説!」
「ちょっと何言ってるかわからない」
「わかるわよ!」
ふむ。王の覇気、宰相の智性。アヤの言うとおり、この二人がまぐわえば面白そうだ。
ジャムザウールさん視点が終わり、次からヴァゼルゲビナードとなります。
ころころ視点が変わり、わかりにくかったら申し訳ありません。
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