1 大賢者ハビスゲアル 「召喚祭」
闘技場の召喚士席に座る。
今日の「召喚祭」に参加する召喚士だけが座れる席だ。
今回の召喚は奇跡が起こった。勝ちも同然。
これで宰相への道も近づくというもの。
開始はまだか。空は灰色である。雨が降り出す前に始めればよかろうに。
「それでは、闘技者の入場です」
拡声魔法の声が会場に響いた。一万を超える観客から歓声がうなりをあげる。いよいよだな。
闘技者の扉が次々に開かれた。
ほほう、アンリューラスは有翼人種か。よい召喚だ。
モルイッチは……またトロールか。あれは攻撃力はそこそこあるが、オツムが悪すぎる。学ばぬ男よの。
おお、我が闘技者の扉が開いた。扉から次々に出てきたな。会場が静まった。そうであろう。
「これは……魔法使いのハビスゲアル、複数召喚! 複数召喚です!」
会場がどよめいた。
「ただいま審査を行っております。しばらく、お待ち下さい」
何も不正はしておらぬ。召喚石を一つ。それで28人だ。
「確認できました! 間違いありません! 魔法使いハビスゲアルの召喚数は28匹です!」
会場の喝采に手を上げて応えておこう。それに「魔法使い」ではない。次は「大賢者」と呼ばせよう。
今回の召喚では大漁に釣れたが、年齢も若く、魔法も使えない雑魚ではある。しかし、特殊技能は与えた。あの中から、どれかは勝ち上がってくるだろう。
「それでは召喚祭の開始です!」
特設の音楽隊から、大太鼓が叩かれる。
戦闘が始まった。
我が召喚人たちは……身動きもできぬか。なんと臆病な。小僧や小娘では無理だったか。
いや、ひとりが敵に向かったか。……ぬぅ。戦わずに話し込んでおる。あまりに無様であれば、ここから火焔球を放つか。自らの手で処理したほうが、大衆受けは良かろう。
小僧小娘が集まり始めた。ほほう、協力して戦うか。そうであろう。
いや、戦う気がないのか? ぎっしりと、ひとかたまりに身を寄せている。
……これはもはや、処理しよう。
手のひらを向け、火焔球の呪文を唱えようとした時、小僧小娘の姿が一斉に消えた。
「ば、ばかな……」
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なにとぞ
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