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魔王少女サイカの英国武士道記  作者: 三河 悟
Episode.2:Attack of the Kreis
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ドッカンバトルで大騒ぎ

「解除ぉ!」『『『ドッカ~ン☆♪』』』『プッチ~ン♪』『うきゃ~る♪』

「うぉっ!?」


 空中要塞トリスケルが、深淵へ沈んで行くのを見届けてから、僕たちは合体を解除した。

 ……やっほー、僕だよ、サイカちゃんだよ~♪

 いやぁ、激しい戦いだった。まさか島ごと襲ってくるとは思わなったらねぇ。メイド軍団は血のストックがからっきしになったし、量産しておいたベクターマシンは殆ど撃墜されちゃったし、何より僕のダメージがデカ過ぎるし、とんでもない損害だよ、まったくもう。

 まぁ、カインを取り戻せたから、別に良いか。終わり良ければ全て良しってね。

 それじゃあ、さっそくだけど、カインにはそこの岩に座ってもらってと、


「ごめんなさい!」


 三つ指着いて、土下座だよ!


「いや、急にどうした!?」

「もちろん、勝手に色々やってた事についてだよ!」


 ちなみに、今回の大戦争については謝りません。大体カインのせいなので。


「……いいよ、もう。助けてもらったし、これでおあいこで」

「いぃよっしゃあああああああああああああああああああ!」


 フハハハハハ、言質は取ったからな。サイカちゃん大勝利ぃ!


『グヴォァアアアアアッ!』

「まだ居たんかお前ぇっ!?」


 ――――――と思ったのも束の間、空から何故かカーリーが降って来た。生きとったんかワレェ!


『グゥゥゥ……カイン!』


 すると、カーリーはどういう訳だか、僕ではなくカインの方を見て、彼の名を呟いた。


『カイン……カワイイ、スキ……ホシイ!』


 さらに、インド系でも分かるくらいに顔を赤く染め、たどたどしいながらも、愛の告白めいた事を言いやがった。

 何だお前、邪悪なる殺戮の女神の癖して、生き生きと動くカインの姿を見て、一目惚れでもしたんか!?

 そう言えば、ドゥルガーはこいつの嫁を探しに来たらしいからな。自分の再婚相手を兼任して。ドゥルガーは無理すんなよ婆としか言いようがなかったが、カーリーに関しては……。

 いやいやいやいや、それでも結局おねショタだし、何か見てみたいかもって思うけど、それ以前にカインは私の物なんだよぉ!


「えっ、いや、急にそんな事言われても……」


 ほら、カインも困ってるじゃん!

 だから、ちょっと照れるの止めような?


『タベタイ!』

「それって性的な意味でだよな!?」

『ゴチソウ!』

「誰か助けて下さーい!」


 ヤバい、これには私も困った。この女、コイビトはゴチソウ系だった。舌なめずりが艶めかしくて、生々しいんだよ!


『す、凄い……カーリーちゃんが、初めて人間の言葉を喋った……!』

「お前、母親失格だろ、それは……」


 後を追って来たドゥルガー曰く、カーリーは生まれてこの方、奇声か雄叫びしか上げて来なかったらしい。武術の前に言語を教えろ。理性を学べ。

 つーか、そんな家庭事情はどうでもよろしい。問題は今目の前で、僕の家族が文字通り食べられそうだって事である。駄目に決まってんだろ!


【させるかーい!】「サ、サイカ……!」


 僕はカインを守る為、ユダたちと再合体して立ちはだかった。疲れてるんだから、もう勘弁して下さいよー!


『ヤダヤダ! カインホシイ! カインホシイ!』

【カオ○シかお前は! やる訳無いだろ、彼氏を食うような女に! ウチのカインは、絶対に渡しません!】

『グルルル……』


 すると、カーリーを闇色の光が包み込み、その身を変じさせる。

 至る所に灼熱のマグマを思わせるラインが血走った、禍々しく刺々しい漆黒の鎧を纏い、背中に八本の腕を翼のように、九の仮面を首飾りの如く生やした、暗黒の魔神としか言いようのない姿だった。

 これぞカーリーのバトルスタイル。本気の戦闘形態だ。皮肉にも体格がフォモール族にそっくり。

 ……って、おい、マジか。今の今までずっと、大戦争の最中でも通常形態のままだった癖に、こんな所で本気出すの!?

 馬鹿だろ、お前。恋は盲目とか、そういうレベルじゃない。愛に狂った悪鬼羅刹だわ。それはラクシャサの役処だろう!?


『ゴヴァアアアアォオオッ!』

【このっ、舐めんじゃねぇ!】


 殺る気が数え役満なカーリーが、合計十本の腕を振るい、殴り掛かって来る。

 だが、僕も伊達に合体していない。手数は足りてるんだよ!


『グゥゥゥ……ヴォァアアアッ!』


 私がユダたちの腕を生やして受け止めた事により、数の多さに意味を見出せなくなったカーリーは一旦距離を置き、背中の八本腕を引っ込めると、その分の筋力を全身に行き渡らせ、伝説の戦闘民族みたいなムッキムキになった。そんなの有りか。

 ならば、私も同じ事をしてやろう!


【ぬぅん!】


 どうだ、伝説のコマンドーになってやったぞ!


『グルヴォアォォッ!』【来やがれぇ!】


 そして、準備万端になった僕たちは、オーラを纏って正面からぶつかり合った。

 さらに、そのまま空中へ躍り出て、空前絶後の超能力スカイバトルへ移行する。


「オレの為に争わないで! 普通に迷惑だからぁっ!」


 カインが一昔前のヒロインみたいな台詞を叫んでるが、そんなの知らんなぁ。

 というか、それはこいつに言ってやれよ。Episode.2のラスボスがこんな奴なんて、私がいの一番に嫌だわ!

 ま、そういう事だから――――――死ね、この女ァッ!


【はぁあああっ! 【死兆星群(デス・メテオ)】!】


 まずは私の魔法攻撃。アンタレスさんから教わった、破滅の隕石群を喰らいやがれ!


『フヴゥゥゥ……!』【何!?】


 しかし、カーリーは直撃する前にテレポートで回避してしまった。逃がすかぁ!


【ここ……だはぁっ!?】『グヴォァッ!』


 だが、座標を追って転移した先――――――極寒の大地にカーリーはおらず、突如上から【天威無崩脚(ビックバン・シュート)】ばりのドロップキックを食らわせて来た。こいつ、先読みをして……!?


【チッ……!】『ゴァアアアッ!』


 このまま踏み付けにされる筋合いは無いので、僕も地面とキスする前に、花咲く桃源郷みたいな秘境へテレポート。当たり前のようにカーリーが追って来たので、


【【天界蹂躙拳ゴッド・ハンド・クラッシャー】!】『ヴルォアアアアッ!?』


 体感的に【天界蹂躙神拳ゴッド・ハンド・インパクト】くらいの拳叩き込んでやった。花弁が舞い、鳥たちが飛び立っていく。

 むろん、転移先の先を読んでの一撃である。魔女っ子舐めんじゃねぇよ!


【【混沌の覇者(カオス・グリード)】三連打ァ!】『………………!』


 そして、勢いに乗る形で【混沌の覇者】で追撃したのだが、カーリーはまたしても緊急テレポート。また何処ぞの極致へと逃げ延びた。今度は灼熱の炎獄地帯のようだ。


『ブルヴォァアアアアッ!』【危なっ!】


 と、カーリーが神通力の波導砲で不意打ちしてきた。当たったマグマが一瞬でプラズマ化して、消失する。危ないし、いい加減しつこいんだよ、このブス!


【【混沌と終焉の覇者(カオス・グリエンド)】!】


 消耗しているから少々威力が心許ないかもしれないけど、これで決めてやる!


『フッ、ハァッ! ギャォォ……カァアアアアアッ!』


 すると、カーリーも似て非なる、全てが反転した破壊光線をぶっ放して来た。


『ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』

【うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!】


 さらに、今回はどちらも退く事も避ける事もなく、真っ向から激突。光線同士による零距離の押し合いとなった。威力はほぼ互角。気力が尽きた方が負ける。ホント、何でもっと早く使わなかったし。


『ヴォァアアアッ!』

【はぁああああっ!】


 まずは私が力尽くで押し込み、


『グルヴォォオオ!』

【うぬぅうううう!】


 続いてカーリーが巻き返して、


『ヴヴォオオオオオヴァァッ!』

【ショォラァアアアアアアッ!】


 相反するエネルギーどんどん溜まっていき、やがて爆裂。周囲の雲を全て弾き飛ばしながら、僕とカーリーは着地した。

 一瞬の静寂。


『ガッ!?』


 カーリーの胸にヒビが入った。


『グヴヴヴヴ……ヴルヴォァアアアアアアアアォッ!』


 さらに、崩壊は全身へ広まって行き、盛大に爆発した。鎧が吹き飛び、中から生身のカーリーが出て来て、倒れ伏す。どうやら、完全に力尽きたようである。


「解除ぉ!」『し、死ぬぅ~!』『『もうダメ』』『とろけるプリ~ン』『ばぶるぅ~』


 こちらも限界なので強制解除。皆死に体だった。そりゃそうだよね。軟体組は溶け掛かってるし。いやー、ヤバかったねー。

 だが、あえて言わせてもらおう、もう一度!


「サイカちゃん、大勝利ィイイイッ!」


 こうして、いらんオマケの最終決戦も終わり、今度こそ全ての決着が付いたのだった。お後がよろしいようで。


 ◆◆◆◆◆◆


 そして、現在の七大魔王会議に至る……訳なんだけどさぁ。


『………………』


 雇用主(マモン)様の視線が痛い。そんな目で見ないで!

 一応、母上様が何時ものように上手く事取り繕ってはくれたものの、居心地の悪さは変わりない。

 つーか、今回に関しては僕、別に悪くないじゃん。勝手に戦争吹っ掛けて来たのはモリグナ三姉妹とフォモール族だし、きっかけを作ったのは刀身忍軍とカインで、サンダルフォンに至っては悪魔界(そっち)の預けた鈎が原因でしょうが!

 つまり、私が文句を言われる筋合いは無い。聖書にもそう書いてあるもん!


『……そんな訳あるか』

「ですよねー」


 だが、許されなかった。つらたん。

 何だかんだ言っても、マホンを半壊させたのは僕たちだから、言い訳のしようが無いね。だから、せめてパイクレースぶっ潰したのは許してちょ。良いじゃん、平和は取り戻したんだからさー。


『まぁ、フォモール族とモリグナ三姉妹の起こしたいざこざに関する損害は、こっちにも非があるから目を瞑るとして――――――』

「ありがとうございます!」

『サンダルフォンとの落とし前はオマエが付けろ』

「ですよねぇえええっ!」


 チクショー、そうなるよなぁ。

 しかし、サンダルフォンの奴、何でわざわざ悪魔界の最下層まで来て、僕と話をしたいだなんて言い出したんだろう?

 送って来るのは端末だろうから、あいつには大した危険は無いけど……僕ら、そんなに仲良かったっけ?

 いや、絶対に違う。あんなの友達じゃない。敵ですよ、天敵。絶対に難癖付けて天界側に有利な条約とか結ぶ気ですよ、やだー。


『やぁ、サイカ・エウリノーム。また会ったね』


 とか何とか言っている内に、サンダルフォン(の端末)が現れた。前回同様、チャンネルを合わせるように、だ。出方が一々カッコいいなお前。


「……私に一体何の用よ? まさか、性懲りもなく“地獄の鍵を寄こせ”とか言いに来たんじゃないでしょうね?」

『まさか。そんなしょうもない事を言いに、わざわざ端末を送ったりしないよ。これでも、ここまで来るの割と大変だったんだからね』


 あ、やっぱり電波が届かない地下は来づらいのか。何か納得である。


『いや、セキュリティって意味だよ。何で自分の職場をわざわざディスるのさ?』

「ナチュラルに思考を読むなよ」

『何となくそう考えてるだろうって思っただけさ。これでも見る目はあるんでね』

「そうかなぁ……」


 あの鳥頭たちと組んでる時点で全然信用出来ないんですけど。敵だし。


『まぁまぁ、そう言わないでよ。これでも、わたしは貴女の事を結構気に入ってるのよ?』

「え、何それ怖い……」


 今までの何処に気に入る要素があったんだよ。というか「これでも」が口癖なのね。


『わたしの仕掛けたクトゥルフの罠を潜り抜け、パイクレースで見事に優勝し、魔法攻撃の通じないフォモール族とモリグナ三姉妹の進撃を止めた。見ていて飽きなかったよ』


 やめろ、そんな黒歴史をインプットするな。


『それに、厄介な星の下に生まれてるようだしねぇ?』


 そう言って、サンダルフォンは母上様の方を見た。楽しそうでもあり、忌々しそうでもある。複雑な感情を持っているようだ。


「……で、結局何を言いに来たワケ?」


 色々とお腹いっぱいだから、もう帰りたいんですけど。帰ったら帰ったで、まーたブランドー伯爵に会わなきゃいけないし。イルちゃん(本人が親しみを込めて欲しいとの事でこうなった)や馬鹿犬(ブルータス)の処遇を決めにゃならんのよー。


『そうだね、前置きはこれくらいにしておこう』


 と、サンダルフォンが真面目な顔付きで僕を見据え、それから七大魔王たちを見渡してから、高らかに宣う。


『――――――新たな「マホン」が完成した。その名も「ガフ・マホン」。「ガフの部屋」を取り込んだ一級品さ。モリグナ三姉妹とフォモール族、それから君たちが馬鹿騒ぎをしてくれたおかげだ。そして、今ここに、わたしのわたしによるわたしの為の独立を宣言する。つまり、地獄と天国双方への宣戦布告だよ。その日を楽しみしているといい。神々が黄昏る、その日をね……』

「………………!」

『それじゃ、バイバ~イ☆♪』


 こ、こいつ、とんでもない事を言うだけ言って、消えやがった……!


「……という事で、万事解決ですよね?」

『『『『『『『本当にそう思う?』』』』』』』

「ですよねぇ~?」


 結局、その後も僕は会議に付き合わされ、これからの方針と対策を決め、ついでに欲しくも無いお小言を沢山頂いた。


「ま、元気出せよ」

「カインのバッカーン!」


 あ~ん、やっぱり僕はあの世で一番不幸な魔法少女だぁ~っ!

◆ガフの部屋


 旧約聖書における魂の貯蔵庫。人の魂は生命の樹の果実(生命の実)であり、それを一時的に保管しておく場所の事。人が生を受ける時に実を取り出して与えるのだが、雀はそれを感知する能力が有り、囀りはその証なので、雀が鳴かなくなった時、人類は滅亡すると言われている。

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