ドッカンバトルで大騒ぎ
「解除ぉ!」『『『ドッカ~ン☆♪』』』『プッチ~ン♪』『うきゃ~る♪』
「うぉっ!?」
空中要塞トリスケルが、深淵へ沈んで行くのを見届けてから、僕たちは合体を解除した。
……やっほー、僕だよ、サイカちゃんだよ~♪
いやぁ、激しい戦いだった。まさか島ごと襲ってくるとは思わなったらねぇ。メイド軍団は血のストックがからっきしになったし、量産しておいたベクターマシンは殆ど撃墜されちゃったし、何より僕のダメージがデカ過ぎるし、とんでもない損害だよ、まったくもう。
まぁ、カインを取り戻せたから、別に良いか。終わり良ければ全て良しってね。
それじゃあ、さっそくだけど、カインにはそこの岩に座ってもらってと、
「ごめんなさい!」
三つ指着いて、土下座だよ!
「いや、急にどうした!?」
「もちろん、勝手に色々やってた事についてだよ!」
ちなみに、今回の大戦争については謝りません。大体カインのせいなので。
「……いいよ、もう。助けてもらったし、これでおあいこで」
「いぃよっしゃあああああああああああああああああああ!」
フハハハハハ、言質は取ったからな。サイカちゃん大勝利ぃ!
『グヴォァアアアアアッ!』
「まだ居たんかお前ぇっ!?」
――――――と思ったのも束の間、空から何故かカーリーが降って来た。生きとったんかワレェ!
『グゥゥゥ……カイン!』
すると、カーリーはどういう訳だか、僕ではなくカインの方を見て、彼の名を呟いた。
『カイン……カワイイ、スキ……ホシイ!』
さらに、インド系でも分かるくらいに顔を赤く染め、たどたどしいながらも、愛の告白めいた事を言いやがった。
何だお前、邪悪なる殺戮の女神の癖して、生き生きと動くカインの姿を見て、一目惚れでもしたんか!?
そう言えば、ドゥルガーはこいつの嫁を探しに来たらしいからな。自分の再婚相手を兼任して。ドゥルガーは無理すんなよ婆としか言いようがなかったが、カーリーに関しては……。
いやいやいやいや、それでも結局おねショタだし、何か見てみたいかもって思うけど、それ以前にカインは私の物なんだよぉ!
「えっ、いや、急にそんな事言われても……」
ほら、カインも困ってるじゃん!
だから、ちょっと照れるの止めような?
『タベタイ!』
「それって性的な意味でだよな!?」
『ゴチソウ!』
「誰か助けて下さーい!」
ヤバい、これには私も困った。この女、コイビトはゴチソウ系だった。舌なめずりが艶めかしくて、生々しいんだよ!
『す、凄い……カーリーちゃんが、初めて人間の言葉を喋った……!』
「お前、母親失格だろ、それは……」
後を追って来たドゥルガー曰く、カーリーは生まれてこの方、奇声か雄叫びしか上げて来なかったらしい。武術の前に言語を教えろ。理性を学べ。
つーか、そんな家庭事情はどうでもよろしい。問題は今目の前で、僕の家族が文字通り食べられそうだって事である。駄目に決まってんだろ!
【させるかーい!】「サ、サイカ……!」
僕はカインを守る為、ユダたちと再合体して立ちはだかった。疲れてるんだから、もう勘弁して下さいよー!
『ヤダヤダ! カインホシイ! カインホシイ!』
【カオ○シかお前は! やる訳無いだろ、彼氏を食うような女に! ウチのカインは、絶対に渡しません!】
『グルルル……』
すると、カーリーを闇色の光が包み込み、その身を変じさせる。
至る所に灼熱のマグマを思わせるラインが血走った、禍々しく刺々しい漆黒の鎧を纏い、背中に八本の腕を翼のように、九の仮面を首飾りの如く生やした、暗黒の魔神としか言いようのない姿だった。
これぞカーリーのバトルスタイル。本気の戦闘形態だ。皮肉にも体格がフォモール族にそっくり。
……って、おい、マジか。今の今までずっと、大戦争の最中でも通常形態のままだった癖に、こんな所で本気出すの!?
馬鹿だろ、お前。恋は盲目とか、そういうレベルじゃない。愛に狂った悪鬼羅刹だわ。それはラクシャサの役処だろう!?
『ゴヴァアアアアォオオッ!』
【このっ、舐めんじゃねぇ!】
殺る気が数え役満なカーリーが、合計十本の腕を振るい、殴り掛かって来る。
だが、僕も伊達に合体していない。手数は足りてるんだよ!
『グゥゥゥ……ヴォァアアアッ!』
私がユダたちの腕を生やして受け止めた事により、数の多さに意味を見出せなくなったカーリーは一旦距離を置き、背中の八本腕を引っ込めると、その分の筋力を全身に行き渡らせ、伝説の戦闘民族みたいなムッキムキになった。そんなの有りか。
ならば、私も同じ事をしてやろう!
【ぬぅん!】
どうだ、伝説のコマンドーになってやったぞ!
『グルヴォアォォッ!』【来やがれぇ!】
そして、準備万端になった僕たちは、オーラを纏って正面からぶつかり合った。
さらに、そのまま空中へ躍り出て、空前絶後の超能力スカイバトルへ移行する。
「オレの為に争わないで! 普通に迷惑だからぁっ!」
カインが一昔前のヒロインみたいな台詞を叫んでるが、そんなの知らんなぁ。
というか、それはこいつに言ってやれよ。Episode.2のラスボスがこんな奴なんて、私がいの一番に嫌だわ!
ま、そういう事だから――――――死ね、この女ァッ!
【はぁあああっ! 【死兆星群】!】
まずは私の魔法攻撃。アンタレスさんから教わった、破滅の隕石群を喰らいやがれ!
『フヴゥゥゥ……!』【何!?】
しかし、カーリーは直撃する前にテレポートで回避してしまった。逃がすかぁ!
【ここ……だはぁっ!?】『グヴォァッ!』
だが、座標を追って転移した先――――――極寒の大地にカーリーはおらず、突如上から【天威無崩脚】ばりのドロップキックを食らわせて来た。こいつ、先読みをして……!?
【チッ……!】『ゴァアアアッ!』
このまま踏み付けにされる筋合いは無いので、僕も地面とキスする前に、花咲く桃源郷みたいな秘境へテレポート。当たり前のようにカーリーが追って来たので、
【【天界蹂躙拳】!】『ヴルォアアアアッ!?』
体感的に【天界蹂躙神拳】くらいの拳叩き込んでやった。花弁が舞い、鳥たちが飛び立っていく。
むろん、転移先の先を読んでの一撃である。魔女っ子舐めんじゃねぇよ!
【【混沌の覇者】三連打ァ!】『………………!』
そして、勢いに乗る形で【混沌の覇者】で追撃したのだが、カーリーはまたしても緊急テレポート。また何処ぞの極致へと逃げ延びた。今度は灼熱の炎獄地帯のようだ。
『ブルヴォァアアアアッ!』【危なっ!】
と、カーリーが神通力の波導砲で不意打ちしてきた。当たったマグマが一瞬でプラズマ化して、消失する。危ないし、いい加減しつこいんだよ、このブス!
【【混沌と終焉の覇者】!】
消耗しているから少々威力が心許ないかもしれないけど、これで決めてやる!
『フッ、ハァッ! ギャォォ……カァアアアアアッ!』
すると、カーリーも似て非なる、全てが反転した破壊光線をぶっ放して来た。
『ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』
【うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!】
さらに、今回はどちらも退く事も避ける事もなく、真っ向から激突。光線同士による零距離の押し合いとなった。威力はほぼ互角。気力が尽きた方が負ける。ホント、何でもっと早く使わなかったし。
『ヴォァアアアッ!』
【はぁああああっ!】
まずは私が力尽くで押し込み、
『グルヴォォオオ!』
【うぬぅうううう!】
続いてカーリーが巻き返して、
『ヴヴォオオオオオヴァァッ!』
【ショォラァアアアアアアッ!】
相反するエネルギーどんどん溜まっていき、やがて爆裂。周囲の雲を全て弾き飛ばしながら、僕とカーリーは着地した。
一瞬の静寂。
『ガッ!?』
カーリーの胸にヒビが入った。
『グヴヴヴヴ……ヴルヴォァアアアアアアアアォッ!』
さらに、崩壊は全身へ広まって行き、盛大に爆発した。鎧が吹き飛び、中から生身のカーリーが出て来て、倒れ伏す。どうやら、完全に力尽きたようである。
「解除ぉ!」『し、死ぬぅ~!』『『もうダメ』』『とろけるプリ~ン』『ばぶるぅ~』
こちらも限界なので強制解除。皆死に体だった。そりゃそうだよね。軟体組は溶け掛かってるし。いやー、ヤバかったねー。
だが、あえて言わせてもらおう、もう一度!
「サイカちゃん、大勝利ィイイイッ!」
こうして、いらんオマケの最終決戦も終わり、今度こそ全ての決着が付いたのだった。お後がよろしいようで。
◆◆◆◆◆◆
そして、現在の七大魔王会議に至る……訳なんだけどさぁ。
『………………』
雇用主様の視線が痛い。そんな目で見ないで!
一応、母上様が何時ものように上手く事取り繕ってはくれたものの、居心地の悪さは変わりない。
つーか、今回に関しては僕、別に悪くないじゃん。勝手に戦争吹っ掛けて来たのはモリグナ三姉妹とフォモール族だし、きっかけを作ったのは刀身忍軍とカインで、サンダルフォンに至っては悪魔界の預けた鈎が原因でしょうが!
つまり、私が文句を言われる筋合いは無い。聖書にもそう書いてあるもん!
『……そんな訳あるか』
「ですよねー」
だが、許されなかった。つらたん。
何だかんだ言っても、マホンを半壊させたのは僕たちだから、言い訳のしようが無いね。だから、せめてパイクレースぶっ潰したのは許してちょ。良いじゃん、平和は取り戻したんだからさー。
『まぁ、フォモール族とモリグナ三姉妹の起こしたいざこざに関する損害は、こっちにも非があるから目を瞑るとして――――――』
「ありがとうございます!」
『サンダルフォンとの落とし前はオマエが付けろ』
「ですよねぇえええっ!」
チクショー、そうなるよなぁ。
しかし、サンダルフォンの奴、何でわざわざ悪魔界の最下層まで来て、僕と話をしたいだなんて言い出したんだろう?
送って来るのは端末だろうから、あいつには大した危険は無いけど……僕ら、そんなに仲良かったっけ?
いや、絶対に違う。あんなの友達じゃない。敵ですよ、天敵。絶対に難癖付けて天界側に有利な条約とか結ぶ気ですよ、やだー。
『やぁ、サイカ・エウリノーム。また会ったね』
とか何とか言っている内に、サンダルフォン(の端末)が現れた。前回同様、チャンネルを合わせるように、だ。出方が一々カッコいいなお前。
「……私に一体何の用よ? まさか、性懲りもなく“地獄の鍵を寄こせ”とか言いに来たんじゃないでしょうね?」
『まさか。そんなしょうもない事を言いに、わざわざ端末を送ったりしないよ。これでも、ここまで来るの割と大変だったんだからね』
あ、やっぱり電波が届かない地下は来づらいのか。何か納得である。
『いや、セキュリティって意味だよ。何で自分の職場をわざわざディスるのさ?』
「ナチュラルに思考を読むなよ」
『何となくそう考えてるだろうって思っただけさ。これでも見る目はあるんでね』
「そうかなぁ……」
あの鳥頭たちと組んでる時点で全然信用出来ないんですけど。敵だし。
『まぁまぁ、そう言わないでよ。これでも、わたしは貴女の事を結構気に入ってるのよ?』
「え、何それ怖い……」
今までの何処に気に入る要素があったんだよ。というか「これでも」が口癖なのね。
『わたしの仕掛けたクトゥルフの罠を潜り抜け、パイクレースで見事に優勝し、魔法攻撃の通じないフォモール族とモリグナ三姉妹の進撃を止めた。見ていて飽きなかったよ』
やめろ、そんな黒歴史をインプットするな。
『それに、厄介な星の下に生まれてるようだしねぇ?』
そう言って、サンダルフォンは母上様の方を見た。楽しそうでもあり、忌々しそうでもある。複雑な感情を持っているようだ。
「……で、結局何を言いに来たワケ?」
色々とお腹いっぱいだから、もう帰りたいんですけど。帰ったら帰ったで、まーたブランドー伯爵に会わなきゃいけないし。イルちゃん(本人が親しみを込めて欲しいとの事でこうなった)や馬鹿犬の処遇を決めにゃならんのよー。
『そうだね、前置きはこれくらいにしておこう』
と、サンダルフォンが真面目な顔付きで僕を見据え、それから七大魔王たちを見渡してから、高らかに宣う。
『――――――新たな「マホン」が完成した。その名も「ガフ・マホン」。「ガフの部屋」を取り込んだ一級品さ。モリグナ三姉妹とフォモール族、それから君たちが馬鹿騒ぎをしてくれたおかげだ。そして、今ここに、わたしのわたしによるわたしの為の独立を宣言する。つまり、地獄と天国双方への宣戦布告だよ。その日を楽しみしているといい。神々が黄昏る、その日をね……』
「………………!」
『それじゃ、バイバ~イ☆♪』
こ、こいつ、とんでもない事を言うだけ言って、消えやがった……!
「……という事で、万事解決ですよね?」
『『『『『『『本当にそう思う?』』』』』』』
「ですよねぇ~?」
結局、その後も僕は会議に付き合わされ、これからの方針と対策を決め、ついでに欲しくも無いお小言を沢山頂いた。
「ま、元気出せよ」
「カインのバッカーン!」
あ~ん、やっぱり僕はあの世で一番不幸な魔法少女だぁ~っ!
◆ガフの部屋
旧約聖書における魂の貯蔵庫。人の魂は生命の樹の果実(生命の実)であり、それを一時的に保管しておく場所の事。人が生を受ける時に実を取り出して与えるのだが、雀はそれを感知する能力が有り、囀りはその証なので、雀が鳴かなくなった時、人類は滅亡すると言われている。




