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二話 縋る子2

「……ここか。」


手に持っていたスマホでマップを

開き、もう一度確認する。

間違いなくここだ。

確認すると、俺はスマホをポケットに

しまい、その家のドアの横についた

インターホンを鳴らした。


「はい……。」


中からこの家の母親らしき人が

出てくる。


「すみません、姫路さんのお宅で

間違いないしょうか?」


「え、えぇ。それよりあなたは……?」


「申し遅れました、霊媒師を生業と

してます、影山駆といいます。

先日、姫路真美さんから依頼が

届いたのですが。」


「霊媒師ってあなたまだ未成年じゃ

ないんですか?」


「はい、今高校生です。」


彼女は俺をまじまじと見て、信じて

なさそうな顔を浮かべる。


「お母さん? どうしたの?」


家の奥から女性の声が聞こえる。


「真美、この人あなたが呼んだの?」


「も、もしかしてあなたが駆さ

ん…!?」


「この度はどうも。あなたの霊を

除霊しに参りました。」




季節は冬、ほとんどの家庭には

こたつがあり、皆がぬくぬく過ごして

いる頃だろう。

この家にもこたつがあった。

そのこたつを挟むように俺の座る

反対側に依頼主とその両親が座った。


「それで君が真美の呼んだ霊媒師

の……駆君だっけ?」


依頼主の隣に、まるで娘が家に男を

連れてきた時のような態度で

彼女の父は聞いてきた。


「はい、そうです。」


俺は営業スマイルで答える。

すると彼ははぁ……とため息をついた。


「真美……夏休みからのお前は

どうかしている……。

父さんや母さんには何も話さないで

いきなりこんな人を呼んで。」


彼女は呆れる父の声をただうつむいて

受け流すだけだった。


「失礼ですが……お父さん、

真美さんの霊媒師に助けを求めた

判断は正しかったと思います。」


俺の言葉に彼女はようやく顔を

上げる。

一方父はお父さん呼ばわりされたこと

と、娘を援護した事に腹が立ち


「い、インチキ霊媒師が勝手な

事を言うな!」


と声を腹立てた。


「娘に適当な言葉をかけて

騙したあげく、ノコノコとこの家にま

でやってきて」


「お父さん! もうやめて!」


彼女は父の言葉を自分の言葉

でかき消す。

娘の大きな声に父は怯み、

静かになった。


「少し、私と真美さんだけで話しを

させてくれませんか?」


「な、何を言って」


「お父さん! お願い……!」


彼女の力のこもった言葉に根負けし、

彼女の父と母は部屋を出ていった。



部屋の中が俺と彼女だけになる。


「……見えますか?」


話を先にきりだしたのは彼女からだっ

た。


「えぇ。見えます。」


「ほ、本当に……?」 


「あなたの体に必死にしがみつく

小さな女の子が。」


その言葉を聞いて安心できたのか、

目に涙を浮かべる。


「よ、良かった……誰に言っても

分かって…貰えなくて……。」


「そうゆう類の物を一度でも見ない

限り、信じろと言われても信じられま

せんからね。」


「駆さんは他にも見えるんですか?

お、おばけとか。」


「まあ、生まれつき。俺も苦労しま

したよ。誰にも理解されなくて。」


「私……お父さんやお母さんに言っても

信じてくれなし、友達には馬鹿に

されるだけだし、

そんなときにネットで

あなたのサイトを見つけたんです。」


世界には霊が見えてしまう人は

意外といる。

そんな人達が助けを求められる場所

として、俺の所属している

霊媒師グループが


『困ったときの霊媒師』


というサイトを立ち上げた。

それを見つけた彼女が依頼し、

俺が派遣された。


「申し訳ございませんでした。

あなたが依頼してから

約二ヶ月ほど経ってしまい。」


「そんな、来て貰えただけでも

良かったです。本当に…。」


誰にも理解されない。

誰も分かってくれない。

だけどそんな時に一人

だけでも理解者が居てくれる 

だけで、救われる。

そういうものだ。


「それでは早速、その霊の

除霊に入りましょう。」


そう言って俺はずっとからっていた

リュックを床に下ろすのだった。

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