一話 縋る子
これから話すのは私の犯した罪だ。
これは全て私の招いた事なのだ。
もしあの時、私があんな事をして
いなければ…。思い返す後悔など
無駄なのかもしれない。
8月、日本ならほとんどの高校生が
今夏休みを楽しんでいる頃だろう。
私もその一人だった。
友達と海に遊びに行き、彼氏とも
はじめてのデートをした。
最高だった。毎日が…。
そんなある日だった。
「ねぇ!今度、魚切ダムってところに
行ってみようよ!」
これを言い出したのは心霊好きな
A子だった。
「えー、また?去年も行ったじゃん。」
「真美、よく考えてみてよ!
私達来年受験でしょ?もう遊ぶんだっ
たら今しかないって!」
心霊好きなA子に誘われ、心霊スポット
に行くのはもう一度や二度では無かった。
だから私はその時、いやいや言いなが
らも行ってしまったのだった。
魚切ダムは私が住む広島では
有名な心霊スポットだった。
「おー、いい景色!」
A子は暗くて何も見えないくせに
カメラのシャッターをもきっていく。
私達はダムを塞き止める橋の上から
見ていた。
なんでも魚切ダム付近では、戦死した
人々の遺体を集めて火葬した場所が
あり、そこで顔や体が崩れた人の
霊が出るとか出ないとか。
正直私はただ夏の思い出にちょっと
したスリルを味わいたかっただけだっ
た。だから、少ししてすぐにもう
帰ろうとA子に言ったのだ。
だが、今頃考えてみるとそんな事
せずに、こんな場所に来なければよ
かったと思う。
ん?影?
私はその橋の真ん中に暗闇の中、
はっきりと見た。
それは人影だった。
あんなに遠くにいるのにその時は
はっきりと見えた。
防空頭巾ともんぺを着た幼い少女
がそこにはいた。
それはまるで戦時中の子供だった。
だが、私はその時はその事では
なく何故こんな時間に一人でそこに
立ってるのかが気になった。
「A子あれ……。」
私はA子に見るよう促すように
その少女を指さした。
それが間違いだった。
少女は笑った。いや、そう
感じた。間違いなく笑った。
嬉しそうに。
私はその時はじめて恐怖を感じた。
しまったと。しかし、もう遅かった。
「どうしたの?真美。」
A子は不思議そうに私の顔を覗く。
「え、いや。」
私は再び少女の方を見た。
けれど、そこには暗闇が広がる
だけだった。
なんだ…。見間違いかな?
そう安心した時、何かが私の右太もも
を触った。
「えっ?」
目は無い。暗闇だった。耳や鼻は
ある。けれど片足が腐ってはずれかか
っている。身につけている防空頭巾や
もんぺもボロボロで破けかかり、血が
付いている。
けれど腕はしっかりしていた。そし
て、その少女はガッチリと私を逃さぬよ
うにその腕で私の足を抱くように
掴んでいるのだった。
「イヤーーーーーッ!!!A子!
た、たすけて!!!」
私は震える声で必死に叫んだ。
隣にいるのにA子はまるで違う
世界にいるぐらい遠く感じた。
いや、違う。私が違う世界に
いるのだ。