5月 一般大会 2試合目 1
さて、相手チームの内紛による諸事情で、ベストメンバーではなかったとはいえ、1試合目を実力の差を見せつけて勝ち上がった永竹クラブではあったが、2試合目の相手はは企業チームの『ドリーム化繊』。しかも毎回決勝まで駒を進めるA区では強豪チームだ。
A区の一般大会では、1部に8チーム、2部に8チームが所属していることは前述の通りだが、今回の5月一般大会は、1部8チームの内、5チームは企業に所属しているチームだった。
レベルが低いA区の連盟に加盟している企業チームであるので、総合的に見て決して全国レベルのチームがひしめき合っている訳ではない。
しかしながら、企業に所属しているチームの構成員は、原則その企業に所属している役員や社員そして職員となる。従って、その人数が多ければ多いほど、バレーボール経験者であったり、身長の高い人であったり、プレーの上手い人を構成員として選ぶ幅が広がる。
その結果、大学などでバレーボールを経験した卒業したての新入社員が、構成員として試合に出場する可能性も、当然ながらある。もちろんA区や他の地域の試合で選手登録をしていれば、その地区や地域以外の試合には出場できない。
故に、家庭婦人の資格が多い構成員でチームを登録している、いわゆるママさんバレーチームでは、一般大会で中々決勝戦まで勝ち上がることは出来ない。1試合目を勝てても2試合目はほぼ企業チームと対戦するので、勝つことは極めて難しい。
過去にママさんバレーチームの『蕨クラブ』が決勝に勝ち上がったことがあるが、その時は2試合目の途中で、対戦相手の選手がケガをして、試合中ではあったが途中棄権となり、不戦勝で決勝戦に進んだ。
当然決勝戦では、企業チームとの実力の違いを見せつけられ、大差で敗けた。A区の一般大会で、後にも先にもママさんバレーチームが決勝戦に進出したのはこの1回であったと、聞いている。
ここ数年A区の一般大会決勝戦は、『ドリーム化繊』と『オータムクイーンズ』の企業チーム同士であった。
白熱した試合内容で、若手とベテランのアタックの打ち合い。また速攻をからめた攻撃や、9人制独特のネットプレーを交えた4回目のコンタクトプレー、そしてベテランの熟練した技術でのレシーブのし合いなどで、一般大会が開催されるたびに、優勝を争っていた。
その『ドリーム化繊』と永竹クラブとの試合はAコートの4試合目。間もなくプロトコールを迎えようとしていた。
永竹クラブは、陽介の指示通りウォーミングアップをすませ、コートに入る準備をしていたが、キャプテンの#1ヨシちゃんと、#3キーちゃんの姿が見えない。
陽介が心配になり、体育館外の廊下に出てみると、その2人がお互いに向き合って、真剣にジャンケンの練習をしていた。
陽介は、このチームに、間違った指導をしてしまったのではないかと、自分に不安になった。