弱小ママさんバレーチームというもの 3
さて、定刻に来ている4,5人のメンバーがウォーミングアップを始め、体がだいぶ温まったところで、ぼちぼちと他のメンバーが集まって来た。最初に遅れて来たメンバーが「こんばんわ!」と言って体育館に入って来たのは19時20分、その後バラバラ集まって来たが、定刻に来ているメンバーをよそに、ダラダラと世間話をしている。「今度韓国に行くんだけど、一緒に行かない?」、「近くのスーパーでセールがあるから一緒に行こうよ!」、「子供がサッカー辞めちゃってさぁ~」等々、およそバレーボールの練習に来ている会話ではない。しかも練習開始時間を遥かに過ぎているのに…。
ひとしきり世間話が終わり、その遅く来たメンバーがウォーミングアップを始めた頃、定刻に来ていた4,5人はウォーミングアップが終わり、各々に与えられた練習課題を真面目にこなし、疲労の色さえ見せていた。中には必死に練習課題にとりくみ、すでに虫の息になっている者さえいた。陽介はその姿を見て感心していた。そしてその日来る予定のメンバーがコートに入って、全体の練習が始まったのは、何と20時少し前であった。
ただでさえ弱小チームなのに、これだけ少ない練習時間で強くなるのは、なるほど難しいなと、陽介は思った。
ただし、ほとんどの弱小ママさんバレーチームにおいて、最終的に集まって来る時間はともかく、永竹クラブのように、10人以上が常に練習に参加するチームは、極めて珍しいことである。弱小ママさんバレーチームのほとんどは、練習日が決まっているのにもかかわらず、3~4人しか集まって来ない。大会直前の練習日ですらメンバーが全員集まるのは珍しいことである。
強豪チームは、そもそもチーム構成員一人一人の技術力が高く、大会直前の練習日にしか全員が集まらないことが多い。それでもある程度は勝てるし、場合によっては優勝することもある。技術力が高いので、短時間でも集中した練習をこなして試合に臨むのであろう。まるでサッカーの代表チームのようだ。
しかし、弱小チームは、構成員がいわば人数合わせでいる場合が多い。当然普段は仕事や家事におわれ、練習に参加できない人が多いが、さすがに大会直前の練習となると義理でも練習に参加するという具合だ。ただ、強豪チームのそれと違い、短時間で集中した練習など不可能である。したがって、よほど優秀な人材が入部しない限り、いつまでも弱小であることを余儀なくされる。