弱小ママさんバレーチーム 再び5
それぞれの飲み物をグラスに注ぎ、陽介の前にはナミナミと注がれた紹興酒のロックが置かれた。陽介はウーロンハイが飲みたかったが、この場面で陽介に選択の自由はなかった。
久しぶりに体を動かしたせいで、生ビールを3杯飲んでものどの渇きがおさまっていなかった陽介は、早速紹興酒をゴクリと一口飲んだ。
「何だよ陽ちゃん、まだのど渇いてたんだ!、まぁ体がデカイからザルのように飲めるんだろうけど、まだ乾杯してないから新しいの注いでもらいな!」
「乾杯?」この自分の体型を、脚立でも使わなければ絶対にとどかない棚の上に上げ、人のことをデカイと言ったジャイアントパンダが、これまた地元民であったことを、陽介は後で知った。
何度も言うが、約20年ぶりに地元の姉さん達に会うので、風貌が変わりすぎて誰だか分からない上に、化粧が崩れたりスッピンでは、覆面をかぶっているプロレスラーと一緒で、全く誰だか分からないのである。
さて、あらためて乾杯した猛獣御一行様から「陽ちゃん練習初参加、お疲れ様ぁ~!」と言われ、うかつにも「初めまして!、の人も多いかと思いますが、これからも宜しくお願い致します!」とグラスを重ね、「ビールではなく、違う飲み物で乾杯をする何ぞ、ママさんバレーをやってる人は何かが違いますね!」と、すでに生ビールでご機嫌になっている陽介が言うと、「ビールはね、次の飲み物が喉を通りやすくなるための薬。胃カメラだって管を通しやすくするために、麻酔で喉をうがいするだろ!。それと一緒だよ!、ハッハッハ。」とジャイアントパンダが説明した。
それは例えが違うだろ!と言いたかったが、「そうですね、ビールはうがいですか?やっぱり体がデカイから、言うことも人の域を超えてますね!ハッハッハ。」とジャイアントパンダに言った。
陽介の気の利いた誉め言葉に、店にいた小動物達が大爆笑すると。さすがに猛獣御一行様はムッとした。
程よく酔いがまわって、しかし自分が発した言葉で店の雰囲気がなごんだことでご機嫌な陽介は、猛獣達がすすめる酒をしこたま飲んだ。いや、飲まされた。
彩姉さんが急に優しい声で、「今日は練習初参加だったんで疲れたでしょ?、いっぱい飲んでね。私が最後まで付き合ってあげるから!」と言ったのを覚えているが、永竹クラブ練習参加初日、陽介にこの後の記憶は無い。
そして次の練習日、練習参加初日の『これからの時間』で、午前2時まで飲んでいて彩姉さんに実家まで送ってもらったことが判明し、その代償として毎回練習に来ることを義務付けられ、陽介は約20年ぶりに、本格的にバレーボールにかかわることになる。