かつてない練習の日々 7
もちろん、練習の過程でレシーブをはじく等、ボールがあらぬ方向に転がることがあるが、そのボールが練習の邪魔にならないように(危険な位置にないように)皆でケアをし、そのレシーブをはじいた者がレシーブ出来るまで今度はボール籠からボールを持ち出し、陽介はボールを打ち続けた。そして、レシーブ ⇒ トス ⇒ 前衛レフト(ライト)でキャッチ ⇒ 監督がボールを打っている位置に持参までの一連が行われた時、一旦練習を止め、全員でボール拾いを行い、また練習を続けた。日頃のボール拾い練習が功を奏し、アッと言う間に散らばっていたボールは籠におさまった。
ただ、この練習は見た目より激しいし、体力も使う。
陽介はレシーバーにボールを打って、それをレシーバーがはじいたりしたボールを、トスを上げる者が必ず追うように指示した。たとえ1センチでもレシーバーがボールを上げたら、嘘でもいいからそのボールに触ろうとするようにと、重ねて指示した。そして皆に『コートに(床に)ボールが落ちなければ、自分たちの失点にならない』ということを意識づけるために、「追わないボールは一生拾えない」と、ボールを追う姿勢を見せないメンバーには、追う姿勢を見せるまでボールを打ち続けた。そのことによって9セットを行う体力をつけることと、ボールへの執着心を得ようとするのがが陽介の狙いであったが、最初のうちは皆な大変だった。本当によく頑張っていると陽介は感心していたが、中には体力的に厳しい者もいた上に、今度は川さんや三輪さんの大御所も参加している本当の全員練習のため、体調面には十二分に注意しなければならなかった。
陽介は皆に、「ギブアップは早めに言って下さい。僕も十分に注意していますが、倒れてからギブアップしても間に合いませんから…。それとこれ以上は体力的に難しいということと、出来るのにしないということは、全く別です。皆さん大人ですからそのへんは分別をつけて下さい。」そして大御所には「年齢からくる体力の低下は、人間である以上当然のことです。したがって体力的に難しければ遠慮なく休憩して下さい。ただし皆と同じ練習について行こうとする努力はして下さい。僕は体力的に難しいことによって休憩を申しでた人を、メンバーの一員として差別することはしません。」と伝え、「出来るのにしようとしない人が問題なのです。だから出来る範囲で精一杯頑張って下さい!」と付け加えた。