弱小ママさんバレーチーム 再び4
「生ビールの人~~」、またも想像がつかに可愛い声で像アザラシが吠えると、猛獣全員がそのたくましい腕を上げた。
そして、その偽りの声に再び反応してしまった小動物達を見かけると、ニタッと笑って像アザラシが、「私達可愛いでしょ?バレーボールやってるの!良かったらこちらの席で一緒にいかがぁ?」
バレーボールをやっていると、自ら言わなければ絶対にそれが分からないことを自覚して発したのであろうか?いずれにしても、小動物達は無言で目を背けた。像アザラシは反応がないのを確認して、あっさり席に着いた。きっといつものことなのであろう。迷惑な話しである。
間もなく危害を加えに来たのではない事を悟った小動物達が、忘れていた賑わいを取り戻すと、猛獣御一行様の席にも料理が出てきた。入店から料理がでてくるまでの一連を見ていた陽介は、この状況で誰が注文したのだろうと、不思議に思った。
(陽)「ねぇ、彩姉さん。誰が注文したんですか?」、(彩)「誰ってヨシちゃんよ。(像アザラシ)」、(陽)「えぇ~?、だって注文する暇なんかなかったじゃないですか?」、(彩)「あの娘はね、こういうことに物凄く気が利くの。お嫁さんにしたら旦那さんは最高よ!」
しかし彩姉さんの発言は、あくまでもお嫁さんから見た話で、果たしてこの状況だけ見てお嫁さんにすれば最高なのか判断できる世の男性は、中々存在しないのでは…陽介は思った。
飲み会も進み、生ビールをしこたま吸い上げる猛獣達であったが、そろそろ違う飲み物が欲しくなったらしい。
「ママぁ~、いつものやつ頂戴ぃ~!」、像アザラシの雄叫びが響いた。
慌てて店のママが用意したのは、焼酎のボトル、紹興酒のボトル、ウーロン茶のボトル、それと水と氷。グラスはそれを飲む人分だけ出すという気の利かせ方は、この混み合っている店では大変であろうに、よく躾けてあると、妙に感心する陽介であった。