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都大会後の『これからの時間』 2

 ゾウアザラシのかけ声で、あらためて全員が飲み物を手にした。


 三輪さんが、「皆さんお疲れでしょうが起立して下さい。今日は本当にお疲れ様でした!、皆さん物凄く格好良かったです!、そして素晴らしい内容の試合でした。負けはしましたが胸を張りましょう!、それでは良いですか?、カンパぁ~イ!!!」と言った。


 全員がグラスやジョッキを高々と上げ、そして重ねあって声を上げた。


 笑顔でカンパイを終え席に着くと、キーちゃんがマメちゃんに「体調はどう?、飲んでも大丈夫?」と気を遣っていた。


 マメちゃんは第一試合で体調を崩し、薬を飲んで激闘の試合を続けた強者である。


 キーちゃんに限らず、皆なきっと心配していたに違いない。


 だがマメちゃんの返答は、「いやいや、あの時は本当に辛くてもうダメだと思った。だけど陽ちゃんがベンチ下げてくれたおかげで薬を飲めたし、皆なの頑張りを見てたら体調が良くなっちゃった!、それ以降は全く体調が悪くならなかったし、お酒が飲めると思ったらさらに元気になっちゃった!」と笑いながら言っていた。


 皆なの頑張りに、良い方向に影響されたのは良かったと思うが、酒を飲むことを想像しただけでさらに元気になれるとは、ほぼアルコール○毒と言われても仕方ない。


 しかしマメちゃんに限らず、今日の酒は美味しいに違いない。


 激戦を終え、声も喉もカラカラであろう。


 そして敗戦した結果、翌日日曜日の試合が無くなったため、疲れてるとはいえ時間を気にせず飲めるのだから…。


 皆な第一試合の話しで盛り上がっている。


 ヨシちゃんが、「1セット目は、陽ちゃんの言う通りセンター攻撃をマークしない作戦が功を奏したけど、さすがに2セット目は相手も気付いたよね。センターの速攻とかセンターからの攻撃が多くなったもんね!」とキーちゃんに話すと、「そうだよね。さすがに気付いたよね。それにあのセンターは身長も高かったし歳も若かった。それだけで反則だよね。だってさ、どう見たって私達より10歳は若かったもんね。20歳台は出場禁止とかのルールにしてくれれば良いのにぃ~!」とキーちゃんは笑いながら言った。


 それを聞いていたマメちゃんが、「そんなルール作ったら、私が出られなくなっちゃうぅ~!」とぶりっ子気味に言うと、ジャイアントパンダの和気ちゃんが、「マメちゃん、あんた私達50歳越えのメンバーに喧嘩売ってのかい?」と威嚇すると、「いえいえ、とんでもございません!」と小さくなりながら笑って言った。


 「ところで、私達50歳台って、誰と誰よ?」とヤマちゃんが不思議そうに言うと、和気ちゃんが「私と彩ちゃんとイケさんだよ」と答えたが、ヤマちゃんが「三輪さん達は?」とあらためて聞いた。和気ちゃんは「あの人達は60歳台!」と笑いながら言った。


 それが聞こえたか聞こえなかったか、三輪さんが「誰か、私のこと呼んだ?」と言ったので、一同「何でもありません!」と慌てて言った。


 楽しい時間は、アッという間に流れて行く。


 23:00を過ぎた頃から、疲れもあったのであろう、先ずイケさんがテーブルに両手と顔をつき睡眠に入った。続いてマメちゃんが、さらにはイソちゃんが睡眠に入った。


 陽介は、限界が近い思い、「彩姉さん、皆な疲れてるからそろそろお開きにしましょうよ!」と提言した。


 彩姉さんは、「そうね。皆な疲れてるから…。でも大丈夫。チョッと休めばまた飲めるから。少し寝かせておいてあげてネ!」と言って、自らの席で盛り上がっている数人との会話に戻った。


 陽介は、「大丈夫かこの連中は?」と思った。


 と、ここで青ちゃん・丘ちゃんの旦那さんと子供達が、「嫁を宜しく頼みます」と言って帰途に着いた。子供達は長時間にわたってよく頑張ったと思う。


 きっと将来は、母親同様お酒が好きになるんだろうなぁと思いながら、陽介は店の外まで行き見送った。


 陽介が店に戻ると、青ちゃんと丘ちゃんが、三輪さんをはじめヤマちゃんやヨシちゃん達に、暫く練習を休む旨の話しをしていた。理由は、都大会に向けて練習に参加させてもらっていたが、まだ子供が小さいので家族との時間を増やしたいとのことだった。もちろん時間が出来た時は練習に来たいとのことも言っていた。


 皆な一度は考え直してほしいと伝えたが、事情が事情だけにまた一緒に戦おう!と約束をして、了承をしていた。


 陽介も今後を考えると、青ちゃん・丘ちゃんの離脱はかなりの痛手になると思ったが、家庭婦人の諸事情は受け入れざるを得ない場合が多々あると、自分に言い聞かせ快く承諾した。


 そして、キーちゃんが「何かさぁ~、やり切った感があるよネ!、永竹クラブの総決算みたいな試合だったし…。これから何を目標にしたら良いのかしら…?」と言い出した。


 ヨシちゃんも、「そうだよねぇ!?」と言わんばかりにうなずいていた。


 井口ちゃんが、「まぁ、今日この場で次を考えなくてもいいんじゃねぇ?」と言うと、皆な「そうだよ!、そうだよ!」と言って納得をしていた。


 しかしこの「何を目標に?」という問題が、今後の永竹クラブに影を落とすことになろうとは、この時誰も気付いていなかった。


 時刻は24:00を回り、三輪さんが彩姉さんを呈して「皆な、今日は本当にお疲れ様でした。楽しく飲めたと思います。またこうやって楽しく飲めるように練習をして、良い内容の試合が出来るように頑張りましょう!」と言って、最後にもう一度カンパイをすることになった。


 睡眠に入っていたメンバーも、この時ぞとばかりに目覚め「ママぁ~、生ビール頂戴ぃ~!」と言い、ジョッキを手にした。


 カンパイの音頭を頼まれた陽介は、「皆さん、今日は本当に素晴らしかったです。勝つことによってのみ味わえる楽しさは、毎回違います。しかし今日は負けても楽しさを味わえました。それは皆さんが日頃の練習の成果を全て出し切ったからだと思います。これからも出し切れる試合が出来るように一緒に練習しましょう!、それでは良いですか?、皆さん今日は本当にご苦労様でした!、カンパ~イぃ!!!」と言い、その健闘を称えた。


 帰途の準備が整った者から順次店を出たが、陽介が帰ろうとしたら彩姉さんと和気ちゃんの猛獣コンビが、「陽ちゃんは、私達と二次会ネ!」と言い、陽介の腕を引っ張り店の中に引きずり込んだ。


 陽介は、嫌々をしながら店に入ったが、陽介も酒好き。


 「嫌だ!、嫌だ!」と言いながらも、結局付き合ってしまう。


 全く、懲りないのは、陽介も同様であった。

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