都大会 29 ベスト8をかけた戦い13
Gクラブのサーブ。
やや強めのサーブだが、それほど驚くようなサーブではない。
永竹クラブは、バックセンター#3キーちゃんがナイスレシーブ。セッター#6マメちゃんは、ここでもレフト#2ヤマちゃんにトスを上げた。
やはり永竹クラブのエースは#2ヤマちゃんだと思っているのだろう。
#2ヤマちゃんは、目の前の3枚ブロックの指先を目がけアタックを打った。
Gクラブは、中衛ライトがワンタッチ。バックセンターがレフトアタッカー二段トスを上げた。レフトアタッカーはこのアタックでゲームを決めようと、思いっきり助走を始めた。しかい二段トスが離れ、軽く叩くように永竹クラブにボールを返した。
永竹クラブは、「チャンス!、チャンス!」と大きな声。
バックライト#9井口ちゃんが、アンダーで丁寧にセッター#6マメちゃんにパス。
#6マメちゃんは、「レフト!、レフト!」と大きな声を出して、ライト#1ヨシちゃんにトスを上げた。
#6マメちゃんの声のフェイントは、Gクラブの3枚目のブロックを完全に振った。
(ブロッカーが相手のトスに対して、逆を突かれたり1歩も動けなかったりすることを、バレー用語でブロッカーが『振られる』或いはセッターがブロッカーを『振った』などと表現することがある)
#1ヨシちゃんの目の前は2枚ブロック。
#1ヨシちゃんは、内側のブロックの指先を狙ってアタックを打った。
Gクラブは、中衛レフトがワンタッチ。
ややコースが変わったボールを、前衛ライトがレシーブ。しかしボールはコート中程に上がり、バックセンターがチャンスボールで返した。
永竹クラブは、再び「チャンス!、チャンス!」と全員が大きな声を出す。
ハーフセンター#16イソちゃんが、セッター#6マメちゃんにオーバーで丁寧にパス。
#6セッターマメちゃんは、「ライト!、ライト!」とまたしても大きな声を出しながら、中衛レフト#8青ちゃんに低いセミのトスを上げた。
#6マメちゃんの声のフェイントに、ブロックに参加しているGクラブのハーフセンターが再び振られた。
#8青ちゃんの前には2枚ブロック。
#8青ちゃんは、思っていたより低めのトスが上がって来たという様子で、2枚ブロックの脇を狙ってフェイントをした。(言い方はフェイントだが、打ち切れなったと言うべきかもしれない)
Gクラブは、ブロックを振られその場に残っていたハーフハーフセンターが難なくレシーブ。
コート中程に上げたボールを、バックセンターがレフトアタッカーに二段トスを上げた。
レフトアタッカーは、永竹クラブの高い2枚ブロック目がけアタックを打ち込んだ。
永竹クラブは、中衛ライト#19イケさんがナイスワンタッチ。
高~くコート中程に上がったボールを、ハーフセンター#16イソちゃんがアンダーでライト#1ヨシちゃんに二段トスを上げた。
#1ヨシちゃんは、3枚揃ったブロック目がけアタックを打った。
Gクラブは、中衛レフトがブロックヒット。
誰もがブロックが決まったと思ったが、フェイントカバーに入っていたセッター#6マメちゃんの足に偶然に当たり、ボールは上がった。
そのボールをバックライト#9井口ちゃんが、アンダーで相手コートにチャンスボールを返した。
Gクラブも、「チャンス!、チャンス!」と大きな声をだして攻撃の体勢に入る。
ハーフセンターがオーバーでセッターにパス。
セッターは走り込んで来た中衛レフトにAクイックのトス上げた。
しかしタイミングが合わず。中衛レフトは軽く押し込んだ。
そのボールは、疲労で動けない永竹クラブレシーバー陣にはフェイント攻撃のようになった。
永竹クラブは、コートに落ちそうになったボールを、思い出したようにハーフセンター#16イソちゃんが突っ込みボールを上げた。
30cmくらいの高さだったであろうか、中衛ライト#19イケさんの方に上がったボールを#19イケさんが身を呈してさらに上げた。
そして3コンタクト目を、セッター#6マメちゃんがチャンスボールで相手コートに返した。
素晴らしい粘りだ。
Gクラブは、再び「チャンス!、チャンス!」と言って攻撃の体勢に入り、バックライトがアンダーでセッターにパス。
セッターはバックライトからのパスを、ライト側を向いたままレフトアタッカーに高いトスを上げた。
レフトアタッカーは、勢いよく助走を始め、永竹クラブの高い2枚ブロック目がけアタックを打った。
永竹クラブは、ライト#1ヨシちゃんがワンタッチ。
コースが変わったボールは、レフト#2ヤマちゃんとバックレフト#4丘ちゃんの目の前に飛んで来たが、一歩も動けずコートに落ちた。
2セット目の最終盤の長いラリーは、Gクラブが制した。
永竹クラブは、力尽きた。そして同時に永竹クラブの敗戦が決まった。
最後の最後に長いラリー。
永竹クラブは全てを出し切ったと、陽介は思った。
永竹クラブのメンバーは、試合に負けて当然ながら悔しいという表情をしていたが、一方で全てを出し切った大舞台でのプレーに満足をしているように思えた。
気付けば、試合をしていたコートの観客席、試合を観ていた大会役員が大きな拍手を贈っていた。
永竹クラブ22-24Gクラブ
主審から、挨拶の吹笛があり、両チームの選手がネットを挟み握手をした。そして皆な何か言葉を交わしていた。
後で聞いたのだが、握手をしたとき「近い内に練習試合をお願いします!」と言われたらしい。B区の代表チーム(選抜チーム)に家庭婦人のチームが練習試合を申し込まれるのは稀である。
それだけ相手チームが、永竹クラブを認めてくれたのだろう。
両チームの選手同士の挨拶が終わり、永竹クラブのメンバーが陽介の所に戻って来た。
陽介は、「次の試合のチームがコートを使うので、体育館の外に行きましょう!」と言って、体育館の扉を開けて廊下に出た。
そして開口一番、「ナイスゲームでした!!!」と言い、さらに「もうこれ以上は出来ません。皆さんは全ての力を出し切りました。」と言い、続けて「ただし厳しい事を言えば、今日試合に負けたのは、ただただ勝つための練習が足らなかった!、ということです。しかし皆さんの日頃の練習回数や時間を考えれば、今日の試合内容は最高です!、負けはしましたが胸を張ってA区に帰りましょう!、やりきった自分達を誇りに思って下さい。」と言った。
皆な疲労せいか、下を向いていた。中には悔しさからか目を潤ませている者もいた。
しかし大御所の三輪さんが、「皆な本当にすごかったわ!、私は永竹クラブの一員で良かったと思ってます。皆なと一緒に試合が出来て最高だったわ!、さぁ胸を張って帰りましょう!」と言うと、彩姉さんが「泣きべそをかきながら、本当に最高!、私も三輪さんと同じです。」と言いながら、「時間もまだ早いし、明日の試合も無くなったから、帰ったら飲みに行きましょう!」と言った。
それを聞いた陽介は慌てて、「いやいや、今日は疲れ切っているから日をあらためましょうよ!」と彩姉さんを制した。
しかし彩姉さんは、「こういう素晴らしい試合をした時は、その日に飲み会をやらないと盛り上がらないから…。三輪さん、飲み会やっても良いでしょ?」と言った。
三輪さんは、「皆なが良ければいいけど、どうなの?」と疲労困憊のメンバーに尋ねた。
するとキャプテン#1ヨシちゃんが、「シャワーはこの体育館で浴びれるし、帰りは電車の中で眠れるし、今日私は#3キーちゃんの家に泊まりだし、彩ちゃんの言うこともごもっともだし…。皆な軽くイッパイ行きましょう!、今日飲み会に行く人ぉ~?」と音頭をとった。
誰か断る者がいるだろうと期待した陽介だったが、全員が手を上げて『これからの時間』が決まった。
陽介は、「ヤッパリやるんか~い!?」と言い、「飲み会をやる体力がまだの残ってたか…。出し切ったと言ったのは間違えだったのか?」と思った。
敗戦したチームが線審をするため、次の試合が終わらないと帰ることが出来ない。
永竹クラブは、線審をする者以外がシャワーを浴びて帰りの準備をした。そして線審が終わった者がシャワーを浴びるのを待って、全員で帰途についた。
陽介は、ボールなどを車に積み、渋滞などを考慮して皆なよりも先に彩姉さんと帰途についたが、帰りの道中、運転する陽介をよそに彩姉さんは爆睡していた。
『これからの時間』は、いつ何時も執り行われる。
恐ろしや、永竹クラブ!