都大会 22 ベスト8をかけた戦い6
2セット目に向かうインターバルで陽介は、「内容は決して悪くありません。いや、むしろ皆さんが出来ることを精一杯やっていることが、4点しか差がつかなった結果であると思います。泣いても笑っても今日は長くてあと2セット。疲れているとは思いますが、皆さんが持っている物を全部出し切って下さい。今までの練習の成果を出して笑顔で今日を終えましょう!。」と言った。
皆なタオルで汗を拭きながら、「思ったよりサーブが弱いから、しっかりとレシーブ出来ればいけるんじゃない?」とか、「Gクラブは6人制出身の人が多いような気がする。だって攻撃が嫌らしくないもんね。だからこっちも思いのほかやりやすいよね。」とか、「とにかく勝って明日も試合をやろう!」などと会話をしていた。
その姿には、1セット目を惜敗した悔しさとか悲痛さはなかった。
次のセットに向けて、前向きの姿勢が見られた。
陽介は、どう考えてもプレーの正確さなど個々の実力の差はあるが、ヒョットすると永竹クラブという集団の力が、この試合を勝利に導く要素を生み出しているのかもしれないと、あらためて思った。
インターバルが終わり、2セット目に向かうため円陣を組んだ永竹クラブ。
キャプテン#1ヨシちゃんが、「絶対このセットとるよ!、永竹~~~ファイト!」と声掛けをした。
両チームがエンドラインに並び、副審・記録員の確認が終わると主審の吹笛があり、両チームが2セット目のコートの中に入った。
1セット目最後のサーブが#1ヨシちゃんだったため、2セット目のサーブ権はGクラブからだ。
(9人制バレーボールでは、セットの最終サーバーと反対のチームが次のセット最初のサーブ権を得る。したがって第一セットの最初のサーブ権がAチーム、そして第一セット最後のサーバーがBチームだったとすると、第二セットの最初のサーブ権はAチームとなり、セット最初のサーブ権が2セット連続で同じチームが得ることになる。フルセットになった場合でも同様のルールが適用され、3セットともAチームが最初のサーブ権を得ることがある。フルセットの場合のコートは、2セット目終了後コートチェンジが行われ3セット目が行われる。ちなみに6人制ではセットごとに最初のサーブ権が変わる。フルセットの場合はサーブ権のトスを行いそのセットの最初のサーブ権とコートを決める。)
主審のサーブ許可の吹笛。
Gクラブのサーブ。
永竹クラブは、バックセンター#3キーちゃんがレシーブ。セッター#6マメちゃんがややコート中程に動きながら、レフト#2ヤマちゃんにトス。
#2ヤマちゃんは、Gクラブの3枚ブロックからブロックアウトをとった。
永竹クラブは、上々の滑り出しだ。
永竹クラブ1-0Gクラブ
このあと、両チーム共サーブカットからの攻撃が決まり、1セット目同様まるで6人制の試合を観ているような展開が続いた。
当然ながら、ここまでの試合時間も短い。
そして、永竹クラブ9-8Gクラブ、サーバーは永竹クラブの#1ヨシちゃんという所で陽介は、ベンチを立ち上がり、#1ヨシちゃんに今まで永竹クラブが練習を重ねて来た、速くて低くてエンドラインまで届くサーブを打つように小声で指示をした。
#1ヨシちゃんは軽くうなずき、サーブを打った。
Gクラブは、2セット目も続く永竹クラブの前を狙ったサーブに対応するために、全体的にコート前方でサーブカットの準備をしていた。
とりわけバックセンターは、ハーフセンターと中衛ライトがネットに近い所にポジションをとっていたので、コート中程をカバーするために大分前にポジションをとっていた。
そこに#1ヨシちゃんがエンドラインを狙ったサーブを打ったのでたまらない。
ましてや、速くて低いサーブ。
Gクラブのバックセンターは、全く対応出来ず#1ヨシちゃんのサーブがエンドライン近くに突き刺さった。
#1ヨシちゃんのサービスエース。
皆な#1ヨシちゃんの所に集まりハイタッチ。
ついに2点差となり、均衡が崩れた。
永竹クラブ10-8Gクラブ
#1ヨシちゃんのサーブが続く。
#1ヨシちゃんは、陽介の指示通りサーブを打った。
Gクラブは突然速くて低くてエンドラインまで打ってくるサーブに混乱している。
さらにそのサーブは強い。
再びエンドライン付近にサーブが突き刺さった。
#1ヨシちゃんの連続サービスエース。
永竹クラブ11-8Gクラブ
そしてGクラブが混乱している中、#1ヨシちゃんは続けて3点をサービスエースでとった。
永竹クラブ14-8Gクラブ
Gクラブは、たまらずタイムアウトを要求した。
相手のタイムアウトでベンチに戻って来たメンバーに、「タイム明けGクラブは、ハーフセンターを通常の位置に戻してくると思います。ただし「ほぼ通常」で、ネットギリギリに来るサーブもケア出来るようなポジションをとるはずです。野球で言えば「中間守備」といったところでしょう。したがって、相手の様子も見たいので、僕が指示を出すまでは速くて低くてエンドラインまで届くサーブを打ち続けて下さい。Gクラブは点差が離れたので、#1ヨシちゃんのサーブをレシーブ出来たとすれば確実に決められるところにトスを集めると思います。こちらも僕の指示があるまではセンター攻撃をマークせず、ブロックは両サイドに集中して必ず2枚付いて下さい。レシーバーはブロックのコースに入りレシーブしましょう!ナイスレシーブでなくても問題ありません。いつものように泥臭く必死にコートにボールを落とさないように頑張って下さい。それが続けばこちらのリズムでバレーが出来ます。そうすければ勝機がおのずとやって来ますから!」と言った。
陽介の話を、汗を拭きながら聞いていた面々は、「いつも思うんだけど、陽ちゃんって時々頼もしく思えるよネ!、まぁプレーするのは私達だけど…。」などと言いながら、円陣を組み声がけをしてコートに向かった。
タイム明け、#1ヨシちゃんのサーブが続く。
Gクラブは陽介が想像していた通り、ハーフセンターが今までと違いやや定位置(コート中央付近)に近い所にポジショニングしていた。
そしてバックセンターがレシーブ。
サーブの勢いに押されコート中程に上がったボールを、ハーブセンターがレフトアタッカーに二段トス。
レフトアタッカーは、その二段トスを思いっきり打ったが、点差が離れ決めなければならないという思いから力んだか、そのアタックはエンドラインを大きく割ってアウトとなった。
Gクラブのキャプテンが、ワンタッチがあったのではないかと主審に質問に行ったが、判定は変わらず永竹クラブのポイントとなった。
永竹クラブは、「ラッキー!!!」と言ってコートを走り回った。
永竹クラブ15-8Gクラブ
#1ヨシちゃんのサーブが続く。
しかしここでGクラブは、メンバーチェンジ。
身長の高いレフトアタッカーに代えて、さらに身長が高く年齢も若く見えるベンチメンバーを前衛レフトに据えた。
陽介は試合前のサブコートで、練習しているGクラブを時間の許される範囲で見ていたが、交代した選手の印象が全く無かった。
だがこの選手、思ってもいないような曲者だった。