都大会 5 まるで違うチーム
双方が1点を取るのに物凄く時間がかかるゲーム。
お互いの力が拮抗していると言うべきか?、永竹クラブが実力以上の力を出しているのか?、いずれにせよ素晴らしい内容の試合である。
そして気付いてみれば双方が得点したのは、合計でまだ3点。
さらに、コートに落ちそうなボールを必死にレシーブして攻撃につなげるプレーに、観客席の応援団や都大会大会役員がその度に拍手や歓声を贈っていた。
今までお伝えして来た文面では、試合内容を詳しく記載して来たことが多かったが、この試合に関しては、1点を取るための内容があまりにも素晴らしく、また多すぎるが故に書ききれない。
したがって筆者は、陽介の指示通りセンターからの攻撃をマークせずに戦った永竹クラブが、しつこいレシーブ・攻撃を重ね、ほぼノーミスでこのセットを奪取したことをお伝えして、第1セットの内容について終えたい。
永竹クラブ21-18Hクラブ
陽介は、永竹クラブが大きな声を出しながら必死にプレーをし、普段ならコートに落ちてしまうようなボールにも食らいつきプレーをつなげる様子を間近に見て、選手達を誇りに思った。
前出にも述べたが、そこには『弱小ママさんバレーチーム 永竹クラブ』の姿は無かった。
その場にあったのは、都大会出場チームとして胸に『A区』のワッペンを付けた、立派な代表チームだった。
しかも強豪チームとして。
しかし、永竹クラブは全員が家庭婦人の資格を持った者だけで構成されたチーム。
1セットを素晴らしい内容で取ったものの、残念ながら体力的には若いチームにはかなわない。
全員が肩で息をしている状況での2セット目に向かうインターバルで、陽介はコートに入っていたメンバーを床に座らせた。
そして、「皆なナイスプレー!、このセットについては僕から言うことはありません。本当に素晴らしかった。そして強かったと思います。ただ2セット目は今のようにはいかないと思います。なぜなら相手チームは永竹クラブがセンター攻撃をマークしていないことに気付いたと思うからです。したがって次のセットは必ずセッター#6マメちゃんと中衛レフト#8青ちゃんが、センターからの攻撃にブロックを飛びましょう!、これは決して思い付きではありませんよ。皆さんはこのパターンの練習もして来たはずです。しかし今回の場合相手のセンタープレーヤーの打点が高いので、ネットからあまり手の出ない#6マメちゃんの方を狙って攻撃をしてくると思います。と、なれば、バックライト#9井口ちゃんのレシーブと、センターの攻撃にブロックに飛ばない中衛ライト#19イケさんのフェイントカバーが重要となります。どんなにネットから手が出なくても必ず#6マメちゃんはブロックに飛んで下さい。#6マメちゃんがブロックに飛んでいることによって、相手はフェイントの攻撃を選択肢に入れますがブロックが無いと強打せれてしまうことがほとんどとなってしまいますから…。そして相手のセンターがフェイント(軟攻)をして来たボールをつないで攻撃して下さい。#6マメちゃんはセッターとブロックで運動量が増えますが、若いから大丈夫ですネ?(チーム最年少の構成員)」と指示をした。
キャプテン#1ヨシちゃんが、「陽ちゃん、センターの攻撃をマークして両サイドの攻撃に2枚ブロックが間に合わなかったらどうすればいいの?」とすかさず聞いて来た。
陽介は、「このパターンの練習は、練習試合等を通して何回かやって来てますから大丈夫。きっと体が思い出します。敢えてあらためて言うのであれば、相手のレフトからの攻撃はセンターからの攻撃にブロックに飛ばない中衛ライト#19イケさんが、今まで通りブロックに飛びますから何も変わりません。しかし相手のライトからの攻撃は、中衛レフト#8青ちゃんがセンターをマークしますから、ライトの攻撃にブロックに行けなかったり遅れたりする可能性があります。その時はレフト#2ヤマちゃんが必ずストレートコース閉めてブロックを飛び、インコースに打って来るボールはハーフセンター#16イソちゃんが、或いはバックライト#9井口ちゃんがレシーブしましょう。ナイスカットじゃなくて良いですよ!コートの中に上がれば二段トスを上げて攻撃が出来ますから!、それに第1セットの相手のライト攻撃は数回だったし、強打と言えるようなのは1本しかなかったので大丈夫だと思います。そしてその時重要なのは、#2ヤマちゃんがストレートコースをブロックで閉めているので、バックレフト#4丘ちゃんが#2ヤマちゃんが飛んでいるブロックの後ろに落とすフェイントをカバーすることです。そして何より重要なのは、サーブで相手を崩しトスが上がる方向を限らせることです。そうすれば速攻は無くなりブロックが二段トスに付きやすくなります。当然レシーブもしやすくなりますから…。さらにチャンスボールを丁寧に攻撃につなげることです。そして第1セットのように大きな声を出して、泥臭くしつこくプレーをすることです。皆さんなら必ず出来ます!」と言った。
副審のインターバル終了の吹笛があった。
永竹クラブは、「ヨッコイショ!」と言いながら立ち上がり、円陣を組んでキャプテン#1ヨシちゃんが声がけをして、コートエンドラインに整列するために走って行った。
陽介をはじめベンチに戻った、コーチ登録の三輪さん・マネージャー登録の彩姉さん、そしてベンチメンバーの#10芦さん・#11和気ちゃん・#13シズさんが、揃って「ヨッコイショ!」と言って腰を下ろした。
あまりにも息の合った「ヨッコイショ!」というハモリに、お互いの顔を見合わせ大笑いをした。
この様子が副審と記録員にも聞こえたようで、永竹クラブベンチを見ながら大笑いをしていた。
第2セットが始まる。