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初参加の『結団式』、「五十公野毛」って誰? 2

 陽介が永竹クラブの皆なの所に行くと、既にグラスを持って待っていたメンバーが陽介にビールを注ぎ、あらためてカンパイをした。


 さっきも言ったが日頃の練習時とは異なり、素晴らしく美しく見えた。


 『これからの時間』での服装談義を、ただの無駄話しにしないところはさすがだと陽介は思った。


 和気ちゃんが、「陽ちゃんの名字って、「いずみのけ」っていうんだ!?、初めて知ったよ。皆な知ってた?」と周りに聞くと、「陽ちゃんの名字なんて、一度も気にしてなかったよ!」と口々に言った。


 陽介は、連盟役員でもあるヤマちゃんや大御所の三輪さん・川さんに向かって、「A区の連盟の大会に登録用紙を出してますよね?、その時に僕の名字が読めないから教えて!って言って来た人はいませんでしたけど…。」と聞いた。


 ヤマちゃんは、「私は連盟で、登録用紙を確認する係だけど、自分のチームはほぼノーマークだから目を通すだけで、全く気にしてなかった。」、 三輪さんと川さんは、「陽ちゃんの親御さんともよく話をするから、私達は知ってたわよ。ただ地元の人で陽ちゃんのことを名字で呼ぶ人は一人もいないから、ほとんどの人は知らないんじゃない?」と笑いながら言った。


 シズちゃんが、「いちいち、「いずみのけさん」なんて呼ぶのは面倒だから、これからも陽ちゃんで良いんじゃない?」と言い、キャプテンヨシちゃんが、「都大会に提出する用紙で、監督名を書かなきゃいけない物全てに、カナをふったらどうかしら?、私達もその度に聞かれるのは面倒だしね。」と、皆なに同意を得るように言った。


 皆なは、グラスに口をつけた状態のまま、うなずいていた。


 マメちゃんが、「はい、「いずみのけさん!」」と言って皿に盛った料理を持って来てくれた。


 実に気の利く行為に、陽介は嬉しく思った。


 ちなみに懇親会の料理は、A区区役所近くにある有名洋食店並びに有名和食店のケータリングだった。


 美味しい訳である。


 先程A区の代表の証しであるワッペンをもらい、あらためて気の引き締まる思いで健闘を誓ったばかりなのに、バレーボールの話しは一切なく、料理やお酒そして服装の話しで持ち切っていた。


 話しに耳を傾けていると、さっき陽介に料理を持って来てくれたマメちゃんは、A区区役所近隣にある有名ホテルで髪をセットし、メイクまでしてもらったとのこと。


 初めて参加する団結式に、これほどまでに気合が入っていたのかと思うと、陽介は感心するばかりだった。


 しばらくすると、区長が永竹クラブの所に来た。


 区長は満面の笑みで、「永竹クラブの皆さんは、9人制バレーボールで当区史上初めて家庭婦人の資格者のみで都大会出場を決めたと聞いていますよ。是非頑張って下さいね!」と言ってくれた。


 皆は、区長がわざわざ自分達の所に来て激励の言葉を言ってくれたことに対し、恐縮しながら「頑張ります!」と返事をしたが、キャプテンのヨシちゃんが、「初めての出場だし、私達ママさんバレーだからきっと参加するだけになっちゃうと思います。」と余計なことを言ったので、慌てて大御所の三輪さんが苦笑しながら、「確かにママさんバレーですが、A区の一般大会を勝ち抜いて出場を決めました。だから試合をやってみなければ結果は分かりません。自分達の力を精一杯出し切って頑張って来ます。」と区長に話した。


 区長は、「都大会は、各競技の選手が予選を勝ち抜いて出場決めた大会です。出場するだけでもすごいことだから、楽しんで試合をしてきて下さいね。ケガのないようにネ!」と、優しい言葉をかけてくれたが、ヨシちゃん同様に試合に勝つことを前提にしていないように、陽介には思えた。


 陽介は区長に、「永竹クラブは、強いですよ!、ベスト8を目指しA区にポイントが入るように頑張ります!」と、永竹クラブが都大会に参加するだけではないことを、あらためて伝えた。


 区長は、「陽ちゃん、良く言った!、期待してるからね!」と笑っていたが、この時永竹クラブが都大会で史上まれにみる熱戦をくりひろげ、全競技を通して話題になることを、当然ながらこの時まだ誰も知らない。


 20:00、司会者が懇親会のお開きをアナウンスし、お偉方の〆の挨拶と共に、あらためて健闘を祈り三本締めで結団式・懇親会が終了した。


 永竹クラブの面々は飲み足りないと見え、和気ちゃんの音頭で近くのファミレスで二次会をした。


 延々と話が弾んでいたが、21:30頃から電車組がボチボチと帰りはじめ、22:00二次会が終了したが、陽介は当然ながら帰ることが許されず、いつもの中華料理屋で三次会(『これからの時間』)に付き合わされた。


 中華料理屋に行くに当たり、指をさして人数を確認している和気ちゃんの先を見ていた陽介は、「マジで!?」と思わず言ったしまった。


 ホテルでバッチリ決め込んだ様相のマメちゃんが、そのままの姿で中華料理屋に同行。同じく青ちゃんや丘ちゃんをはじめとする新しく服を買って結団式に臨んだであろう数人が、そのままの姿で同行するという。


 陽介は、「せっかくの衣装が、場末(失礼!)の中華料理屋で飲んだら汚れちゃうんじゃない?」と言ったが、皆な中華料理屋のママさんに自分達の様相を見せたいとのことだった。


 乙女心は、陽介には全く理解出来なかった。


 中華料理屋に到着すると、かなり遅い時間にもかかわらず店内は混雑していた。


 いつものように、無理矢理席を空け場所を確保した直後、マメちゃんがトイレに駆け込んだ。


 気持でも悪くなったのだろうか?と陽介は気にしていたが、見れば青ちゃんや丘ちゃんをはじめ和気ちゃんを除く全員が、一旦確保した席から中華料理屋の外の出た。


 「どうゆうこと?」と和気ちゃんに聞いたが、和気ちゃんの答えは「戻って来れば分かる!」だった。


 和気ちゃんと陽介の所には、生ビールとネギチャーシューが出てきて、皆が揃う前に2人で飲み始めた。


 しばらくして、マメちゃんが戻り青ちゃんをはじめ外に出ていたメンバーも戻って来たが、よく見ると化粧が濃くなっていた。


 皆な、メイク直しをしていたのだ。


 中華料理屋で飲むのに、メイク直し…。


 確かに普段練習帰りに来る様相とは全く違うが、「何もメイクまで直さなくても…、増々分からくなった…」と陽介は思った。


 そして、中華料理屋で明らかに浮いている存在のメンバーに元々いたお客さんの注目が集まる中、『これからの時間』が始まった。


 陽介は、苦笑いをしながら「皆な、洋服を汚さないようにネ!」と気遣いの言葉をかけたところで、あることに気付き和気ちゃんに聞いてみた。


 「そう言えば、彩姉さんは…?」

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